旅の日記

北イタリア編その2(2001年7月10〜11日)

2001年7月10日(火) 「世界一美しい都」に到着(World famous Venice)

 朝起きたら、空は鉛色だった。あの低気圧がもうイタリア半島を横断して追い付いてきたのだ。
 雨が降る前に急いで出発するが、ベネチア(ベニス)までの約200キロの間に数回降られ、うち1回は土砂降りでさすがに陸橋の下で雨宿りした。
 雨はさておき、長靴の東の付根に位置するベネチアまでの海沿いの国道は走りやすく、午後2時には到着した。

 さて、「世界一美しい都」といわれるベネチアは「水の都」でもあり、アドリア海がつくった潟に浮かぶ100以上の小島からなる。本土とは長さ約4キロの橋で結ばれているが、車が入れるのはほんの入口まで。ベネチアのほとんどの部分は歩行者しか入れない狭い路地や運河、そしてそれにかかる橋で構成されているのだ。

 そんなところにキャンプ場はあるわけがなく、またシーズン中の今、宿を探すのも至難の技だろう。本土側にはキャンプ場が点在するので、道路標識に従ってそのうちの一つに入る。
 Fusinaというベネチア行きのボート乗り場の近くのキャンプ場は施設が整っていて、もちろん電気も使える。シーズン中だが、敷地が広いのでそんなに混雑した感じはない。テントサイトは潟に面していて、対岸にはベネチアの全貌が臨める。インターネットまであるが、料金はピサの約3倍という高さだった。まあ、それを除けばいいキャンプ場でしょう。

 さっそくコンセントの近くにテントを張る。
 イタリアではいろんな形状のプラグが出まわっていて混乱を招いているようだが、キャンプ場にあるのは大型キャンピングカーのアース付きケーブルをガッチリはめる三つ穴方式。普通の家のコンセントとは違うのだ。
 ピサのキャンプ場でアダプターが売っていたが、10ドル以上もするのでやめた。かわりに「サスコム」という日本から持ってきた世界対応プラグアダプターを使ってみると、キャンプ場によってはガムテープで固定しなければならないが、ちゃんと機能してくれる。おかげでベネチアでも電気には困らない。

 昼食を食べてゆっくりしたら、ベネチアに繰り出すのには中途半端な時間になった。
 観光は明日にして、フロントで教えてもらった近くのショッピングセンターを探してみるが、結局みつからずに橋を渡ってベネチアまで行ってしまった。
 しかしさすがに交通制限が厳しく、バイクといえどもそこらへんに路上駐車という訳にはいかないらしい。今から有料駐車場に入れるのももったいないので、本土にとって返す。

 本土側の街はメストレという工業都市で、ベネチアよりもはるかに人口が多い。というよりベネチアはほとんど観光用の都市で、もはや生活を営む場所としては機能していない。
 しかしこの「世界一美しい都」の対岸の都市は、今までのヨーロッパの中で一番醜い街だった。古い工場やビルが建ち並び、そこら中が落書きだらけ。雰囲気のガラが悪いのだ。
 「地球の歩き方」にはベネチアは治安が良く、それはかつてのベネチア共和国の子孫たちだからなせるワザかもしれない・・・と書いてあるが、何のことはない。観光業に従事する一部の人を除き、ガラの悪い人も不良少年たちも、住民のほとんどは対岸に生活の場を移したのだ。

 ようやくショッピングセンターをみつけ、スーパーで買物をして帰った。昨日もそうだったが、今日も閉店時間ギリギリになってしまった。イタリアの商店は夜、意外と早く閉める。スペインの感覚のままでいると買いそびれてしまうので、注意が必要だ。


本日の走行距離         277.6キロ(計49023.4キロ)

出費                  32000L  サン・マリノのキャンプ場
   36000L  ガソリン
   5500L  ビールとソーセージ
   5100L  夕食(ピザ)
   9000L  食材の買物
計       87600L(約5180円
宿泊         Camping Fusina


2001年7月11日(水) 水上テーマパーク(A water theme park!!)

