旅の日記

ペルー・クスコ編その2(2000年12月11〜15日)

2000年12月11日(月) takataka夫妻に会う(Meeting a Japanese motorcyclist couple)

 今朝はようやくtakataka夫妻に会う事ができた。
 夫妻は今年6月、ホンダのXRとSL230でカナダを出発し、北〜南米縦断ツーリングを行っている。多くの海外ライダーが集うホームページNorthern Walkers の掲示板で彼らが近づいていることを知り、エクアドルあたりから彼らとメールのやりとりをしていた。キトとバーニョスでニアミスがあったが会うまでには至らず、ここクスコでようやく出会えることができた。
 夫妻は私がマチュピチュに行っている間に同じホテル「Felix」に到着した。私はバックパッカーの猪飼さんにこのホテルを教えてもらったが、ここはライダーの間でも有名らしい。

 安部さんも一緒に夫妻と昼食を食べ、そして喫茶店で御茶をし、そして夕食も一緒だった。お互いの旅の話に花を咲かせ、良いひとときを過ごした。夫妻は明日、マチュピチュに日帰りで行くらしい。戻ったらそう長くないうちにクスコを出るだろう。夫妻は各地でトレッキングをしたり山登りをしたりと健康的で、私や安部さんのような怠惰な旅人とは違うのある。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     3S   昼食(メヌー=定食)
   2.5S  コーヒー
     5S  夕食(メヌー=定食、ビール)
計       10.5S(約330
宿泊         Hotel Felix


2000年12月12日(火) 安部さんの写真を電送する(A friend's photo)

 このところずっと安部さんと過ごしている。
 安部さんと会ったのはエクアドルのキトが初めてで、そのころ彼はすでにキトで半年も沈没していた。私が牛次郎で南米を一周している間に彼が移動したのはわずかクスコまでで、そしてここでもはや2ヵ月の沈没生活を送っている。
 キトの安宿「スクレ」の従業員カルロスは、安部さんのことを冗談で「超マロ」(=極悪)と呼んでいた。ちなみに「チョー」という表現は、我々がカルロスに教えたものである。安部さんがキトのころと変わらぬ、あまりにもゆっくりとしたペースで生活しているので、最近は私も安部さんことを「超マロ」とずっといじめていた。

 くやしい安部さんは今日、「私もやるときにはやりますよ」と彼が旅をしながら撮りためたモノクロ写真を持ってきた。最近はずっと撮っていないので南米のものは無いが、インドやパキスタン、アラブ、アフリカ諸国などの人物/風景写真が40枚ほど、クリアファイルに収められていた。
 安部さんが写真をやるというのは全く知らなかった。しかし、作品を見ると「趣味で撮っている訳ではない」というのが良く分かる。旅行をしながらちょっと写真を・・・というレベルをはるかに超えているのだ。かつては写真を撮らずにはいられなかったらしい。どこに行くにもカメラを持ち、被写体を求めて歩きまわり、「念写するほど」のエネルギーを込めて写真を撮った。1枚1枚にそんな思いがにじみ出ていて、素晴らしかった。私が一番気に入ったのはパキスタンの老婆と子供の写真で、はるかヒマラヤの世界へいざなう引力があった。この写真にコピーをつければ、それだけで「パキスタン観光庁」のポスターになるだろう。

 私が90パーセントの本気、10パーセントのヨイショでほめちぎっていると、安部さんはだんだん気分が良くなってきた。そしてこれらの写真を私のデジカメで撮り、メールで友達へ送ろうということになった。安部さんに選んでもらい、約10枚をメールに添付してインターネットカフェから「クリスマスプレゼント」として送る。これならきっと、受け取った人も喜ぶだろう。

 インターネットカフェから戻り、今度は私が自分がいかに計算高くて八方美人な人間か自己分析を赤裸々に安部さんに話すと、彼は「俺の生活は確かに超マロかもしれない。しかし、お前は人間が超マロだ」と怒り出した。そんなこんなで、今夜も遅くまで部屋で酒を飲んでいた・・・。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     3S   昼食(メヌー=定食)
   13S  絵葉書
     16.65S  酒、野菜など買物
     3.5S  インターネット
計       36.15S(約1140
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X


2000年12月13日(水) ナオコさんとシゲさんと会う(Meeting people)

 今朝は前から約束していた通り、安部さんとナオコさんのところに遊びに行った。ナオコさんはクスコで長年「ナオツアー」という旅行会社を経営しており、リマの「ポコ・ア・ポコ」で2回ほど会った事があるのだ。安部さんもさすがクスコが長いだけあって、ナオコさんとも面識があるという。

