旅の日記

ペルー・聖なる谷編(2000年12月8〜10日)

2000年12月8日(金) 湯治する(Hot baths of Aguas Calientes)

  昨夜8時から今朝8時まで寝たから、12時間は眠った。しかし昨日の疲れは残っていて、体調は優れない。本来なら今日もマチュピチュに登る予定だったが、天気も良さそうに無い。今日は列車の時間までゆっくりとアグアス・カリエンテスの町で過ごそう。

 まずは宿と交渉し、5ソル払う代わりに午後4時まで部屋を使わせてもらう権利を得る。そして向かった先は町外れの温泉。うかつなことにタオルと水着をクスコに忘れてしまったので、入り口でレンタルして入る。
 アグアス・カリエンテスの温泉はメインの大きい風呂桶(といっても15メートルほどの大きさのプールだが)が一つに、小さな浴槽がいくつか並んでいる。メインのプールの湯はかなりぬるめだが、のぼせることが無いのでずっと入っていられる。一気に温まって湯冷めするよりはるかにいい。
 2時間ほど大きな浴槽と、湯の熱い小さな浴槽を往復し、温泉を後にする。けっこう気持ちが良かった。
 その後は宿に戻り、湯冷めをしないように昼寝をする。あれだけ寝たのに、まだ眠れる。昨日はよっぽど疲れたらしい。

 クスコ行きの列車は午後4時40分にアグアス・カリエンテスを出る。車両の顔ぶれは往路とあまり変わらなかったが、クスコのホテルで一緒だった木村さんという男性が乗っていた。彼は一日早くクスコを出たが、着いた日をアグアス・カリエンテスでゆっくり過ごし、私と同じ昨日、マチュピチュを見たという。

 できれば木村さんと会話を楽しみながらクスコまで揺られたかったが、私はウルバンバ川が形成した「聖なる谷」沿いにある遺跡を見るため、オリャンタイタンボ駅で途中下車した。クスコに来る前、バイクで直接来ようとした山間の小さな村だ。

 村には数軒の宿泊施設があったが、適当な安宿にチェックインする。そして夕食を食べたあと、やはり体調が優れないので早めに寝た。やはりクスコに帰った方が良かったかな・・・。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     7S   朝食(コンチネンタル)
   5S  ホテル延長料
     10S  温泉、タオル&水着レンタル
     15S  宿代
     12S  夕食(肉)
     3S  コーヒー
計       52S(約1630
宿泊         Hostal Miranda


2000年12月9日(土) ワタル君に会う(Meeting an artist)

 昨夜は咳が出て寝苦しかったが、朝ごはんを食べたら少しは元気が出てきた。宿を出て、早速オリャンタイタンボの村の裏手にある遺跡を見に行く。

 インカの言葉で「タンボ」とは旅篭の意味である。ここオリャンタイタンボもインカ時代の宿場町とされるが、スペイン人に対して反逆を企てたインカ人の一部が立てこもった要塞としても知られる。やはり急斜面に段々畑が造られ、ふもとの集落跡には今でも利用されている見事な用水路が通っている。

 段々畑を登った丘の上には、かつての神殿跡などが残っていた。オリャンタイタンボで一番有名なのは6枚の大きくて平たい岩を組み合わせて造られた壁だが、神殿の跡だったの何なのか、正確には分かっていない。岩と岩との繋ぎ目に細い岩をはめるというこの壁の造り方は他のインカ方式と少々異なり、また壁に見られる模様はインカ文明以前にチチカカ湖畔に栄えたティワナク文明のものと似ているという。

 遺跡を見終わった後は村に戻り、朝食を食べる。レストランは観光客向けの所と地元人向けの所ではるかに値段が違い、たとえば観光客向けの所ではコーヒーとジュース、卵とパンのコンチネンタル・ブレックファーストが7ソル(220円)もしたりする。地元人向けの所では、朝からしっかりとしたオカズとごはんの食事を出して2、3ソル。今日は幸運にも地元人向けのきれいなレストランが見つかり、安くあげることができた。

 腹が膨れた後はバスを乗り継いで、1時間ほどかけてピサックの村へ移動。この村も「聖なる谷」に属するが、見どころは二つ。やはり村の裏手にあるインカの遺跡と、週に3回開催されるインディヘナ(先住民)の市。明日は日曜日で市が行われるので、今日遺跡を見て村で泊まれば、明日の朝、市を見てクスコに帰ることができる。

 というわけでピサックの遺跡を見ることにするが、ここの遺跡は少々訳が違う。段々畑を10分ほど登っただけで頂上に着いたオリャンタイタンボよりはるかに高い山の上に造られており、歩いて登るのに1時間はかかるという。しかし乗合タクシーで行く方法もあり、ピサックの村でバスを降りたら早速客引きが声をかけてきた。
 3ソル(約95円)。これで上まで登れるなら安いものかと、乗ることにする。ただし乗合タクシーは客が集まらないと発車しない。他の客が来るまで、道端に座って待つ。

