今まで何度も繰り返してきた牛次郎での国境越えだが、今日が最後。マンコラの町を後にしてエクアドル国境に向かう。
途中、ビーチに面した食堂で朝食を取り、国境に着いたのは午前11時ごろだった。ここの国境は少々複雑で、イミグレ(入国管理事務所)と税関の位置が違う。まずは手前にあるイミグレでパスポートに出国スタンプをもらい、本当の国境である橋に向かう。
地図上では町が無いので静かな所かと思ったが、実際はペルー、エクアドル側とも建物が建ち並び、道路上はアヤシイ露店で溢れていた。車を停めるとすぐに両替商やガイド、物売りが声をかけてくる。この猥雑さ、中米の国境のニオイがする。
税関は橋のたもとにあり、そこで牛次郎のペルミソをキャンセルする。エクアドル側の税関も橋を渡ったところにあるが、牛次郎はエクアドル登録の車なので手続きはなし。町を抜けた道路上にあるイミグレでパスポートに入国のスタンプをもらい、国境を後にする。
エクアドルに入国したあたりから、まわりの景色がガラっと変わった。ペルー北部の砂漠とうってかわって緑、また緑。道の両側にはバナナ畑が永遠と続き、道ゆくトレーラーにはアメリカの果物会社「DOLE」のマークが。グアヤキルを中心としたエクアドル西南部は低地で熱帯性の気候、エクアドル特産のバナナの一大産地なのだ。だとすると、大動脈であるこの道路はバナナ街道か。司馬遼太郎ならどう書くだろう。
エクアドルに入国してガソリン代がぐっと下がった。レギュラー1ガロン(約3.75リットル)が80セント(約85円)。ペルーの約3分の1だ。エクアドルでは我々のいなかった間に通貨の改定があり、それまで使われていた「スクレ」が廃止され、国内の流通分も米ドルに統一された。ドル換算をしなくていいのは楽だが、以前の物価と比べる際には結局計算が必要になる。
ちなみに紙幣はアメリカで印刷されたドルをそのまま使用しているが、コインは自前のデザインのものをカナダの造幣局に発注しているらしい。
ガソリンが安いのはいいが、道の状態がガラリと悪くなった。道は穴だらけ、そしてあの「トペ」が現れた。トペは町の入り口や出口にある速度を落とさせるための凸だが、これがいきなり現れるので恐怖なのだ。ブラジルあたりから姿を見たくなっていたが、エクアドルに入ってそこら中に出てくるようになった。
バナナ街道を抜け、大きいわりには何故か地図に載っていない町La Troncalに泊まることにする。町一番だという高層ホテルは一泊6ドルだったが、外見の割りに部屋は質素だった。
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