 ナオコさんの事務所兼ご自宅に着いたのは午前11時すぎ。そのつもりは無かったのだが昼食までいただいて、午後1時半ごろまで色々と話をした。途中でガイドをやっているナオコさんの旦那さんも帰ってきて、楽しい団らんだった。

 ナオコさんの家の近くには「コントラバンド」と呼ばれる、古い線路沿いに雑多な露店が並ぶかつての闇マーケットがある。デジタル写真を焼き付けるCD-Rディスクが欲しかったので、帰りに寄って少し買物をした。今でもスリなどはいるだろうが、観光客など入りこめなかったという昔よりははるかに安全になっているそうで、特に緊張はしなかった。

 夜はシゲさんの家に遊びに行った。シゲさんはクスコでツアーガイドをやっているが、彼がこの前一時帰国した際に立ち寄ったリマで、私やウメさんたちと会ったのだ。シゲさんは広いアパートに住んでおり、いつもは誰かしら居候がいたりして、長期旅行者、クスコ在住の若い邦人のたまり場的な場所となっているのだ。しかし、今夜はつい先日居候の方が出ていったばかりで、シゲさんと私の二人だけで静かに酒を飲んだ。
  シゲさんは麻雀が大好きだが、今夜は残念ながらメンツが揃わなかった。近々一戦を交えることを近い、夜11時ごろ宿に帰った。早くシゲさんと打ちたいな・・・。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                   100S   宿5泊分
   9S  CD‐Rディスク2枚
     1S  たまご
     23S  銀のアクセサリー
計       133S(約4180
宿泊         Hotel Felix


2000年12月14日(木) ハジける(Nightlife in Cuzco)

 2、3日前から、私の部屋の向かいに藤原さんという男性が泊まっている。あまり話したことは無かったが、彼はここで人を待っているということだった。

 そして今日、彼の友達がクスコに到着した。ちょうど私がバイクをいじろうと部屋を出たとき、中庭で藤原さんが着いたばかりの3人の友達と話をしているところに遭遇したのだ。挨拶を交わすと、そのうちの1人の女性が「もしかして、ホームページを作ってる方ですか?」と聞いてきた。彼女は出発前、日本で私やウメさんのホームページを見たことがあるという。
 おお!海外で読者に会えるとは、しかもこんなキレーなオネーさんに!顔がニヤけてしまうほど嬉しいが、外面の良い私はシブく決めようと、「ハハハ、下らないページですがね」と大人ぶる。そして1回くらいクスコにいる間にみんなで飲みに行きましょうという話になり、急ではあるが、今夜ということになった。

 夜7時半、安部さんもやってきてみんなで街に繰り出す。メンバーは私、安部さん、ホームページを見たというオネーさまの秋庭さん、世界を長く旅している男性パッカー・石内さん、I橋大学生でM商事に就職が内定しているというインテリヘンテ女子大生・横瀬さん、そして部屋が向かいの関西人・ 藤原さん。彼らはそれぞれ一人で旅をしているが、最近旅路で知り合ったらしい。

 最初はアイルランド・パブで大人しくビールなどを飲んでいたが、どんどん店をハシゴするごとにみんなは(というか私は)、大変気分がよろしゅうなってきた。クスコでも一番繁華なアルマス広場周辺では、バーやディスコのフリー・ドリンク券や割引券が街頭で配られている。店によって利用できる時間が決まっているため、ある店に入ってフリー・ドリンク券で一杯飲み、次の店の時間になったらそこへ移動し、またタダで飲む。これを繰り返すと、たいへんオトクな飲み方ができるのだ。(だいぶセコイが)
 最後の方はディスコのハシゴだった。すっかりデキあがっていたので3400メートルという標高と空気の薄さ、そして自分を大人に見せるという演出を忘れ、ハジけまくるカズヒロであった。その様子は、連続写真でどうぞ。

  

 

 というわけです。ヤバイ、クスコは本当に楽しいぞ。いつこの魔都から抜け出せるか・・・?


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                    21S   切手
   20S  コーヒーなど買物
     1.5S  インターネット
     3S  夕食(セナ=定食)
     20S  飲み代(記憶にある分)
計       65.5S(約2060
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X


2000年12月15日(木) クイを食べる(Eating a rat)

 昨夜は大分遅かったので、起きたのは昼近くだった。昼の間はまた安部さんとブラブラ過ごしていたが、夕方になって昨日の4人が部屋にやってきて、私のホームページをパソコンで見た。

 そしてまた6人で夕食を食べに行く。みんながクスコ名物を食べたいというので、ここらへんのペルーの名物であるクイ(モルモットのような小哺乳類)を食べに行く。クイはエクアドルの名物でもあり、キトの安宿「スクレ」では生きているクイをペットとして飼っている人もいた。愛くるしい生きた姿を知っていると少々食べにくいが、いつかは食べようと思っていたのでちょうどいい。

