旅の日記

南仏編(2001年7月4〜6日)

2001年7月4日(水) おフランス入り(Entering France)

 通算で1ヵ月近くいたスペインを去る日が来た。アンダルシア地方を中心にていねいに回ったが、それでもまだ見足りない。この旅ですでに25カ国を訪れたが、スペインはトップランクに気に入ってしまった。今度は北部をゆっくり見たいし、トマト投げ祭りや火祭りなども見てみたい。これで最後ということは、おそらく無いだろう。

 キャンプ場としては完璧の設備を誇ったCamping La Ballena Alegreをチェックアウトし、フランスとの国境を目指して北東に進む。ちょっとだけと思って有料道路を通ったら、ほんとにちょっとだけなのに結構いい料金を取られた。やっぱり乗るべきではない。

 フランスとの国境もフリーパス。スペインも決してガソリンは安くないが、フランスよりは安い。あまった通貨を全てガソリンに換えてから越境する。
 フランスに入ったあたりから雲行きが怪しくなる。空が鉛色になり、風も出てきた。プロヴァンス地方にさしかかったあたりでいよいよ雨が降ってきたが、カッパを着るほどではない。小雨が降ったり止んだりする中、田舎道をのんびり走る。

 午後7時ごろ、南仏の古都アルルに到着する。ゴッホの「アルルのはね橋」で有名なところだが、そういえば昔そんな絵を見たような、見なかったような・・・。
 キャンプ場はいくつかあったが、郊外の小さなところに入る。テントを張ってスーパーで買物をしたら、久々の移動で500キロ以上も走った疲れが出てきた。市内を散策する気力はなく、あとはテントで夕食を食べてゆっくりした。

  フランスに入ってから、虫の音が日本的になってきた。夜、テントで耳をすますと草むらからジージー、ジワジワと聞こえてくる。そして遠くからは列車の音がカタタン、カタタン・・・目を閉じると、まるで日本の田舎にいるようなのだ。
 蚊が出てきたので蚊取り線香をたいたら、これまた日本の香りがする。うーん、南仏の夏はニッポンの夏だったのか。知らなかった・・・。


本日の走行距離         510.9キロ(計47539.8キロ)

出費                  11770P  バルセロナのキャンプ場5泊
   1070P  有料道路
   1110P  ガソリン
   29.3F  食材の買いもの
計       13950P(約9300円
       29.3F(1ドル=7.5フラン、約470円
宿泊         あ、調べるの忘れた


2001年7月5日(木) 世界のリゾートは砂利だった(World's resort, Cote d' Azur)

 アルルを去る前に、フランスで最大というローマ時代の闘技場を見に行く。直径136m、収容人数12000人はイタリア・ローマのコロッセオに比べればはるかに小さいが、この闘技場では今でもスペインのマタドールを呼んで闘牛が行われるという。
 え?闘牛?そう、あらためて土産物屋を見ると闘牛グッズが並んでいて、町中にもポスターが貼られている。知らなかった。南仏でも闘牛をやるのね・・・。

 アルルを後にしてフランスの、そして世界のリゾート、コート・ダ・ジュール(青の海岸という意味かな?やっぱり)を目指す。フランス人からフランスの高速道路は料金が高いと脅かされていたので下の道を使うが、途中のAix en Provenceという大きな町で東へ進む国道を見失う。するとホンダのバラデロという大型バイクに乗ったお兄さんがどこからともなく現れ、町外れの国道の入口まで案内してくれた。彼がいなかったら、高速に乗るかあさっての方向に進んでいたことだろう。

 おかげでコート・ダ・ジュールの西の端に無事たどりつく。さあ、あとは中心となる町ニースを目指して海岸線を・・・と思ったら、なんとも激しい渋滞。考えてみれば、今はヨーロッパ中がバカンスである。フランスの車はもちろん、イタリア、スペイン、ドイツ、イギリス・・・各国のステッカーが貼られた車が、海岸線の一車線の道路にギッシリ。まるで夏の湘南海岸である。
 両サイドに大きなケースをつけたままではスリ抜けもままならない。海岸線に出てからまったく距離が稼げず、疲労だけがたまっていく。ニースの手前20キロほどのCagnes Sur Merというあたりでキャンプ場があったので、今日はそこで泊まることにした。

 フランスは星によるランクづけが好きな国である。ホテルやレストランで、よく「五つ星」とかいって高級であることの代名詞に使われるが、キャンプ場も星によってランクが分かれている。昨日泊まったのが二つ星で、料金的にも設備的にもあれ位がちょうど良いのだが、さすがにコート・ダ・ジュールには高級なキャンプ場が並ぶ。四つ星や三つ星が多いが、今日入ったのは後者。料金は70フラン、昨日のニつ星の1.5倍だ。五つ星のキャンプ場って、どんなんだろう・・・?

 明るくチャキチャキしたおばさんが案内してくれ、キャンプ場には最新のプールがあると教えてくれたが、なんと、ななんと、なななーんと、フランスではプールでのトランクス型水着は法律で使用禁止なのだそうだ。トランクス型の水着で座るとスソが地面に触れ、それでプールに入ると衛生上よろしくないのだという・・・。あまりに理不尽な法律に一瞬言葉を失う。ちょっと考えすぎなんじゃないの?
 確かにそこら中のおじさんも、みんなムダ毛を露にしながら競泳パンツをはいている。近くのスーパーで見てみるが、どんなに安くても70フラン(10ドル弱)はする。今回のためだけに買うのはもったいないので、プールはあきらめることにした。

 海に関してはその限りではないというので、キャンプ場からすぐの海岸に出てみるが、風が強く、波がハンパじゃない。南仏のリゾートというよりは日本海の荒波といったところ。おまけにコート・ダ・ジュールの海岸線のほとんどは砂利らしく、ここも石がゴロゴロ。
 やっぱりリゾートは白い砂浜じゃなきゃダメでしょ。その点では、メキシコのカンクンがやっぱりベストかな?


