金曜日、DR-BIGミーティングに向かう前に朝一番でリアタイヤを交換した。
ステファンの知っていたタイヤ屋は朝7時半から営業、アッという間に交換してくれて助かった。チューブもガタが来ていたので交換。ステファンがタダでくれたメッツラーエンデューロ2は表面のゴムが劣化しはじめていたが、ちょっと走って一皮むけたら柔らかいゴムが顔を出した。これなら問題なく使える。
いざニュルンベルグを出発、ステファンのDR(90年式赤)と2台でアウトバーンを一路南へ。まず向かったのはスイス、Bodensee湖畔に住む中年ライダー、トニーの家。約50日前にトニーの家からステファンの家に向かった道のりを逆にたどることになる。
途中、激しい雨に降られながら約300キロを一気走り。午後2時ごろにトニーの家に到着した。久しぶりに見る彼は・・・髪を短く切って、なんかフケて見えた。まあ54歳だから、こんなもんか。
トニーも愛車GSX1100Fでミーティングに乱入する予定だったが、4気筒のうちの1気筒が死に、しかも上司が急病で倒れてその代理を務めねばならず、やはり無理とのこと。しかし我々のために昼食を用意してくれ、私はミーティングの後に彼の家にしばらく厄介になる予定なので、必要のない荷物を預かってもらった。
午後4時ごろ、トニーに見送られてアルプスに向かう。ステファンも私もスイスの高速道路を走るのに必要なステッカーを買っていないので、雨の中、下の道を延々と走った。
午後8時、ようやく宿泊場所の一つであるSamenという街のキャンプ場に着くが・・・ほかにDRライダーの姿はなく、しかも受付が7時で閉まっていたので勝手にテントを張るしかなかった。トイレやシャワーは鍵がないと入れず・・・今夜はあきらめるしかない。
テントを張ったあと、すぐにメインの会場となる峠のホテルを目指した。キャンプ場の近くかと思ったら、町から20キロ、標高にして500mは登った山の中だった。気温が下界とまったく違う。
すでに午後10時近かったので、ホテルのレストランは集まったライダーたちで宴たけなわ。奥さんや彼女を乗せての2人乗り参加者も多く、人数にして40人弱ほど。けっこう平均年齢が高く・・・40歳前後ってとこか?ゴツいおっさんの姿が目立つ。ほとんどの人がこのホテルに泊まっているそうで・・・みんないい歳だもんね。
さっそくスイスのDR-BIGクラブの代表、南らんぼう似のウォルターにご挨拶。そしてステファンと一緒にみんなの輪の中に入るが・・・さすがにドイツとスイスの合同ミーティング、会話はすべてドイツ語。ちんぷんかんぷんだ!
英語を話せる人もいるにはいるが、やはり母国語で旧交を温めるのに忙しいご様子。こんなときはステファンが頼り・・・って、さすがに無口なステファン、みんなと会ってもとっても静か。チミがみなさんを紹介してくれないと、私まで無口になってしまうでしょ!
