さんざん迷ったが、スペインに戻る前にエッサウイラという大西洋沿いの町へ足を伸ばしてみることにした。
普段から国内外の芸術家が集まり、アーティスティックな雰囲気で「イケてる」町として知られるエッサウィラでは6月14日から4日間にわたり音楽祭が行われており、大変盛りあがっているらしい。マラケシュからは約160キロほど、しかも方角が完全はスペインと逆向きだが、せっかくなので覗いてみることにしたのだ。
ゴキブリの館を後にして、2時間ほど西に走ると大西洋に出た。さんさんと照り付ける太陽、まぶしいビーチ・・・と思いきや、風が強くて冷たい。Tシャツの上にウンドブレーカー代わりのカッパ1枚では寒いくらいだ。
エッサウイラの町に入ると、なるほど盛りあがっている。ステージが始まるのは夜かららしいが、町は待ちきれない若者と彼らの車で溢れ、大変な活気と混雑ぶり。これは苦労して安宿を探してもどうせ部屋はないだろう。町の入口にキャンプ場を見つけたので、そこに泊まる事にする。ただしここも風が強く、キャンプ場を囲むコンクリートの塀にへばりつくようにテントを張った。
さっそく町に出てみる。
前衛的なギャラリーが建ち並び、芸術化の溜まり場であるという町の雰囲気をかもし出している。そして通りには今風の若者ばかり。きっとモロッコの若者にとって、毎年6月中旬に行われるこの音楽祭は一夏の思い出。フジ・ロックフェスティバルやサザンの茅ヶ崎ライブぐらいの大イベントなのだろう。モロッコ中から若者が集まり、レゲエ調のファッションで町を練り歩く。この国でもボブ・マーレーは信仰を集めているらしい。
昼食をとった後、祭りの本番まで間があったのでいったんテントに帰って昼寝をする。そして日が落ちる頃、ふたたび町に繰り出した。
エッサウィラは小さな町だが、旧市街にメインのステージが二つ、そして小さなステージが各所に設けられ、そしてそこら中で自由に演奏しているストリートパフォーマーも入れると、大変な数の演奏が同時進行で行われていることになる。
音楽のジャンルは民族系が中心。たまにジャス・テイストのものもあるが、いずれにしてもレベルは高く、夕陽に染まる港町に小気味良い太鼓のリズムがこだまする。顔をベールに包んだイスラムの女性たちも踊っていたりして、ちょっと妙な光景。
メインのステージの近くには魚介を食べさせる屋台が並んでいた。エッサウィラ近海で捕れる魚は寒流で身がしまり、美味らしいのだ。せっかくなので小エビを皿に山盛り1杯、いわし塩焼き4尾、そして平目の塩焼き1尾の夕食を約800円で食べる。モロッコの食事にしては贅沢だが、日本ではこんな金額で食べられるものじゃない。音楽を聴きながらガツガツ食う。あー、やっぱり来て良かった。
食後は人々でごった返すムーレイ・ハッサン広場のカフェに入ってミントティーをすする。カフェもたいへんな賑わいで、たまに白人旅行者もいるのだが、やはり多くはモロッコ人。お互い、お前はどこから来たのかとか言って盛りあがっている。やはり観光化された祭りより、こういう地元の人が楽しんでいる祭りの方が活気があって楽しい。
しばらくステージを楽しんだ後にキャンプ場に帰って寝るが、遠くから聞こえる音楽は止む事がなかった。考えて見れば今日は土曜日、4日間の期間で一番盛りあがる夜だ。
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