旅の日記

ペルー・ナスカ編(2000年12月2〜3日)

2000年12月2日(土) 地上絵よりも人気者になる(Being an idle)

 午前10時半、香苗さんや店のスタッフの方たちに見送られて「ポコ・ア・ポコ」を出発する。みなさま、今回も本当にお世話になりました。今後ともご商売の繁盛を祈っております・・・。

 さて、今日の目的地は地上絵で有名なナスカ。前回、牛次郎で来た時には何も見ず、朝食だけ食べて立ち去った場所である。今回はちゃんと地上絵を見なければ。実は以前から「ナスカの地上絵」にはかなり興味があって、そのデフォルメされた絵柄に私の美意識は大きく反応しているのである。前にも書いたが、現在の私のパソコンのデスクトップは自製のナスカ模様になっている。

 ナスカはリマからパンアメリカン・ハイウェイを約450キロ下ったところにある。ちょっと渋滞にはまったもののリマを順調に抜けられ、よく整備されたハイウェイを一路南へ。 香苗さんちでたっぷり朝食を食べたのであまり腹が減らず、結局小休憩を2回挟んだだけでナスカまで走ってしまった。
 
  リマ方面から来るとナスカ市街の手前に地上絵のあるエリアがあり、 そこには道沿いに展望用のやぐらがある。ちょうど夕暮れ時で地上絵も夕陽に映えているはずだから、寄って登ってみることにする。
 鉄製のやぐらは一度に10人しか登れないので、下では順番待ちの人たちがいた。ひまそうにしていたおじさんが「どこから来たのか、あのバイクは何ccだ」と聞いて来たので、「カナダからだ、800ccだ」と答えたら、目を丸くして驚いた。そしてまわりにいた友達たちに説明し、さらに友達たちも驚いた。
 やがてやぐらの上にいた団体が降りてきて、「何の騒ぎだ」と下にいた人に聞き、説明を受けた彼らも驚いた。そして大変な騒ぎになった。

 まずは何人かいた少女たちに、一緒に写真に写ってくれと頼まれた。バイクにまたがらせてくれとか、ヘルメットを被らせてくれとか、肩に手を回してくれとか注文が多いが、代わる代わる数人の女の子とツーショットで写真を撮られるのはとても気分がよろしい。
 そして彼女らのお母さん、おばあさんらも黙っていなかった。少女たちが終わると「今度はあたしたちね」と言い寄られ、撮影大会は続いた。俺は地上絵よりも珍しいのか?
 最後は私がみんなとバイクを撮った。写真の真ん中あたりに赤いDRが埋もれているのが分かるだろうか?彼らは同じバスに乗って来た人たちだそうで、みんなペルー人だそうだ。みんなとても良い人たちで、日本人だと言ってもフジモリ云々とか言わず、「ようこそペルーへ」と温かい声をかけてくれた。これだけいて、年頃の女性がいないというのが残念だったが。

 みんながバスで去るのを見送ってから、やぐらに登ってみる。高さは20メートルほどで、15キロ四方に及ぶという地上絵のエリア全体を見渡すには低すぎるが、近くにある「手」と「木」の地上絵ははっきりと見る事ができた。明日、飛行機から見る予定だから、その時にもっと良く見えるだろう。

 さて、ナスカの町につくと、ホテルや地上絵を見る遊覧飛行の客引きがワンサカ寄って来た。落ち着いてホテルを選ぶ事もできず、どこかで名前を聞いた「ホテル・ナスカ」があったのでそのままチェックインする。後で調べたらこのホテルはライダーが良く利用するところで、選択は間違っていなかったことが分かった。

 そして、近くのツアー会社で明日の朝一番の遊覧飛行を申し込む。地上絵を見るには空から見るのが一番だが、太陽が斜めから差して地上絵がクッキリ見える朝か夕方でなければ意味がないという。午後は真上から太陽が差し、しかも強風が砂を巻き上げて地上絵を覆い隠してしまうのだ。
 ツアー料金は55ドルを45ドルにまけさせたが、後で「地球の歩き方」を見たら、このシーズンの相場は35ドル前後だという。しまった・・・。ちゃんと下調べをしていないとダメね。

 明日は遊覧飛行を終えたら、もうナスカを後にしてクスコに向かうつもり。なんでそんなに急ぐかというと、天気予報によればクスコ地方は明日、明後日あたりまで天気が良いというからなのだ。ナスカ〜クスコ間の700キロの道のりは険しく、5ヵ月前に通ったゴリラのマサの情報のままだと、うち150キロは未舗装だ。雨季まっただなかに走った人は川渡りも経験したと言うし、実際、クスコでは最近雨季に入り、雨が多いという。これは天気の良いうちに行かなければ・・・。というわけで、私は急ぐのであります。


本日の走行距離      455.9キロ(計27046.9キロ)

出費                  52.5S   ガソリン
     10S  宿代
     10S  夕食(中華)
     45US$ 遊覧飛行ツアー代
計        72.5S(約2240
         45US$(約4860円)

宿泊         Hotel Nazca


2000年12月3日(日) 地上絵を見る(Watching Nazca lines from the sky)

