旅の日記

北イタリア編(2001年7月7〜9日)

2001年7月7日(土) リゾート街道をゆく(Road of Resorts)

 南仏も気に入ったが、先にいくことに。
 今回のフランスで、フランス人のやさしさを確認できた。フランスは今回が3回目だが(うち1回はガキのころだけど)、よく言われるように「お高くとまっている」とか「英語を話せるくせに話そうとしない」 というような人には会ったことがない。今回も、みんな必死に英語で私を助けようとしてくれた。 長くいないので本質は見えないけど、旅をしている分には、みんな温かくしてくれる。
 ちなみにいうと、意外にもスペインの方が愛想が無い人が多かったような気がする。まあ極端な国民性だから、愛想のいい人はめちゃくちゃいいんだけど・・・。宿やキャンプ場のオヤジ、スーパーの店員など、なんか冷たい感じがしたんだよね。

 キャンプ場を出て、高速道路にのる。高いのは承知だが、昨日通ったあのニースやモナコを抜ける国道を使っていたら、いつになってもイタリアには入れない。
 すぐに国境に到着。フランス最後のサービスエリアで残ったフランをイタリア・リラに両替する。そのまま走り続けると、高速道路はいつのまにかイタリアの高速道路になり、最初の出口で降りてもリラで料金を払わねばならなかった。両替していなかったら、どうなっていたんだろう?

 イタリア側から海岸線の国道を走り出す。
 南仏と同じように山々が地中海に迫り、岬と入り江が繰り返す。入り江には決まってビーチがあり、ホテルやレストランが建ち並ぶ。そしてときおり河口の平地があり、そこには中規模の町が広がっている。コート・ダ・ジュールほどではないが、やはり人と車が多く、なかなか距離が稼げない。
 しかし景色は抜群にいい。今日は青空が広がり、真っ青な地中海が目に眩しい。道はときには潮をかぶるほど海にせり出しており、走っていて飽きないのだ。このニースからジェノバにつづく海岸線は、オススメのルート。ただ、シーズンをちょっと外した方がいいと思うけど。

 ジェノバまで国道で走り、そこからは今日の目的地ピサまで高速道路を使うことにした。中途ハンパなところで泊まっては、時間がもったいない。
 しかし、間違って思いっきり別方向の道路にのってしまう。次のインターで降りて引き返せばいいやと思ったら、なんと30キロ近くも出口が無かった・・・トホホ。

 ようやくピサ方面の高速に乗り、時速120キロで巡航するが、それでもヨーロッパの高速道路では遅いほう。高級車なら時速160キロ、普通車でも140キロはあたりまえ。120キロくらいで走っているのは、小型車かキャンピングカーくらいのものだ。ヨーロッパにきて、ようやく抜かされる事に慣れてきた。

 午後7時ごろ、ようやくピサに到着する。そう、あの斜塔で有名なところである。
 幸いキャンプ場もすぐみつかり、電気も使えた。今日明日とここに泊まって、斜塔見物と日記打ちに勤しもう。


本日の走行距離         443.7キロ(計48372.8キロ)

出費                    140F  キャンプ場2泊
   13F  フランス側の高速道路
   158F  ガソリン
   29300L  イタリア側の高速道路
   10645L  食材の買物
計       311F(約4980円
       39945L(1ドル=2030リラ、約2360円
宿泊         Campeggio Torre Pendente


2001年7月8日(日) 本当に傾いている!(The leaning tower of Pisa)

 朝イチで斜塔を見に行く。ピサは小さな町で、町外れにあるキャンプ場からでもバイクで5分とかからない。他に高い建物も無いので、場所はすぐにわかった。アハハハ、本当に傾いているよ!ひゃー、今にも倒れそうな勢いである。

 ピサの斜塔は鐘楼として11世紀に建てられたが、砂の地盤に基礎をつくったものだから早くも建設途中から傾きはじめた。その後、現在にいたるまで数百トンの鉛で支えたり、ワイヤーで引っ張ったり、傾いている方向と逆の地盤の土を吸い出したりと、あらゆる方法で倒壊を防いできたが、今でも少しずつ傾きは増している。以前は塔に入ることもできたが、それも94年からは禁止となった。専門家によると将来倒れることは確実で、あとは時間の問題とか。倒れる瞬間をビデオに収めたらお金になるだろうな・・・。
 本気で国をあげて修復に乗り出せば真っ直ぐになる気もするのだが、そうなったら観光客が来なくなるのだろう。倒れても困るし、まっすぐになっても困る。塔の傾きは、その微妙なバランスを表しているかのようだ。

 斜塔は単体でそびえているわけではない。鐘楼なので、メインのドゥオーモ(教会)と円形の洗礼堂とセットなのだ。いずれもロマネスク様式で、青空に映える白い壁面や柱に施された細やかな彫刻が美しい。今まで正直いってカトリックの建物には興味がなかったが、ここを見て考えが変わった。・・・ううーん、イタリアもいいなあ。

 さすがに世界にその名を轟かすピサの斜塔、観光客が多く、そしてなぜか中国人の占める割合が多い。そこらへんの土産物にも「歓迎人民紙幣使用」と書いてある。イタリアってそんなに中国人が来るの?