 しばらくするとクスコからのバスがやってきて、観光客らしき人たちが数人降りた。乗合タクシーの運転手が「お前のアミーゴが来たぞ」というので良く見ると、その中に日本人の青年が1人いた。
 サングラスに長い茶髪の青年は私に気付くと、「ワタルです」と言って握手を求めてきた。快活な好青年である。彼もピサックの遺跡に登るというが、3ソルは高すぎると言う。「歩いて登りましょうよ」と彼に誘われ、結局一緒に登る事になった。

 ガイドブックに「歩いて1時間」と書かれていると、普通は40分ほどで着けるものだが、遺跡までの登り道は大変険しくて長く、休憩を挟みながら本当に1時間かかった。
 クスコより低いと言っても、標高2000メートル以上はゆうにある。段々畑の間に設けられた細くて急な階段を、息を切らせながら少しずつ登る。心臓の鼓動は全身で感じることができるほどだった。

 しかし登りきった山からの景色は素晴らしかった。数百メートル下にさっきまでいたピサックの村が見え、左右には「聖なる谷」がまっすぐに伸びて日に照らされたアンデスの山々が美しい。「やっぱ歩いて良かったスね」、ワタル君が言った。その通りだと思った。

 山の頂にある遺跡もまた素晴らしかった。小規模であるが美しいインカの石組みや神殿跡が残っていて、マチュピチュの小型版といったところだ。
 絵描きだと言うワタル君は早速スケッチにとりかかっていた。私はその間、ていねいに遺跡を見て回った。体調が優れないのでクスコに帰った方が良かったかも、などど昨夜は考えてきたが、本当に来て良かった。

 頂にあるのは神殿の跡などで、山の反対側の中腹には別に住居跡もあった。それらを見ながら、山を30分ほどで下った。
 ワタル君も明日の朝インディヘナの市を見たいというので、今夜は同じ部屋に泊まって宿代を浮かすことにする。適当な安宿にチェックインし、まずは夕食を食べに出る。

 やはり地元人向けの安食堂でビールを飲みながら話をすると、ワタル君は何と19歳だという。20代中頃だと思っていたのに、10も違うとは大変ショックだ・・・。確かにピサックの登りをものともしない体力があり、すごい食欲もある。良く見ると、顔にも少年っぽさが残っていた。
 しかし16の時からすでに一人暮らしをしているという彼はとても大人で、精神的な満足を求め、深いことを考えながら旅をしていた。旅のこと、世の中のこと、宗教のこと・・・色んな話を彼としたが、とても10歳のギャップは感じられなかった。とても良い出会いができたと思った。

 食事を終えてもまだ時間が早かったので、オンボロのゲームセンターに行ったり、教会に行ったりして時間をつぶした。ピサックはオリャンタイタンボよりは大きいが、のどかで静かな所だった。
 そして翌朝の市を楽しみに11時ごろ就寝。体調は昨夜よりずっと良い。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                   2.5S   朝食(スパゲティと鳥)
   3S  バス
     6S  夕食(ビール、定食)
     1S  串焼き買い食い
     1S  ゲームセンター
     6.5S  果物など買物
計       20S(約630
宿泊         Hospedaje Chihuanco


2000年12月10日(日) ピサックの日曜市(Pisaq's Sunday market)

 朝起きて、市が開かれるという広場に早速行って見るが、思ったより賑わいは無い。時間が早いのかと思って朝食を食べるが、その後でも出店の数は大して増えず、人も増えなかった。店の種類も観光客向けの土産物屋がほとんどで、値段も安くない。店を出しているインディヘナの人たちの服装も至って普通の服で、民族衣装というわけでもない。
 ちょっと残念だった。これならグアテマラのアンティグアで普通に開かれているマーケットの方がよっぽど規模が大きく、鮮やかな衣装が見られた。1時間ほど市をぶらつき、クスコに帰る事にする。
 ワタル君はこれからオリャンタイタンボに向かい、夜にはクスコに戻るので、夕食を一緒に食べる約束をして別れる。

  バスに揺られて約30分、クスコに到着。これで私のオリジナル・マチュピチュ〜聖なる谷ツアーは終了した。バスターミナルからホテル・フェリックスまでは遠かったので歩くのに疲れた。
 宿に帰り、日記をつけなきゃなあと思っていたら、私の匂いを嗅ぎつけた安部さんが早速遊びに来た。一緒に昼食を食べ、そのまま話を続けていると、ワタル君がクスコの日本人宿「ペンション花田」で一緒になったという旅行者を連れてやってきた。
  4人でそのまま夕食を食べに行き、今夜の夜行バスでプーノに向かうはずのワタル君が出発を延期してまで「花田で麻雀やりましょうヨ」というので、食後はペンション花田にお邪魔して久々の麻雀大会。

 しかし今夜は残念ながら良いところが無く、11.6ソルという大金を失って深夜、とぼとぼホテルに帰る。くそー、今度は勝つぞ・・・。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                   1.5S   朝食(魚フライごはん)
   0.5S  バス
     8S  昨夜の宿代
     3S  昼食(メヌー=セナ)
     7.5S  夕食(肉)
     11.6S  麻雀負け分
計       32.1S(約1010
宿泊         Hotel Felix