本当は今朝も安部さんと遠足のはずだった。
クスコ郊外にあるケンコー遺跡を見に行こうと決めていたのだが、起きたのは10時すぎ。今日の昼食はクスコに住んでいるリカさんと食べる約束なので、時間的にムリ。雨も降っているし、午前中は部屋でゆっくりする。
実は昨夜、インターネットカフェで日記を更新した後、ミニシアターで安部さんと「イージー・ライダー」を見たのだ。日本人女性によって新しくオープンされたシアターは40席ほどだが、クスコでは最大規模。そこらのビデオ・シアターと違い、ちゃんと白い大きなスクリーンにDVDのキレイな映像が映写されるのだ。
音も大迫力。映画を見た人は分かると思うが、オープニングでピーター・フォンダ扮する「キャプテン・アメリカ」とデニス・ホッパーの「ビリー」の二人組みが、ハーレーに乗ってアメリカのハイウェイをブッ飛ばす映像が写る瞬間、あまりにも有名なステッペン・ウルフの「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」のイントロが入る。バシャッと、水をかけられたような衝撃がして背筋がゾクっとした。
自由、風、どこまでも続くハイウェイ、ロックンロール、サングラス、レザーのジャケット、焚き火、星空・・・映像の一つ一つがバイクの旅を象徴していて、極マロな生活をおくる私をたたきのめす。そうだ、私はバイク乗りなのだ。バイクに乗らない人が見たらつまらない映画なのかもしれないが、バイク乗りが誇りを取り戻すのには十分すぎた。
映画を見た後、盛りあがった私と安部さんはまた酒を飲みながら色々と話をした。安部さんももとはバイク乗り、明日はDRに二人乗りしてケンコーの遺跡に行こうと決め、床についたのだ。(安部さんはまた部屋に泊まった)
ところが酒が残っていることもあって、起きたのは今朝10時すぎだったというわけだ。失いかけたバイク乗りの誇りを取り戻し、そしてまた失いかける私であった。
約束の午後1時になったので、安部さんと一緒にリカさんを迎えに行く。日本人男性が経営するペルー料理屋「プカラ」に行ったことがなかったので、今日はそこでランチをすることにする。
リカさんはオトナだ。まだ大学生だが学校を休学し、旅行会社で1年働こうとペルーにやってきた。音楽や映画、文学のことをよく知っているし、部屋には「National
Geographic」が並んでいる。異国の地で、しっかりと生活をしているのだ。私の大学時代はというと・・・思い起こすとトホホとなる。親のスネをボリボリとかじり、マクドナルドの深夜の掃除のアルバイトは手を抜きまくり、学校には週に1時間半しか行かず、酒を飲んでは酩酊し、部屋に並んでいたのは漫画かバイク雑誌だった。今でもそんなに成長していないのかもしれない。もうすぐ三十路として、いいかげんオトナにならねばと思うカズヒロであった。
食後、日本に帰ったらバイクの免許をとりたいというリカさんにDRを見せ、一緒に写真を撮る。シャッターを押す係の安部さんは「イヤだよ、バイクやホームページを小道具に使う人は・・・」とブツブツ言っていた。仕方ないので、安部さんとリカさんのツーショットも撮ってあげる。
夕方から小旅行にでかけるというリカさんと別れ、ふたたび安部さんと濃厚な二人の仲に。夜は安部さんは映画にでかけたが、私は部屋で日記を打っていた。安部さんが映画から戻った後、また私の部屋で少し酒を飲んだが、彼は今夜は泊まらずに自分の宿に帰った。
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