 斜塔見物のあとはテントに戻って日記を打つ。
 夕方になって、斜塔に行ったときにみつけた町のインターネット屋に行くが、グローバルIMEのCD−ROMは使用不可なのに自分のパソコンはLAN接続させてくれた。今までCD使用を禁止するほど厳しいところでは当然LAN接続も断られるだろうと思っていたが、必ずしもそうでないことが分かった。今度からあきらめずに聞いてみよう。


本日の走行距離          16.1キロ(計48388.9キロ)

出費                   4500L  ジュース
   10000L  インターネット
   5340L  食材の買物
計       19840L(約1180円
宿泊         Campeggio Torre Pendente
インターネット Internet Planet


2001年7月9日(月) ヨーロッパ版のマチュピチュだ!(A country on a mountain top)

 ピサのキャンプ場にもう一泊してフィレンツェでも見にいこうと考えていたが、低気圧が追い付いてきたのでやめた。この低気圧には南仏からずっと追いかけられているのだ。
 もう少ししたら、たぶん雨が降り出すだろう。予定を変更して急いでキャンプ場を出発する。

 ピサからは東に向かった。イタリアもゆっくり見たいが、ローマは一度行った事があるし、飛ばしていかないと北欧の夏が終わってしまう。
 今日の目的地は長靴の反対側、サン・マリノ共和国に設定。ピサからしばらくは片側2車線の準高速道路が続いたが、料金がかからないのが嬉しい。「花の都」フィレンツェを通過し、なおも東へ。
 イタリアのほぼ中央には山脈が走っているが、反対側に出るには当然これを越えなければならない。高速道路が終わると片側一車線のワインディングになったが、まわりに広がる田園や牧草地の景色がきれいで、車も少なくて走りやすい。標高が高いので風も涼しい。

 午後4時ごろ、アドリア海まであと10キロというサン・マリノのふもとのキャンプ場に到着。四つ星で高いが、他に選択肢がないので仕方ない。
 テントを張ってすぐにサン・マリノ観光に出かける。キャンプ場からは、見上げるほどの岩山をひたすらバイクで登ることになる。

 さて、このサン・マリノも一つの国である。
 わずかな国土のほぼ中央にティターノ山がそびえ、首都はその山頂に広がる。四方をイタリアに囲まれた人口約27000人の小国だが、その存在意義は今まで訪れてきた小さな国々とは比べものにならない。

 サン・マリノは現存する最古の共和国なのだ。歴史のはじまりは何と西暦301年、ローマ皇帝の圧制から逃れた「マリノ」なる人物がこの岩山で生活をはじめ、やがて彼のもとに人々が集まるようになったという。
 「アレンゴ」という家長の集会で選出された2名の最高責任者が国を治めるというシステムは、13世紀に確立されて以来現在に至るまでほとんど変わっていない。一握りの王族や貴族が私利私欲のために国を動かすのが当たり前だった時代に、この山頂では早くも民主主義が生まれていたのだ。

 さらにサン・マリノでは他国の民衆をも救おうと、求められた国際援助は断ったことがないという。現に第2次世界大戦では、この狭い領土に10万人もの難民を受け入れている。
 サン・マリノの姿勢はたびたび時の権力者の目に止まり、ナポレオンはこの国の領土を拡張する申し出を行った(住民は丁重に断ったらしいが)。 そしてアブラハム・リンカーンは「貴国は小さいが、歴史上もっとも尊敬すべき国の一つだ」と最大級の賛辞を寄せた。

 山頂には三つの見張り塔があるが、そこに登って共和国を見下ろすと、なぜこの小国が独立を守ってこられたかがよく分かる。まわりを断崖に囲まれ、さながらヨーロッパ版のマチュピチュである。これなら容易に攻めこむことはできなかっただろう。
  ・・・マチュピチュといえば、あそこが最盛期を迎えていたころ、ここではすでに現在とほぼ同じやり方で国を動かしていたんだなあ。それを考えると、サン・マリノは何と進んでいたことか。

 山頂の町は小さな路地が入り組み、坂道が多い。この国とって観光は一大産業で、そんな路地の両脇には土産物屋、ホテル、レストランのほか名物の切手の店が並ぶ。
 今はシーズン中で、人も多い。とりあえず見張り塔に登って共和国の全貌とまわりに広がるイタリアの丘陵地帯の景色を楽しんだあと、小さな首都を散策した。
 ペルーのマチュピチュほどではないが、ここも心を打つものがある。フィレンツェを飛ばしてまで来て、やっぱり良かった!!


本日の走行距離         356.9キロ(計48745.8キロ)

出費                  47000L  ピサのキャンプ場2泊
   43000L  ガソリン
   6000L  見張り塔入場料
   7000L  ビール、ピザ
   5670L  食材の買物
計       108670L(約6420円
宿泊         Centro Turistico SanMarino