28日の午後、ついに荒木夫妻がわがホステル「アナベル」に到着した。
トルコからギリシャ入国を試みること3回。2回は雪に阻まれて引き返し、バイクを載せられる列車を探すが見つからず、結局、3度目の挑戦で無事に越境。しかしギリシャ北部の道も雪で閉ざされているので、国境から間もないアレキサンドロポリからフェリーを乗り継いでやってきたのだ。
最近晴れが続いているおかげで、確かに一週間前などに比べると暖かいのだが、夫妻はしみじみと「アテネは暖かいですね〜」と言っていた。イスタンブールは昼間でもマイナス3度しか無かったという。
俺もバイク乗りなんだから、アテネぐらいの寒さでガタガタ言っている場合じゃないのかもしれない。
ああ、それにしても荒木夫妻!特に奥さんの優子さん(旧姓・滝野沢さん)は、私が世界一周に憧れ始めた10年以上も前から、バイク雑誌で海外ツーリング特集があると必ず載っていたビッグネームだ。今夏ロシア、中央アジアを走破してヨーロッパに向かっていることはネットで知っていたが、まさか会えるとは思わなかった。
これもアフガンのあの戦争が無かったら会えなかったんだから、災い転じて・・・などというと不謹慎かもしれないけれど、まあ良かった良かった、なのだ。
夫妻の関係で三つのHPがあるので、とりあえずご覧いただければと思います。
世界を旅する滝野沢優子(奥さんの個人HP)
滝野沢優子夫妻のワールドツーリング2001(ご夫妻のリアルタイムHP)
FineTravelerが見る世界の風景(フジ・ファインピクスで撮ったデジタル写真)
夫妻もバイクを預けてどこか別の場所で越冬するので、彼らのオートバイ、ジェベル250とセロー225も宿の物置に入れることになった。これで私のDR800Sと市川君のDF200Eを含め、4台のオートバイがこの宿で春を待つことになる。
私は南米でバイクを人の家に半年間預けたことがあるが、そのときは中途半端な量のガソリンを残していたのでタンク内部にサビが浮いてしまった。今回は満タンにしておきたいので、ガソリンスタンドに向かう前のご主人のからガソリンを分けてもらった。そしてコックをオフにし、エンジンが止まるまでアイドリングを続ける。これでキャブレター内のガソリンは無くなるはずだ。タンク内のガソリンより、キャブレター内に残されたガソリンの方がバイクに悪影響を及ぼすはずだ。
夕食はご主人の監修のもと、カツ丼となった。彼らは豚肉がご法度のイスラム国家トルコから来たばかりなので豚肉に飢えているのだ。市川君の友達で、アテネの親戚の家に滞在中の吉本さんも遊びに来て6人での夕食になったが、カツ丼はなんでもっと早く作らなかったのだろう?と後悔するほど美味しかった。昨日のかきあげに続いて揚げ物となってしまったが、しつこいなどとは微塵たりとも感じなかった。
個人的には、この前の鶏メシよりもはるかに性的興奮、じゃなかった、味覚的興奮を覚えた。俺はひょっとして鶏肉より豚肉の方が好きなのか?
おかげで酒も進み、お開きになるころにはテーブルの上には空のワインボトルが三本(しかもうち2本は1.5リットルのお徳用大ボトル)、そして安いオランダビールの空き缶が無数、栄華を極めた古代都市が朽ちたあとの遺跡のように並べられていた。
そしてそれだけ飲むと、さすがに次の日は激しい二日酔いだった。午後にようやくベッドから這い出し、近くのカバン屋にデイパックを買いにいっただけで、まるで人生最後の日みたいに具合が悪くなった。
二日酔いの辛さといったら、もう筆舌に尽くすことができない。気持ちが悪いのだが、それは酔いによるものなのか空腹によるものなのか、ひどく曖昧なのだ。試しに何かを食べようとしても食欲はわかないし、頭も痛いし、からだ全体が下から引っ張られている感じがする。もう酒は飲まないと、そのときだけは反省するんだよな・・・。
結局29日はたいして何もできず、夕食はごく簡単に乳麺を茹で、ネギをかけて食べた。さっぱり系の食事が好きな松井史織は、実はこの夕食に一番のエクスタシーを感じたらしい。
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