ウィーンのキャンプ場を後にし、隣国ハンガリーの首都ブダペストを目指した。チェックアウトタイムの12時ギリギリに出たものの、距離にして200キロちょっと、陽の高いうちに着けると思っていた。
しかし、まずウィーンを出るところでつまづいた。ブダペストに向かう高速道路は簡単にみつかるのだが、私は乗るのに必要なステッカーを買っていない。何とか一般道でブダペスト方面にウィーンを出ようと思うのだが、どうしても高速道路にぶつかってしまう。途中にあったインフォメーションセンターで道を聞いてみるが、お兄さんも高速道路を使った行き方しか知らない。
さんざん迷った末に面倒くさくなった。警察に捕まらなければ、ステッカーがあったってなくったって一緒だ。ハンガリーまで50キロもないので、高速道路に乗ってしまった。
ちょっと冷や冷やしたが、無事、ハンガリーとの国境に到着。
さて、ハンガリーに入る前に余ったオーストリア通貨を処分しよう。オーストリア最後のガソリンスタンドに入り、余った硬貨分、金額にして100円ほどもなかったが、ガソリンを入れた。これはさすがに嫌がられるかな・・・と思ってレジに行ったが、事態はさらに重大だった。
レジのオバさんはキレていた。「うちは、5リットル以上で無いと受けつけません!」・・・なるほど、給油機にも小さく、それらしき事がドイツ語で書いてある。だけど読めるわけないじゃん。
「じゃ、どうすればいいのよ。もうシリングが無いのに」といったら、「国境にマネーチェンジがあるので、そこで換えて来なさい」とオバさんはいう。
「えー、勘弁してよ。今からハンガリーに行くんだぜ」(大体、少量でも買っていることは確かなんだから、客だろう。5リットルって、スクーターだったらどうすんのよ。俺の持っていた「キャロット」、2、3リットルしか入らんぞ)
・・・粘った結果、オバさんは「じゃ、今回だけは大目に見ます。その硬貨を受け取ります!」と言った。しかしホッとしたのもつかの間、彼女は私の手から硬貨をもぎとり、なんと!そのままゴミ箱に投げ捨てた。まるで「こんな金額、クソの役にもたたない」と言うように。
あったまきた!!てめえ、お金を大切に扱わないとバチあたるぞ!オープリーズ神様、彼女にバチを与えたまえ・・・。金額が金額なのでこっちもそれ以上なにも言えず、ムカムカしながらガソリンスタンドを後にしたが、あー、今考えてもムカつく。
しかもシェルのスタンドじゃん!俺はなあ、シェルのスタンドでバイトしてたことあるんだぞ!それはそれは客にペコペコしながら・・・。
国境は混んでいたが、手続きはスムーズだった。ヘルメットを取ることも荷物を調べられることもなし。そして久々に新しい国、46カ国目ハンガリーに入国。
ハンガリーの高速道路もステッカーが必要だが、料金をみると1ヶ月で5ドル程度。お、それなら買おう、と国境で買い、バイクに貼って高速道路を走るが・・・途中のチェックゲートで私の買ったステッカーは1ヵ月ではなく、1週間の有効であることが判明した。しまった!どおりで安いと思った。1週間はブダペストに滞在する予定なので、高速道路を使うのはこのオーストリアとの国境〜ブダペスト間、わずか200キロだ。かえって高くついてしまった。
しかし、おかげでアッという間にブダペスト到着。さー、ブダペストに数軒ある日本人宿の一つ、「テレザハウス」に行くべし。ここだけがバイクを安心して置けるという情報を得たのだ。
ドナウ川の両側にあった「ブダ」と「ペスト」という二つの街が合体したブダペストは、いまやウィーンを凌ぐ大都会(厳密にいうとブダも新ブダと旧ブダにわかれていたらしい)。しかし、はーれーごり君にもらっていた市内地図のおかげで、テレザハウスがあるという地点はすぐに見つかった。
しかし、肝心のテレザハウスがみつからない。もともと南米チリで「カワシマ艦長」に地図に印をつけてもらい、はーれーごり君にも確認してもらった地点なのだが・・・何しろ、住所も電話番号も知らないので自力で見つけない事にはどうしようもない。
さんざん歩きまわり、近くの商店に入って聞いたりしたが、それでも見付からないし、誰も知らない。これはインターネットで調べよう、検索したら誰かのHPに住所だけでも載っているかもしれない、と思って一軒のインターネットカフェに入ったら、そこの店員の中東風のお兄さんが「テレザハウス?俺、そこに住んでたぜ」と言うではないか!
彼に正確な場所を教えてもらったが・・・おおい!カワシマ艦長!そしてごり君!思いっきり大通りの反対側じゃないの。どおりで見付からないはずだわ。
そんなこんなで暗くなる直前、ようやく「テレザハウス」に到着。テレザという名物おばちゃんがやっていた宿だが、今は亡き人となってしまったので、その息子さんがやっている。
宿というよりはアパートの一角、二部屋の民家にベッドを10床ほど詰めこんだだけのつくりなので、「友達の家で飲み会をやって、そのままみんなでザコ寝」の人口密度に近い。トイレ/シャワーは一つだけ、キッチンもオーナー不在時しか使えなく、午後1時から5時までは掃除のためロックアウトされるという欠点があるが、情報ノートも日本語の本もあるし、何より日本人の旅行者と会えて中庭にバイクも置ける。
久々の日本人宿、みなさんは温かく私を迎えてくれた。ちなみに正確にいうと日本人宿ではなく、他の国の旅行者もけっこう泊まるみたいで、今回もスペイン人のお兄さんが一人いた。調子こいてスペイン語で話かけたら、えらい早口で返されたので、結局英語に切り替えてしまった。情けなや。
夕食は近くの中華で食べたが、さすがにハンガリー、物価が安い。うーん、歯を治す予定もあるし、大沈没の予感がするぞ・・・。
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