本日の走行距離         282.4キロ(計47822.2キロ)

出費                     45F  アルルのキャンプ場
   120F  ガソリン
   51F  食材の買物
計       216F(約3460円
宿泊         Camping De L'Hippodrome


2001年7月6日(金) 一人モナコ・グランプリ(My own Monaco Grand Prix)

 コート・ダ・ジュールには、モナコがある。
 世界中の金持ちが集まり、高級カジノで高級な遊びをし、高級なヨットやクルーザーに高級な美女をはべらせ、シャワーの後にガウンを着ながらドン・ペリニオンを傾けて「トレビアン」と言うところである。最近では、墨田川花火大会のTV中継にゲストとして呼ばれたデビ夫人がコメントを求められて、「こんなの、モナコの花火に比べたら大したこと全然ありませんのよ。ホーッホッホ」と言い放ったのが記憶に新しい。(ゲストなんだから、もっとヨイショしろよ)

 モナコは国である。国境らしき国境も無いし、公用語も通貨もフランスと同じだが、あのグレース・ケリーが嫁いだ大公家があって「公国」として独立している。その面積はわずかに2平方キロ、「地球の歩き方」によるとローマのヴァチカン市国に次いで世界で2番目に小さい国だそうだ。

 そんな場違いな所にあまり興味は無いのだが、モナコを有名にしているのは何も高級社交場だけではない。
 そう、モナコといえばモナコ・グランプリ、F1のレースである。残念ながら6月に今年のレースは行われているが、市街サーキットなので実際のレースと同じコースをバイクで走れるのだ。今日も広がる鉛色の空の下、砂利の浜で無理やりリゾート気分を味わうよりは、やっぱり一人モナコ・グランプリ開催でしょう。というわけで、キャンプ場からニースを通り抜け、約30キロ先のモナコ公国へ。

 さすがに世界を代表する高級社交都市。地中海に迫る岩山の斜面に、ところ狭しと高級ホテルやマンションが並んでいる。あいかわらず渋滞が激しいが、荷物が無いのでだいぶ楽だ。
 国営カジノの近くのインフォメーションセンターに行ってモナコの地図をもらったら、お姉さんはていねいにレースのコースをペンでなぞってくれた。

 まずは観光がてら、歩いてコースを一周する。
 ヨットやクルーザーが並ぶモナコ湾のスタート地点から走りだし、湾に沿って右に曲がりながらカジノまでの斜面を登る。カジノをぐるりと回り、今度は地中海に向かって急な斜面を駆け下りる。ここにあの有名なヘアピン・コーナーはあり、赤と白の縁石には乗り上げたタイヤの跡が生々しく残っていた。

 海岸に出ると今度は右に折れ、ふたたびモナコ湾に向かってホテルの下のトンネルに突入する。ゆるやかな右カーブだが、タイトなコーナーが多いモナコ・グランプリでは一番スピードが乗るところだ。
 猛スピードでトンネルを抜け、モナコ湾に戻ったマシンは湾を半周してスタート地点に戻る。以外と短く、全長で2、3キロといったところ。

 実際に走る前に、インターネットでもやろうかとインフォメーションセンターで教えてもらった所に行くが、レストランの片隅に置かれたパソコンの使用料は、高級カジノで遊ぶような人でないと払えないくらい高かった。
 あきらめたら、地図の裏にあった「無料インターネットあり」という電気屋の広告が目についた。行ってみるが、あまりにマシンが遅くて話にならない。無料なので文句も言えず、あきらめて立ち去る。

 さて、いよいよ一人グランプリのスタート。
 腕時計をハンドルにつけ、ヤー!と走り出すが、信号も歩行者も車も多くて飛ばしようがない。やはりスピードに乗るのはトンネルの下くらいだ。
 2周して、2周ともラップタイムは約8分半・・・コースレコードは何分か何秒か知らないけど、これじゃ予選通過も夢のまた夢だね・・・。

  Cagnes Sur Merに戻り、今度はそこのインフォメーションセンターでインターネット屋を教えてもらうが、フランスではインフォメーションセンターまでも星がついていた。2ヵ所行ったのだが、はじめの「二つ星」と次の「三つ星」では確かに人員や設備に大きな差がある。この勢いだと、そのうち人間まで星がつくぞ。俺はいくつ星だろう?
 デビ夫人なら、「私ならいくつでも構いませんのよ。ホーッホッホ」と言いながらも、やはり五つ星がつかないと怒るのだろう・・・。
  「三つ星」インフォメーションセンターで教えてもらった3ヵ所に行くが、最初の1軒は商売換え、あとの2軒はつぶれていた。情報の質と星とは関係がないらしい。仕方なく、フランスでのネットはあきらめた。


本日の走行距離         106.9キロ(計47929.1キロ)

出費                     15F  ビール
   10F  間違って乗った高速道路
   18.2F  食材の買物
計       43.2F(約690円
宿泊         Camping De L'Hippodrome