 ツアーの車は朝7時半にホテルに迎えに来た。眠いが、急ぐのだから仕方がない。乗りこむと、車はナスカの町外れの飛行場に向かった。

 使用する飛行機はやはりセスナ。エンジェルフォールの時に1回乗っているので、飛行機自体にはそんなに興奮しない。同乗するのはカナダ人カップルと、イタリア人の男性二人組み。
 離着陸に使うタイヤの調子が悪いらしく修理の間20分ほど待たされたが、「コードーカンでジュードーを習った」というアヤシイ日本語を使うパイロットの操縦で、セスナは無事大空に飛び立った。

 セスナはあっという間に地上絵の上空に差しかかり、パイロットは見やすいよう左右に大きく機体を傾けながら旋回をはじめる。
  「はい、Dog、イヌね」「これはHumming bird、ハチドリね」と英語と日本語両方の説明がニクいが、ちなみに「はい」とか「これは」とかいう部分は日本語で、このオヤジ、英語より日本語の方が得意らしい。日本人の先生について柔道を習っていたというのは本当だ。

 さて、肝心の地上絵だが、パイロットは一つの絵につき2回、左右の窓から平等に見えるように旋回してくれるのでとても見やすかった。太陽がちょっと高く、少し見えにくかったが、それでも何十、何百メートルという大きさの絵が見られるのは感動ものだ。
 私のお気に入りは「猿」だが、思ったよりも絵の損傷がひどくて良い写真が撮れなかった。ちなみに左上の写真は「ハチドリ」、右は「宇宙飛行士」。分かりますか?

 地面を覆っている褐色の石や岩をどかし、白い砂の地面を露出させるという単純な方法でこれらの絵が描かれたのは紀元100〜800年だという。空から飛行機によって確認されたのが20世紀中頃、それまで実に1000年以上もほったらかしになっていたのだ。
 ナスカ地方はほとんど雨が降らないために地上絵が残ったそうだが、空から見ると、雨水が通った跡と思われる筋や乾燥した川は結構あった。これらの頼りない線が1000年以上も残ったのは奇跡のような気がする。

 しかし、あまり感慨にひたる間はない。セスナは十数個の地上絵を一通り回ると、すぐにナスカの町にとって返した。飛行時間は30分少々。ちょっと短いと思う人もいるかもしれないが、私にはちょうど良かった。というのも機体はかなり(90度になるほど)傾くので、あまり長く乗っていると気分が悪くなるのだ。実際酔う人も多いという。

 地上絵を満喫した後は、ホテルで朝食を食べてすぐに出発する。クスコへ直接向かう山道は、ナスカの町外れが起点になっている。
 今日の目的地、チャルワンカ(Chalhuanca)までの350キロは舗装とは聞いていたが、思ったよりも状態は良く、天気も青空が広がって気持ちがいい。

 道は約700キロ離れた標高3400メートルのクスコに向かって少しずつ上がるのかと思っていたら、とんでもなかった。ナスカを出て約1時間、写真を撮ろうとバイクを止めて時計の高度表示を見たら、何と3800メートルを指していた。わずかに80キロしか走っていないのに、ほとんど高度のないナスカからもう富士山の頂上まで登ってしまったのだ。
 そしてその30分後、時計の高度表示は消え(つまり計測範囲の4000メートルを超え)、その状態は何十キロも続いた。高度が高くても峠や山道といった感じはあまりしなく、むしろ高原といった感じ。道も思ったよりも直線が長くて走りやすい。

 ナスカから160キロ地点にあるプキオ(Puquio)で昼食を挟むと、その後の200キロ弱はそれまでより一層走りやすく、景色が美しかった。ずっと高度4000メートル以上を維持し(最高地点は少なくても4500はいっていたと思う)、雲も少し出てきて寒いのが難点だが、DRは目立ったパワーの落ちも見せず、ガンガン走ってくれた。
 高原は緑色や黄色の草に覆われ、ところどころに放牧のリャマやアルパカの群れがいる。ちょっと寂しさは感じるが、何と穏やかな景色だろう。この道を南米ツーリングのハイライトと形容した人がいたが、まさにその通りだ。

 午後5時半ごろ、チャルワンカに到着した。宿は2、3軒しかない小さな村だが、駐車場のあるホテルを見つける事ができた。しかしチェックインしようとすると、近くで飲んだくれていた酔っ払いのオヤジが絡んできて、「日本人はこの村にはいらない。次の街アバンカイまで行きやがれ」という。どうやらフジモリに対して腹を立てているらしい。
 別の人が彼をなだめてくれて無事にホテルに入れたが、そういえばこんな事、あって当然なんだよな。状況が状況だし。今まで無かったのが幸運なのかも。
 夜は近くの食堂で食事をしたが、そこでもテレビで「フジモリ疑惑特集」(の予告編だったが)をやっていた。ちょっとまわりの視線を気にした。フジモリさん、とりあえずペルーに帰ってシロクロつけましょう。海外から突然「大統領やめました」は、国民が納得していませんよ。  


本日の走行距離      346.8キロ(計27393.7キロ)

出費                     5S   空港使用税
     5S  朝食(卵、パン)
     10S  Tシャツ
     47S  ガソリン
     5S  昼食(メヌー=定食)
     12S  宿代
     5.5S  夕食(セナ=定食)
     3S  水、トイレットペーパー、菓子
計        92.5S(約2850
宿泊         Hostal Zegarra