バックパッカーが航空会社を選ぶとき、ほぼ間違いなく決め手となるのは値段だ。 ● ● ● さて、その次の日。僕とチカさんは日本行きの航空券を買うため、カオサンロードを歩き回った。 ● ● ● 「ビッグブルー・チャバ」のスタッフのみなさんは、僕のこともチカさんのこともよく覚えてくれていた。しかし、なんでこの二人が一緒にいるのか、とても不思議そうである。僕が去年ここを訪れたときには松井史織と一緒だったし・・・。 しばらく陸や船の上で過ごし、体内に溜まった窒素が抜けたところで3本目。海洋公園にある「トゥンクー・ノーイ」と「トゥンクー・ヤーイ」のふたご岩がポイント。青い斑点のきれいなエイが見られて満足。 そして夜、怒涛の4本目はトーチ片手のナイト・ダイブ。満月の灯りは水中までそそぎ、手で水をかくたびに夜光虫がキラキラと光る。昼間はなかなか見られないエビやカニに光をあてると、「あっやめろ。まぶしいまぶしい」と、逃げていくのがかわいい。 紫色のイソギンチャクみたいなものがゆらゆらと泳いでいたが、あとで聞くとウミシダという生き物らしい。真っ暗な水中でそんなものをみると、まるで宇宙にいるみたいな気分で、とても同じ星の仲間とは思えない。陸上と水中の世界は、こうもかけ離れているのだ。 考えてみればほんの一週間前、僕たちはヒマラヤ山脈に抱かれた標高3300メートルの村にいた。それが今、南太平洋の海の底にいるんだから、なんて贅沢なのだろう。 さすがに一日4本も潜るとグッタリで、夕食後はトランプ大会を計画していたが、みんな崩れるようにして眠ってしまった。 そして翌朝も6時半起床。船はタオ島の沖に戻っており、大物が見られる定番のポイント「チュンポン・ピナクル」にいた。前日の疲れがまったく取れていなく、そのまま船で寝ていようかとも思ったけど、重い腰を上げて潜ったら大正解。 タオ島周辺は普段それほど透明度はよくないが、この日は30メートル先まで見える絶好のコンディション。しかも早朝なだけに他の船も来ていなく、僕たちだけの貸切状態。バラクーダの群れは洗濯機のようにグルグルと回り、ツバメウオの群れは軽やかに舞い、1メートルを優に超すヤイトハタは岩の上で巨体を休めていた。今までの中で、文句なしのベスト・ダイブだった。 2本目も同じポイントだったが、残念ながらそれまでの間に水は濁ってしまった。朝一番の美しさは、偶然がいくつも重なった幸運の産物であるらしい。 そして昼食を挟み、ミニ・クルーズ最後のダイブは、より島に近い「ホワイト・ロック」にて。ケースケ君が岩場のトリガーフィッシュをからかって遊んでいた。はじめからいると分かっていて、そして行動パターンが分かっていれば、それほど恐れなくてもすむ。 50分ほどたっぷりと潜って、南国のダイビングを締めくくった。本当はクルーズが終わったあとも潜りたかったのだが、耳の調子があまり良くないので大事をとることにしたのだ。 午後に下船。それぞれ用意された宿にチェックインし、一息ついてから「ビッグブルー・チャバ」に再集合。船上や水中で撮ったデジタル写真の上映会が行われ、そのあとは裏にある日本食屋「ひで食堂」で打ち上げが行われた。 今回の参加者の中に、30代半ばのサラリーマンの人がいた。とても酒好きな人で、僕たちは午前1時ごろまで彼にごちそうになってしまった。その人と帰る方向が一緒だったケースケ君によると、彼は酔っ払ってビーチで寝ていた犬に一時間ほど説教をしていたという・・・。 ● ● ● 3月20日は島のコテージで一日ゆっくりと。本当は日記を打つはずだったのに、ダイビングの疲れで集中できない。耳の調子もよくないし、腹も痛い。だるいだるい、ウエー、と、結局一日ゴロゴロとしてしまった。こんなことなら、最初からパソコンなんか開かないで海で遊んでいれば良かった。 |