湖からリトアニアとの国境は近く、30分ほどで着いた。リトアニアもグリーンカードが使えないので、一番短い15日間有効の自動車保険に加入する。
入国審査、税関とも問題なかったのに、最後の警察のゲートがいけずだった。停止線をほんのわずかに越えて停まったら、バイクを押して戻れというのだ。しかしそこは微妙に下り坂で、僕の細腕じゃDRは後退してくれない。係官のオヤジは僕の格闘している様子を手伝いもせず、うすら笑いを浮かべて眺めていた。しばらくしたらそのまま前に進み、Uターンして戻ってこいというのでその通りにしたが、停止線で止まらせるだけで書類のチェックも何もなかった。なんなんだよ、いったい。
首都ヴィルニュスには午後3時ごろに着いた。ここのところリトアニアでは天候の変化が激しいみたいで、国境からの途中、いたるところで雨が降った跡があったが、幸いにも僕が降られることはなかった。
けんじさんに教えてもらった宿を何軒かあたるが、結局街の東側にある大きなユースホステルに泊まる事にした。バイクも人目につかずに停められる。
宿を探している途中で、ひさしぶりに立ちゴケしてしまった。路肩に停めてあったバイクにドスンと腰かけたら、スタンドとは反対側にバイクが大きく傾き、「あらら?」と思っている間にすでに支えられない角度になっていた。やっぱり荷物満載のDRは重い。270キロくらいあるからな・・・。道行くオヤジに手伝ってもらって起こした。
8人部屋のドミトリーにチェックインしたあと、旧市街に出てみた。
人口60万人のヴィルニュスはこじんまりとした首都で、見所の集まる旧市街は歩いて十分に回れる大きさだ。街には石畳の小さな路地や古い教会が多く、歩いているうちにナポレオンが絶賛したというレンガづくりの聖アンナ教会に出た。夕陽に映える赤レンガがなかなかクールである。
すでに夕方になっていたが、昼食を食べていないので腹が減っていた。何か食べられるところを探していたら、けんじさんが教えてくれた「サラ」という旅行代理店を見つけた。ロシアビザの申請代行をしてくれるところだ。まだ営業中だったので、さっそくビザを申し込むことにする。
受付のお姉ちゃんは英語が堪能で、ビジネスビザ取得のために何が必要かていねいに教えてくれた。かかる日数によって3段階くらい料金が違うが、翌日発行で700リタというので、けんじさんから聞いていたより安い!と早とちりして僕は申し込んだ。
このとき僕は為替レートを間違えていたのだ。リトアニアの通貨リタはポーランドのズオッティと同じくらいの価値かと思っていたら、1割以上も高かったのだ。700リタというと200ドルくらいになる。けんじさんから聞いていたよりむしろ高い。
しかしこれでビジネス3ヵ月、ダブルエントリーのビザが取れればよしとしよう。何もなければ、明日の午後にはパスポートにロシアのビザが貼られて戻ってくるらしい。
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