週末になって、ギリシャはいよいよ復活祭の連休に突入した。アナベルのまわりも、いつもの喧騒が嘘のようにひっそりとしている。まるでゴーストタウンのようだ。
出発を明日に控え、最後のインターネットをしようとしたが、いつものインターネットカフェも閉まっていた。仕方なく近くにあるインターナショナル・ユースホステルに行ってみたが、そこのパソコンはインターネットだけが使えるようにシステム上で制限されており、フロッピーディスクが使えない。僕はホームページの更新はもちろん、インターネット代金を節約するためにメールも自分のパソコンで打ってからフロッピーに落として持って行くことにしているので、フロッピーディスクが使えないと何もできないのだ。
しばらく格闘していたら、背後に人の立つ気配を感じた。ふりむくと、そこには日本人の中年男性が、いかにも「日本語の会話に飢えています」という顔をして立っていた。建築関係の仕事を辞め、しばらくヨーロッパをまわる予定だそうで、今はインターナショナル・ユースホステルに宿泊しているらしい。そこで僕とごり君は彼を数少ない営業中のカフェに誘い、5月の陽射しが照りつけるなか、3人で生ビールを飲んだ。
そしてそのまま彼を我らが「アナベル」に連れて行き、最後の「残飯処理ディナー大会」に加えてあげた。4人のライダーたちは明日の朝にアテネを発つので、残った食材を処分しなくてはならないのだ。ありあわせの夕食で申し訳なかったが、その中年男性は恐縮し、食後のワインのためにわざわざおつまみを買ってきてくれた。かえって気を使わせちゃったな・・・。
もっと話をしたかったが、明日の朝が早いので午後9時にはお開きとなった。荷物のパッキングをして午後10時半にはベッドに入ったのに、久しぶりにバイクに乗ると思うと興奮してなかなか寝つけなかった。
やがて12時になり、教会の鐘が鳴り響いて「聖なる日曜日」の到来を知らせ、そして午前1時にはごり君の激しいイビキが部屋に響きはじめた。ようやく眠くなってきたかと思うと今度は蚊が出始め、僕は浅い眠りと目覚めを繰り返し、最後の夜を過ごしたのだった。
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