 クイは貴重なタンパク源としておそらくスペイン人の到来よりも昔から食べられていたのだろう。インディヘナ(先住民)の食文化に定着しているが、今となっては牛肉や豚肉より高い。通りの客引きと交渉し、1匹2人前で25ソル、ビールかピスコサワーつき、という一番良い条件を出したレストランに入る。

 ロースト用の窯に入れられる前のクイを見せてもらったが、すでに毛をむしられて干された後だった。いわばミイラ状態、生きていたころよりだいぶ小さくなっているだろう。それでも「スクレ」で見せてもらった3匹よりもずっと大きかった。
 クイが焼きあがるまでにはけっこう時間がかかった。20分ほど待ち、無料のビールが無くなって追加したころ、待望のクイのローストがテーブルに運ばれた。

 あわれクイ君、全身からジュージューと脂汗をかき、口にはパプリカの実をくわえさせられている。ツンツンとつつくと、皮も身もけっこう固い。とりあえず突合せのじゃがいもなんぞを食べながら、どこから手を出そうか思案する。

 そしておもむろにクイ君の左後ろ足をつかみ、引き剥がしにかかる。バキバキと小骨の折れる音がするが 、罪悪感より食欲が勝る。足の骨は簡単に折れたが、弾力のある表面の皮がなかなか切れず、足と胴体をつなぎとめようとする。
 力にまかせ、フンガ!と足を引き千切る。しかし足が取れたのはいいが、勢い余った手はビールグラスを突き飛ばし、コナゴナに割ってしまった。他の動物の肉を食べるというのは、本来、弱肉強食の闘いである。そんなことを彷彿とさせる、激しい食卓となった。

 格闘の末、胴体と孤立した左足にかじりつく。果たしてその味は・・・なんかボソボソとして、それでいて弾力もあるムッチリとした食感。クイ君の肌には生臭さと消そうと多量の香辛料がすりつけられていて、したがって味付けはスパイシーではあるが、消しきれなかった生臭さも口の中に広がる。どちらかといえば鶏肉に近いが、味ははるかに劣ると思われる・・・。

 クイが運ばれるまで興奮状態にあったみんなも、味を知って急に大人しくなった。しかし、ある程度予測できた事だった。クイがあまりおいしくないものとは聞いていたし、それでも食べるというのは、味を楽しむというより「ネズミを食った」というイベント性を求めていたからだ。

「クイ食べるのって、富士山登山と一緒だね。一度でいいや」
「あら、あたし富士山はもう1回登ってもいいと思ってますよ」

 などという会話を交わしながら、バリバリとクイ君を八つ裂きの刑に処してたいらげる。あまり肉はついていないから、腹は突合せのじゃがいもで膨れた感じだ。
 皿には辛すぎて手が出せないパプリカの実を加えたままの首と、バラバラになった体の残骸が残った。あわれクイ君、安らかに眠れ。

 食後、みんなは飲みに行ったが、私はシゲさんの家で麻雀の約束があったので別れた。

 待望のシゲさんとの麻雀は、他のメンツが「ペンション花田」の管理人・梶谷さんと、今日リマから着いたばかりの医大生だった。そして今夜、なかなか見られないものを見てしまった。
 ニ半荘目、私が切った七萬に、医大生は「ロン!」と叫び手牌を倒した。「出た!四暗刻単騎!!」・・・麻雀の分からない人に簡単に説明すると、麻雀の中では「役満」と呼ばれる、一番点数の高い勝ち方がある。この四暗刻単騎はダブル役満と呼ばれ、普通の役満の2倍の点数、一年打ってもなかなか見られない手だ。海外麻雀としてはレートの少々高いシゲさんちでは、この手だけで30ドルは軽く行くことになる。私はあまりのことに、頭の中が真っ白になった。
 しかし、冷静だったのは梶谷さんだった。医大生の捨て牌を見ていた彼は、「ちょっとマズいことになっているぞ」と言った。麻雀では、自分の捨てた牌でアガることは「フリテン」と呼ばれる反則で、逆にみんなに罰金を払わねばならない。そして今回、医大生はそのフリテンを犯していたのである。
 医大生にとって、今回が人生初めての役満だったそうである。そんな天国から一気に地獄に落ちてしまった彼は、その後復活することは無かった。終わって見ると、彼の一人負け。痛いげな学生から、3人のいい大人が搾取するという結果になってしまった。

 しかし、勝負の世界は厳しいのだ。彼から勝ち金4ドルを受け取り、満足して帰る私であった。これにこりずに、またやりましょう!


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     1S   インターネット
   15S  夕食(クイ)
     -4$  麻雀の儲け
計       16S(約500
     -4US$
(約-440
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X