旅の日記

スカンジナビア編その3(2001年8月16〜19日)

2001年8月16日(木) サンタクロースの村(Village of Santa Claus)

 またトラブル発生。エンジンガードを兼ねた工具箱にかけている南京錠が、こわれて開かなくなってしまったのだ。チェーンにグリースをさしたいところなのだが、グリースも錠前を壊せるような道具も工具箱の中。仕方ない、このままヘルシンキまで走ろう。

 今日もラップランドを一路、南下する。ノルドカップ周辺もそうだったが、このあたりは野性のトナカイが多い。運転に気をつけないと、道路の真中でトナカイがボケ〜っとしていたりするのだ。
 しかし針葉樹の森の中を闊歩するその姿は、北欧の雰囲気そのものである。

 300キロ走ったあたりで、北極圏を脱した。
 北緯66度32分、境界線上の村ロヴァニエミは「サンタクロース」の村として知られ、世界中の子どもたちからここの郵便局にサンタクロース宛の手紙が届く。その数、累計で600万通。
 170を越える国々から手紙が寄せられているが、一番多いのはキリスト教国を押さえ、わが日本。そういえばフィンランドのサンタクロースに手紙を出すと返事が来るって話、よく日本のテレビでやっていた気がする。

 ロヴァニエミのスーパーに寄って買物をしたが、久々に見る大型スーパーで、ノルウェーに比べると格段に物価も安い。ノルウェーの田舎では個人商店並みの大きさのスーパーしかなく、食品の選択の幅が少ない上に目の玉が飛び出るほどの高さだったので(たまご6個200円、小型ソーセージ4本300円・・・)、貧しい食生活を強いられていたのだ。
 勢い余って、スーパーのカフェでハンバーガーを食べてしまった。久々に食べる温かい昼食は・・・うまい。

 たまに雨に降られながら、その後も南に走り続け、夜8時ごろ、Kajaaniという町のキャンプ場に入って値段を聞いてみる。するとコンセントも使えるきれいな芝生のキャンプ場で、値段は40マルカ(約700円)。肩の力が抜けた。1000円以上は確実にすると思っていたのに、これなら昨日も無理して野宿しなければ良かった。

 そんなわけで、今夜は久々のキャンプ場でゆっくり夕食を食べて日記を打った。昨日から750キロも南下したので、さすがに暖かい。昨夜野宿したときはテントの中でも摂氏7度しかなかったのに、今日は16度もある。


本日の走行距離       750.2キロ(計59168.6キロ)

出費                   280mk  ガソリン
33mk  昼食(ハンバーガー)
30mk  テレホンカード
58.34mk  食材、靴の中敷
40mk  キャンプ場
計     441.34mk(1ドル=約6.7マルカ、約7900円
宿泊         Cityfutura Puhtainta


2001年8月17日(金) 巨大サウナの町(Town of great sauna)

 フィンランドにはサンタクロースの他にもうひとつ名物がある。裸の人たちが湯気の中でピシャッ、ピシャッと葉っぱで体をたたく、あのサウナである。
 やはり1回は経験せねばと思い、そしてせっかく行くのならサウナの王様、Kuopioという町の巨大サウナに行ってみることにした。このサウナは収容人員60名、世界最大のサウナらしい。

 昨日泊まった町からこのKuopioまでは、約150キロほど。久々に朝から天気も良く、いつものクセでカッパを着て走ったら、暑くて疲れた。Kuopioのキャンプ場に着いた時点で気温を計ったら、摂氏25度・・・。天気のおかげもあるが、昨日からさらに10度も暖かい。冬から一気に夏になった感じがする。
 ちなみに今日、デジタルカメラを買いにドイツのハンブルグに行った8月6日以来、実に11日ぶりに雨に降られなかった。この11日間で、むこう1年分の雨に降られた気がする。

 サウナの前に、町の中心に行って両替をした。スウェーデンのクローネが余っていたので、それを銀行でフィンランドのマルカに換えたのだが、思ったよりも手数料が高く、たいした金額にならなかった。
  Kuopioは人口約10万人、久々の大きな町はどこかホッとする。今までずっと森の中だったから・・・。

 オープンカフェで生ビールを飲んでいる人たちがいたので、つられて一杯飲んでしまう。青空のもとで久々のビール・・・格別だが、一杯21マルカ(約380円)は高い!
 ビールはまだマシだが、北欧はアルコール度の高い酒、たとえばウイスキーなどは税金の関係でとても高い。そして免許のある特別な酒屋でしか売ってなく、ノルウェーではジャックダニエルがショーケースに入れられて3500円で売っていた・・・。とても手が出ない。
 北欧、特にフィンランドは世界的にみても自殺率が非常に高い。夏に陽が長い反面、冬は闇に閉ざされ、塞ぎこんでしまうからだというが、高アルコール度の酒をもっと人々に飲ませてはどうだろう。長い冬の夜、コタツに入って鍋をつつきながら日本酒をキューッ・・・そんな幸せを味わったら、自殺なんてできないって。
 あ・・・それは俺の個人的な願望か。

 キャンプ場に戻り、いざサウナに行って見るが・・・ガーン!なんと火曜日しかやっていないという。「ロンリープラネット」には金曜日もやっていると書いてあったのに・・・。
 仕方なく、すごすごとテントに戻って設備の整ったキャンプ場のキッチンでカレーを作った。ちなみに昼食はドイツで買ったソバだった。スーパーでは日本と同じミカンを買ったし、今日の献立だけをみると、まるで日本にいるみたい。 


本日の走行距離       191.8キロ(計59360.4キロ)

出費                    75mk  キャンプ場
21mk  生ビール
22.63mk  食材の買物
計     118.63mk(約2120円
宿泊         Kuopio Camping Rauhalahti


