モロッコ最後の夜はダニにやられた。
まったく、ゴキブリが出ないと思ったら今度はダニか。全身に赤い跡がつき、強烈にかゆい。とんだお土産である。
シャウエンを後にして、約1時間半でスペイン領セウタとの国境に着く。モロッコ側の国境は入国側と出国側が壁で隔てられており、今日通る出国側の方が雰囲気が猥雑としていた。
無料であるはずの出入国カードを売りつけようとするオヤジ、「手続きを代行するから」という自称ガイドがいるのは入国側と同じだが、すごいのはスキあればスペイン側に行こうとたむろしている人の数である。おばちゃん、おじちゃん、若者・・・みんな指をくわえて、富が約束されると信じているゲートの向こう側を見ている。その群衆はときに通過する車の妨げになるほどで、そのたびに警察官が警棒をふりかざして人々を排除する。警察官がアヤしいと判断した者を捕らえ、引きずって行く様子も何回か見た。すごい光景である。
出国手続きが昼休みにかかってしまい、係官は我々を前に悠々と休憩をとっていたが、中米の国境越えを思い出せばこんなの可愛い方である。前に並んでいた欧米人はかなり頭に来ていたが。
モロッコを去る時、足元を巨大なゴキブリが通った。やっぱり最後はこいつか。まったく、私のモロッコ滞在はゴキブリに呪われていた。今までの20ヵ月の旅で遭遇した数と質(大きさ)を、この14日間ではるかに上回ってしまったのだから。
セウタ側はノーチェック。パスポート提示も無かった。ゲートをくぐると、そこはもう整然としたスペインの街並みである。国境ひとつでこんなに雰囲気が変わるのは、なかなか無いぞ。個人的にはアメリカのサンディエゴ〜メキシコのティファナの国境に勝る変化だと思う。
さあ、フェリーに乗ってスペイン本土へと思ったら、フェリー乗り場の近くに大きなスズキの代理店があった。リアタイヤがあるか聞いてみると、ダンロップのトレールマックスがあるというので交換を依頼する。チリでイギリス人ライダー、クリスに売ってもらったミシュランのT66Xはグリップはともかく、買ったときにすでに使いこんだ中古だったのに約5000キロももってくれた。25ドルでは十分にモトを取ったろう。
ついでにオイルとオイルフィルターも換え、フェリーに乗る。チケット売り場のお兄さんが私のバイクを小型と中型と間違えてくれ、ちょっとだけ料金をトクした。
今日も風は強く、船は心配するほど揺れた。トイレに入ったら床に吐しゃ物が広がっていた・・・危うくもらいゲロするところだった。
無事ジブラルタル海峡を越え、スペイン本土へ。先日泊まったアルヘシラス郊外のユースへ行くが、あいにくと客が多く相部屋。個室でなきゃ、あの高い料金を払う気は無い。さらに進み、イベリア半島のほぼ南の突端に位置するタリファという町のキャンプ場に泊まる事にする。
この近辺は常に風が強いらしく、風力発電の巨大な風車がズラリと並んでいた。ローターの直径は20メートルはある。それがグルグルとすごい数で回っているのだ。これは何気なく、実はすごい光景。
風は強いのはキャンプ場も同じだった。風除けの垣根はあるのだが、それでもテントが飛んで行く勢い。夜も風でテントが揺れ、なかなか熟睡できなかった。
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