旅の日記

ペルー・クスコ編その3(2000年12月16〜21日)

2000年12月16日(土) チェスをする(Playing Chess)

 今日は安部さんと喫茶店でチェスをした。安部さんはとても頭が良いが、神奈川県立市ヶ尾高校時代、当時の同級生・ハタタケヒサ君と33勝33敗33引き分け(お互いキングのみになった)になるまでチェスをやりこんだ私は、みごと勝つことができた。というよりチェスは将棋のように指し駒が無いから、次の一手の選択の幅が狭く、ミスをした場合に挽回の余地が少ない。喫茶店にあったチェスの駒はどれも似たような形をしていて、今回は安部さんが見間違えて先にミスをしただけのことだ。

 夜も私の部屋で安部さんと話しこんでいたが、雨が降ってきてホテルに帰れなくなったので、彼はそのまま部屋に泊まった。なんか、最近の時間のほとんどをこの人と過ごしている気がする。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     3S   昼食(メヌー=定食)
   4S  コーヒー
計       7S(約220
宿泊         Hotel Felix


2000年12月17日(日) 定住について考える(Thoughts about taking time)

  チェスをしに、また安部さんと昨日の喫茶店に行くと、クスコに住んでいるリカさんという女性に偶然会った。最近引っ越したというので、チェスを中止して彼女の家に行くと、これが興奮もののブエノな物件だった。外見は古ぼけた民家で、中庭なんかも山奥の農家みたいな感じなのだが、いったん彼女の部屋に入るとそこは別世界。オーナーのスペイン人のセンスで内装が施されたロフト付きの部屋は、まるで代官山かどこかの高級マンションのよう。木をふんだんに使い、とてもくつろげる雰囲気になっているのだ。これで家賃は月60ドル(7000円弱)。たまりませんなあ。

 こういうのを見ると半年か一年、どこかでゆっくり過ごしてみたいと思う。何カ国もあくせく回るのも、1ヶ所に留まってそこで生活してみるのも、精神的に得られるものはそんなに変わらないんじゃないか、と最近思い始めてきたのだ。今回の旅ではホームページの更新や雑誌の連載があるので無理だが、いつかはじっくりとどこかで生活をしてみたい。今のところ永住ではないが、半年やそこらなら生活したいというところはエクアドルのキトが思い当たる。クスコもいいが、街が小さすぎてすぐに飽きてしまうかも。

 夜はマチュピチュに行っていた秋庭さん、石内さん、藤原さん、横瀬さんの4人組みが帰ってきたので、少しだけだったが、街に繰り出した。ディスコで少し踊った後、私の部屋に戻って秋庭さんと横瀬さんにインスタントラーメンをごちそうした。ネギをきざみ、ガソリンコンロでラーメンを作ると、大変感動された。一食40円のラーメンで感謝されるとはオトクな感じ。
 安部さんは少々酔っ払い、私のベッドで横になったまま二泊目に突入した。私は銀マットを床に敷き、寝袋で就寝。これも悪くないが、そのうちホテルから安部さんの宿泊代も請求されそうだ。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     3S   昼食(メヌー=定食)
   5S  夕食(セナ=定食)
     2.5S  インターネット
     20.1S  ラーメン、酒など買物
     20S  飲み代
計       50.6S(約1590
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X


2000年12月18日(月) セビッチェを食う(Eating Cebiche)

 秋庭さん、石内さん、藤原さん、横瀬さんの4人組みはおもしろい。もともとはそれぞれが1人旅をしているのだが、まるで考えられて結成されたお笑いのユニットのように各人のバランスが取れている。一見、足並みが揃って無さそうに見えても、大枠で良くまとまっているのだ。それぞれがどういうキャラクターか説明はここでは省くが、彼らには私、ウメ夫妻、猪飼さんの「牛次郎4人組み」もかなわないのではないかと思えるほどだ。
 4人のうち秋庭さんと石内さんが今夜ナスカに向けて旅立つので、ホテルの中庭で安部さんと私も一緒に記念撮影をする。そしてその後、最後の昼食を食べに市場方面に向かう。

 最後のメニューに選ばれたのは、セビッチェだった。生の魚を酢でシメたいわゆるマリネだが、食べるのはメキシコ以来だ。今日のセビッチェはペヘレイという白身魚で、世界ビールコンクールで2位をとった地元のビール「クスケーニャ」によく合う味だった。昼間っから良い気分で、とっても幸せ。

  今夜クスコを発つ二人の出発時間は夜だというので、その後は別行動になったが、私と安部さんが夕食を食べに行っている間に二人はあわただしく出ていったらしく、見送りは出来なかった。とても残念だが、秋庭さんが必要のなくなった味噌汁やお茶などを置いていってくれたので、とても嬉しい。
 秋庭さん、ありがとう。安部さんと肩を寄せ合い、味噌汁を飲みます。私が生きて日本の土を踏んだ暁には、また会いましょう。

