昨日無理に越境しなくて大正解。朝になったら体調は回復し、空は真っ青。さあ!アルプスを越えるぞ。
キャンプ場からP.de Tresaという町の国境まで、あっという間に着いた。イタリア側にあるACI(イタリア自動車クラブ)の事務所に立ち寄り、45日間有効のグリーンカード(欧州共通自動車保険)を購入する。スペインより高いが、仕方がない。これであと1ヵ月は保険のことを心配しなくて済む。(と、この時は思ったのだ)
スイス側に入って、まず給油。スイスの物価は高いが、ガソリンだけはイタリアやフランスより安い。といってもリッター90円弱だから、日本と同じくらいだが。
ガイドブック「ロンリープラネット」によると、スイスの高速道路を利用するには40フラン(約2800円)の一年間有効のステッカーを購入し、車両に貼らねばならないという。アルプスを抜けるトンネルなどでは、さらに追加で料金が徴収されるそうだ。
2、3日しかいないのに、そんな料金を払えるわけがない。当然のごとく一般道を北に向かう。
国境から走り出すと、すぐに登り道になった。左右には田園風景が広がり、いたる所で山の斜面から雪解け水が滝となって落ちている。
やがて道は険しくなり、急なカーブが続くようになった。グングン標高があがり、迫る山々には白い雪が見られるようになった。
カーブを抜けるごとにアルプスはその表情を変え、走る者を飽きさせない。いちいち絵になるので写真を撮らずにはいられなく、止まってばかりいて先に進めないのだ。しかし道路のすぐ脇は断崖絶壁なので、脇見運転には注意が必要だ。ガードレールすら無い個所もある。
そして標高2200mほどのSusten峠に到着。
トンネルの西側に抜けると、さらに景色がパワーアップ。「筆舌に尽くしがたい」どころか、「筆舌にその美の百分の一も表現しがたい」だ。
もう、シャレにならないのである。詳しい地図やガイドブックが無いので、どれが何という峰で何という湖だか知らないが、人間が勝手につけた名前なんか、もうどうでもいい。
過去600日、5万キロの道のりで、文句無しにここが一番美しい道、美しい峠だ。徒歩やツアーでなら同じくらい美しい景色はあった。しかしバイクで走った道となると、ここが過去ナンバーワンである。今日ほど自分がライダーで良かったと思った日があっただろうか?
「アンデスやパタゴニアも走ったのに、それで一番がスイスなんて、ちょっと一般的すぎない?」 とお思いかもしれないが、だってそうなんだもん。めちゃくちゃキレーなんだもん。
しかし、この景色の美しさは天気によるところが大きい。ピーカン照りでも10度ちょっとの気温なので、これで天気が悪かったら景色が見えない上に夏でも雪が降るだろう。あー、つくづく昨日無理して来なくて良かった・・・。
午後4時ごろ、二つの湖に挟まれた都市インターラーケンに到着。この名前を知っていたり、聞いた事がある人も多いだろう。アルプス観光の基地となるこの町には、毎年多くの日本人がやってくる。さらに山寄りの村グリンデルワルドには、日本人のための観光案内所とインターネットカフェまであるという。
町を走ってみると、なるほど日本人が多いが、中国人や韓国人も同じくらい多い。若い人たちはみんな「今風」の格好をしているので、パッと見ただけではなかなか見分けがつかないが。
キャンプ場にチェックインして、食事に出たらスイスの物価高を体感した。
まあ、物価というのは国よって違いがあるのでしょうがないが、頭に来るのは、その上にセコイところがあるのだ。例えばマクドナルドのセットが約780円もするのに、ケチャップをくれと言ったら「追加で0.2フランいただきます」・・・。わずか15円くらいだけど、それならタダでくれよ。元が高いんだから・・・。
キャンプ場も元の料金が約1700円もするのに、シャワー、そして流しの水道(!!)まで別料金。コインの投入枚数によって使える時間が決まるのだが、例えばシャワーは40円で3.5分・・・セコくて涙が出る。洗濯機や乾燥機、キッチンやコンロもあるが、これらも当然のごとくコイン式。
ここが世界でも有数の観光地だからかもしれないのだが、そんな細かい料金を設定するくらいなら元の金額に含めろって!いちいち面倒くさいでしょ!
まあ、最高の景色を拝ましてもらったので、この寛大なカズヒロ様は大目に見てやろう・・・。
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