 ベネチアまで行けば、さすがにこのキャンプ場より安いインターネット屋があるだろう。昨夜書ききれなかった日記を打ってフロッピーに落とし、朝食を食べてからキャンプ場を後にする。

 4キロの橋をわたり、ローマ広場の自転車置き場にバイクを置く。まずはインフォメーションセンターに行き、詳しい地図をもらってインターネット屋とACI(イタリア自動車クラブ)のベネチア事務所の場所を教えてもらう。

 実は、2ヶ月前にマドリッドで苦労して入手したグリーンカード(欧州共通の自動車保険)の期限が早くも切れそうなのだ。ハーレー乗りの武田さんが当HPの掲示板に「ポルトガルで延長したら安かったよ」と書きこんでくれたのに、その事をすっかり忘れていたのだ。
  グリーンカードの裏には各国の提携事務所が載っていて、いかにもそこで延長できそうなのだが、実は場所によってできないところがある。ちなみに私はアンドラ公国で断られ、ヨーロッパからアジアまで走ったわるいださん はアイルランドで断られたそうだ。イタリアではミラノに提携しているACIの本部事務所があるのだが、ここベネチアの事務所でも情報ぐらいは入るだろう。
 インフォメーションセンターの目の前にあったACIベネチア事務所に行って見ると、グリーンカードは隣国との国境で延長ができるという。よし、明日スロベニアに入国するときに事務所を探してみよう。・・・でも、ほんまかいな?ちょっと不安だ。

 さて、教えてもらったインターネット屋に向かいながらベネチア観光を開始。
 昨日書いたようにベネチアは100以上の小島からなるが、メインの小島群の真ん中にはS字状の大運河(カナル・グランデ)が通っており、これがいわばメインストリート。水上バスや水上タクシー、そして観光用のゴンドラがひっきりなしに行き来している。

 それ以外の無数の運河や水路は狭く、ところどころにそれを越える小さな橋がある。路地も狭くて入り組んでおり、地図が手放せない。
 しかしそんな小さな路地、小さな橋からの風景がいちいち絵になる。運河の両脇には迫るように家々が並び、その中世風な佇まいだけでなく、窓に活けられた花なんかも美しい。そしてそんな風景にみとれていると、足元の橋の下をゴンドラがゆったりと通過していく。車の往来が無いから、たまに通るモーターボートのエンジン音をのぞけば裏路地はとても静かだ。

 そしてインターネット屋に到着。キャンプ場のインターネットの約半額で、日本語の使えるマシンがあり、フロッピーによるHP更新も許可してくれた。サン・マリノ共和国の分までの日記を無事アップロードする。

 やるべきことができて一安心。さて心置きなく観光を続けようと思うが、メイン・スクエアのサン・マルコ広場まで来たら、個人旅行者も団体客も、白人も黒人も黄色人種も、とにかく人、人、人の大洪水である。ハイ・シーズンなのは覚悟していたが、サン・マルコ寺院や鐘楼などの見所の前には長蛇の列。とてもじゃないが、一緒に並ぶ気にはなれない。

 なんか、一足先に千葉に作られている新ディズニーランド、「ディズニー・シー」 に来た気分になってきた。だってベネチア、まるで水上テーマパークだよ。
 都市そのものが観光のために存在しているといっていい。通りに並ぶのはレストラン、ホテル、カフェ、土産物屋が中心で、たまに小さなスーパーがあっても完全に観光客向けの価格。裏路地に入ると小さな美容院や金物屋がポツンとあったりするが、観光業に従事している住民向けのものだ。そう考えると観光業とまったく無縁の住民など、ほとんどいないのではないか?

 混雑ぶりも連休中の東京ディズニーランドを思わせる。夏のバカンスのシーズンだからだが、見るのに季節を問わないベネチアでは一年中観光客が絶えないという。

 確かに美しい街なのである。「世界一」は大げさかもしれないけど、私が見てきた都市の中でも五傑に入る。ただ、このあまりにもツーリスティックな雰囲気がちょっと興を冷ますのだ。客観的に見るとほんとにキレイで、死ぬまでに1回は来るべきなんだけどね・・・。あ、でも住む気には絶対なれないなあ。

 夕方までベネチアを探索し、スーパーに寄ってからキャンプ場に帰る。快適なキャンプ場なのだが、大型バスで来ている若い団体がいて、夜遅くまで騒いでうるさい。施設が整っているのはいいのだが、キャンプ場にバーやディスコはいらないと思うんだよねえ・・・。


本日の走行距離          40.5キロ(計49063.9キロ)

出費                  10000L  インターネット
   3000L  アイスクリーム
   5000L  昼食(ピザ)
   7380L  食材の買物
   4500L  ビール
計       29880L(約1770円
宿泊         Camping Fusina
インターネット    Thenetgate