2001年8月18〜19日(土〜日) ハラ家の週末(Weekend at Halla's)

 18日、昨夜の残りのカレーを朝食に食べてから首都ヘルシンキを目指す。途中のガソリンスタンドから、週末をお世話になるマルコの家に電話を入れて行き方を教えてもらった。

 フィンランド人、マルコ・ハラもDR乗りである。彼も私のHPを偶然発見し、北欧に来たらぜひ寄るようメールをくれたのだ。マルコ・ハラ・・・漢字で書いたら「原丸子」。なんか、「ちびまるこ」みたい。
 しかし、高速道路の出口まで迎えに来てくれた彼と初めて会ってみると、ぜんぜん「ちびまるこ」なんかじゃない。身長は180センチくらいだが、なんせ腕も足も極太。頭はスキンヘッドにしていて、強面。まるでロシアンマフィアの用心棒だ。
 電話の声からは中年男性を予想していたのだが、マルコは私と同い年、誕生日はわずか5日違いだった。

 彼の家に着いてしばらくすると、奥さんのティーナと生まれたばかりの息子ミロが買物から帰ってきた。ミロは本当に生まれたばかり、まだ2週間くらいしか経っていない。
 本当は、お邪魔するべきじゃないと思った。初めての子どもが生まれたばかりで、客が泊まるどころじゃないだろう。しかしフィンランド航空でエンジニアをしているマルコは今週末から夏休みで、「ティーナも息子も落ち着いているから大丈夫」という彼の言葉にも甘えて、ついつい来てしまった。ここらでバイクの整備とインターネットをしておく必要があるのだ。

 マルコの職場は当然ヘルシンキ国際空港。家はその近くの住宅街にあるが、滑走路とは反対方向なので騒音はない。平屋建てだが、3人と犬2匹が住むには十分すぎる大きさ、そして新しい。
 しかもサウナがある!・・・いや、「しかも」というのは適切ではないかもしれない。フィンランドでは家庭にサウナがあるのはごくあたりまえで、電気式から焼いた石を使う本格派まで色々と種類もあるらしい。

 夕食の後、さっそくマルコとサウナに入った。家庭用といっても大人3人がくつろげるほどの大きさである。電気釜が常に熱せられており、使うときにフタを開け、水をかけてサウナ内を暑くするのだ。
 マルコが釜にひしゃくで水をかけると、熱気がモワッと広がる。2人ともスッポンポン、汗ダラダラ。この「裸の付き合い」は、日本の銭湯とどこか似ている。そういやヨーロッパでは珍しく、フィンランドでは靴を脱いで家に上がる。
 フィンランドの家にはサウナがあるかわりに、風呂桶がない場合が多いらしい。マルコの家もそうだが、要は風呂で温まる代わりにサウナで温まるのだ。マルコによれば彼の祖父は厳しかったらしく、一緒にサウナに入るとなかなか出してもらえなかったそうだ。日本の「肩までつかって100まで数えなさい」と同じだ。
 幼児も生後数ヵ月で水に浸かりながらサウナに入るようになり、2、3歳になると大人と同じように楽しむそうだ。さすがサウナ発祥の地である。

 そんな話を聞いているうちに、かなり限界に近くなってきた。マルコの水をかけるペースも徐々に上がり、肌の表面が痛いほど暑い(熱い)。しかし早々とギブアップしてしまっては、「日本人はだらしがないなあ」と思われてしまう。平穏を装いながら必死に耐える。
 すると、実はマルコも辛そうだ。フィンランド人と日本人の密かな闘い、2人ともひきつった笑いを浮かべながら全身汗だく、遠のく意識。
 そして「ちょっと休憩!」と言い残し、マルコはサウナを出ていった!おお、勝利!・・・と思ったのもつかの間、水を一杯飲んだマルコはすぐに戻ってきて、さらに釜に水をかける。
 ・・・もうダメ、ギブアップ。千鳥足でサウナを出て、シャワーを浴びた。しかしこんなことで意地になって、何をやっているんだろう?

 翌日曜日は久々にDRを大整備。約2万キロぶりにマグネトカバーを開け、バランサーチェーン、タペットを調整。壊れた工具箱の南京錠は金ノコを借りて破壊、サイドケースの止め金はマルコがリベットの代わりに小さいネジを使って直してくれた。

 マルコのガレージにはバラバラになった彼のDRがあるが、肝心のエンジンがない。聞くと、彼のエンジンはオーバーホールを兼ねたチューンのためにドイツのショップに預けてあり、来年までには930cc(!)、80馬力(通常は54)のモンスターエンジンになるらしい。それで料金は約20万円、日本ならオーバーホールのみの金額だ。
 いいなあ・・・俺のDRも930にしてしまおうかなあ!?日本に帰る前にドイツに戻り、チューンしてから帰るというテもあるな。どうせその頃には、エンジンをオーバーホールする必要が出てくるのでは?

 夜は子どもの世話で忙しい二人のために、私が夕食を用意した。しかしDRの整備が思ったより時間がかかり、ゆっくりと何を作るか考えるヒマもなかった。結局、またカレー・・・なんか、カレーをヨーロッパ人に食べさせて回っているなあ。
 そしてマルコと近くのバーに飲みに行って帰ったあとは、インターネット。2週間もやらないとメールの返事がたいへんなのだ。
 そんなこんなで、ハラ家での週末はたいへん忙しかった。


2日間の走行距離      418.9キロ(計59779.3キロ)

出費                    40mk  ビール
31.37mk  食材の買物
計     71.37mk(約1280円
宿泊         ハラ家
インターネット    ハラ家