そんなわけで、最初の夜はなかなかエンジンがかからない私でありました。
しかし、翌土曜日の朝食時から「ヤポンから走ってきたの・・・?」と話しかけてくれる人がチラホラと登場。さすがにスイス人やドイツ人はラテンのノリと違い、少々シャイなのね。
ミーティングは今日が本番。本格的な走りの前に、リアのブレーキパッドを交換した。昨日のタイヤ交換時に使用限界に達していることに気づいたのだが、昨日は交換する時間がなかったのだ。
そしてホテルの前にズラリと並んだスズキDR750/800S、その数28台。他にビデオ撮影係のDR650RSとホンダSL650がいるので、合計で30台の大パーティだ。
新旧あわせていろんなタイプのDRが集った。カラー変更までして、一見して手を加えたとわかるマシンも多いが、ノーマルに見えるのも良く見るとキックスターター(!)を加えたり、ブレーキホースなんかを換えていたりして、皆さんこだわって乗っていらっしゃる様子。
ウォルター会長の説明があったあと、アルプス山中を縫う約250キロのコースに全員で出発。班に分ける事もなく、そのまま28台でゾロゾロと走るのだ。
28の巨大なピストンの爆音がアルプスに響く。週末とあって他にもバイクの集団の姿があるが、台数から言っても、「異様さ」から言っても、我々が一番ハバを効かせている。これは気持ちがいい。暴走族の気持ちが理解できた。
そしてT字路にぶつかった。そこを右折するのだが(スイスは右側通行なので日本でいうと左折に相当する)、道案内役の先頭が曲がったあと、直後の2台が交差点の真ん中に立ち塞がり、後続の20数台が途切れなく右折できるよう、左側から来る優先車両をブロックするのだ。そして全員が右折し終わったあと、一番ケツについて再び走り出す。
日本のマスツーリング(台数の多いツーリング)でも使う手だが、久々に見るこの連携プレー、超カッコいい。そしてこれが大きな交差点になったりすると、もっとすごい。数台であらゆる方向から来る交通をブロック、まるでタウンジャック。
当然、走る順番がコロコロ変わるから、私にもその役目は回ってくる。初仕事はヨーロッパでよく見られる右回りのロータリー、直進する皆さんのために、左から回ってくる優先車両を身を呈してブロック。
あー、気持ちいい。私は皆さんの一部となって走っているのね、仲間なのね・・・ジーンと実感しながら、次々とロータリーを抜けて行くバイクを見送る。
その後にもお役目は回ってきたが・・・あまりに気持ちが良いために、本当は必要のないところでもやってしまうハリキリすぎの私であった。
マスツーリングにしてはペースがけっこう速い。アルプスの険しいワインディングを、私の限界の80〜90パーセントほどの小気味良い速度で駆けぬける。少なくても私の通常の移動速度よりははるかに速い。リアタイヤとパッドを交換しておいて良かった。
特に遅れるライダーもなく、中には他をガンガン抜かして普段の荒っぽさが垣間見られるライダーもいたが、実は一番速かったのはビデオ係の2台だ。
行く先々で、この2台が走ってくる我らを撮影しているのだ。ある時はヘアピンカーブの入口で、ある時は橋の上で・・・そして全員を撮り終ったあと、ビデオカメラをバッグにしまって鬼のように追走。そして28台を文字通りゴボウ抜き、本当にブラインドコーナーだろうが何だろうが、ハイペースで流すDR750/800S軍団をアッという間に抜かし、さらに距離を稼ぎ、次のポイントでカメラを構えて待っているのだ。
我々だって決して遅いペースじゃないのに、このオッサンたち・・・すげえ!
スイスで一番高い標高2400mの峠など、いくつか峠を越えたが、天候はコロコロと変わった。青空もあれば濃霧もあり、昼食を挟んでホテルに帰るころには土砂降りになった。
激しい雨の中、ホテルのある峠まで一気に登ったのだが、私は先頭から5台目くらいだった。雨で前が見えず、路面もところどころ牛の糞が散らばっていて滑りやすい。しかし前の4台はペースを落とすことなく、そのまま激走。離されたら道をよくわからない私、追いつくことは不可能だろう。気合を入れ、自分のライディング能力を出しきって食らいついて行った。
・・・すると、後続はついてこられなかった。あとで、私の1台後ろを走っていたオラフ君は「いやあ、あの雨の中、よくあんなに速く走れるなあ」と感心していた。もっと言って!ライディングで誉められたことなんてほとんど無いから・・・。
一緒に走ればもう友達、夕食時にはすっかり溶け込み、いろんなライダーと話をした。そして夕食の後に会長の挨拶があり、飛び入り参加した私へのお礼を言ったばかりか、みんなの前で記念品のクラブオリジナルTシャツをくれた。「これからも気をつけて旅を続けてください」・・・おお、目頭が熱くなる。参加して良かったなあ、来年もまた来ようかなあ・・・。
そして締めくくりは、あの鬼走り二人組みが撮ったビデオの上映会。実は一部のメンバーは木曜日から集まっており、その様子も映っていたのだが、木曜に日帰りしたメンバーの中にはサイドカー付き(!)の人や、ウィリーしまくりの人もいて、かなり過激な様子だった。
ビデオが終わった後も遅くまで話しこみ、DRに関して色んな情報を交換した。いやあ、DR800Sで旅していて、本当に良かった!
★このミーティングの様子は「旅の写真」の中の「スイスその2」でさらに詳しくご覧いただけます
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