 夜は安部さんと近くのミニシアターにトム・ハンクス主演の「グリーン・マイル」を見に行った。1935年のアメリカ、死刑囚専用の刑務所が舞台で、無実の罪で死刑判決を受けた黒人の大男が刑務所内で奇跡を起こす、というストーリー。実はこの映画は前々から見たかったのだが、中米でも、南米に下っても、いつも映画館で「次週上映」となっていて見られなかったのだ。ミニシアターといっても家庭用のプロジェクターで映画(おそらくDVD)を見せるだけのものだが、とても良い映画で胸がいっぱいになった。期待外れでなくて良かった。ちょっと長い映画だけど、けっこうお勧めです。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                   100S   宿5泊分
   7.6S  昼食(セビッチェ)
     28S  ポジフィルム
     3S  夕食(セナ=定食)
     6S  映画(コーヒー代含む)
計       144.6S(約4540
宿泊         Hotel Felix


2000年12月19、20日(火、水) 極マロな生活(Los dias malos)

 この2日は、安部さんと極マロ(悪)な生活をしていた。朝起きると安部さんが部屋にやってきて、昼飯食べに行って、帰ってお茶飲んで、しばらくして夕飯食べて、インターネットして、そして酒飲んで寝る。うーん、なんてマロな(悪い)生活なんでしょ。前は「超マロな生活」と安部さんと呼んでいたが、「極マロ」の方が意味の上でも徹底的だし、響きもいい。というわけで、「極マロ」な生活を送る二人なのである。

 この2日間で変わったことと言えば、安部さんの宿に遊びに行ったのと、シゲさんの家に飲みにいったくらい。このままではさすがにヤバイと思った二人は、明日、出かけることにした。


2日間の走行距離         0キロ(計27734.9キロ)

出費                     9S   レストランでの食費(3食)
   11S  ラーメンなどスーパーで買物
     6S  インターネット
     5S  チョコレート
計         31S(約970
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X


2000年12月21日(木) チンチェーロ村に行く(Visiting a village of Chinchero)

 久々に早起きして、安部さんと向かった先はチンチェーロ村。クスコの北西に位置し、バスで約1時間の距離だ。久々の観光は遠足に行くような気分だが、眠いので寝ながらバスに揺られて行く。

 チンチェーロ村は、ささやかな村だ。ささやかな広場では毎週日曜日にささやかな市がたち、ささやかなインカの遺跡の上にはささやかな白い教会が建っている。何でも、最近では村の近くにささやかなUFOが飛来し、ささやかな着陸跡を残していったという。
 今回この村を訪れたのは、今度安部さんがガイドする団体がここを訪れるので、その下見というか、勉強のためである。私はその付き合いだ。

 バスを降りて遺跡に向かって歩いていると、早速物売りの少年や少女が群がってきた。無視していたのだが、けっこうしつこい。とうとう絵葉書売りの少年は遺跡の中にまでついてきて、ガイド気取りで説明を始めた。

 チンチェーロの遺跡は、とても小さい。要塞や神殿の石組み、段々畑が少し残っている程度で、石組みの上にはスペイン人が建てた教会がある。しかしささやかな村と雰囲気がよくマッチしていて、のんびりとした良いところである。少年の説明を半信半疑で聞きながら、ポカポカと照り付ける太陽を浴びて遺跡を回る。

 一通り遺跡を見終わると、ガイドしてくれた少年やついてきた少女たちがチップを要求してきた。少年からは安部さんが絵葉書を数枚買い、私は少女たちからミサンガを買ってあげた。しかし、少年は少女たちに「お前らは何もしていないのに」といい、ケンカをはじめた。私と安部さんは笑いながらその場を離れ、レストランに入って定食を食べる。

 食後、昼休みで閉まっている博物館が開く時間まで少しあったので、村を散歩することにする。
 チンチェーロ村はとても静かで、素朴な村だ。石畳が崩れた細い路地を歩くと、ロバやブタがそこら中でウロウロしており、道端で遊ぶ子供たちはマンガのように鼻を垂らしている。ガイドしてくれた少年がまたついてきて村を説明してくれたが、やはり疑わざるを得ない内容で、大いに笑えた。
 そこら辺の家の門を指差しては「古代の門だ」と言い張り、「じゃあ、何年前のだ」と聞くと、しばらく考えて「100年前の」という。ちなみにこの少年、ここのインカの遺跡はどれくらい古いのか、と聞いた時にも「100年前」と答えていた。知っているうちで一番大きい数字が100らしい。 そして下水のパイプを指差しては「温泉だ」と言う。おいおい、どんな温泉にヘドロが浮いているよ。

 少年少女と戯れながら田舎の村の雰囲気を楽しみ、遺跡の横の博物館に戻る。ちょうど昼休みが終わったところだったが、博物館は小さく、あまり面白くなかった。博物館を出たあとも少年たちはついてきて、クスコに帰るバスに乗るまでチップをせがまれた。さっき渡してあるので、払う訳はないが。

 宿に帰り、村の少女たちからもらったミントの葉を浮かべて紅茶を飲む。自然のやさしい香りがして、とても美味しかった。チップ、チップとうるさかったが、今考えるといいヤツらではないか。素朴でささやかなチンチェーロ村は、極マロな生活を送る二人の心に小さな灯りをともしてくれたのである。


本日の走行距離          0キロ(計27734.9キロ)

出費                     3S   バス
   17S  遺跡周遊券(また買わされた)
     10S  CD
     2S  ミサンガ
     2.5S  昼食(メヌー=定食)
     6.25S  卵など買物
     3S  夕食(セナ=定食)
     2.5S  インターネット
計        46.25S(約1450
宿泊         Hotel Felix
インターネット    SPEED X