旅の日記

スペイン・バルセロナ編(2001年6月29〜30日)

2001年6月29日(金) 的地夫妻に会う(Meeting a sport writer)

 アンドラ公国からスペインのバルセロナまでは、ほぼ真南に200キロ。有料道路を使うと早いのだが、ピレネーを貫く長いトンネルがあるので料金が高そう。ケチって一般道を走るが、最初の100キロは日本の林道を思わせるきついワインディングで、途中で嫌になった。

 午後2時ごろバルセロナにさしかかる。「ロンリープラネット」で調べておいたキャンプ場までは市内を縦断しなければならないが、大都会のわりに道はわかりやすく、珍しく迷わなかった。
 中心地から約12キロ南西の地中海に面したキャンプ場は、少々値が張るものの、電気が使い放題でプールもあり、こっちの根が生えるほど居心地がいい。どこにテントを張ってもいいというので、コンセントの真正面に陣取ってテントの中でパソコンを使えるようにした。

 昼食をたべて一息ついてから、約束どおり的地(まとじ)さんに電話をかけて、ご自宅までの道順を教えてもらう。バルセロナ市内にお住まいと思っていたが、カステルデフェルスという海沿いの町で、キャンプ場からはバイクで約10分の道のりだった。
 午後7時ごろ、的地さんのマンションに着く。ちょうど的地さんが週刊誌に原稿を送るところだったので、それが終わるまでビールをいただいて待った。

 さて、「バルセロナで会うべき人」の的地さんは、スポーツライターである。私がいたのと同じ新聞社の記者だったとき、92年のオリンピックの取材で一年半駐在してカタルーニャの風土に惚れこんだ。そしていったん日本に帰るも、一大発起して退社。ご家族ともどもバルセロナに移住し、現在はフリーのライターとして各紙/誌に原稿に送っているのだ。私が94年入社なので、会社ではほぼ入れ違い。面識はないのだが、私のかつての上司から「ぜひ会いなさい」と紹介されたのだ。

 的地さんの仕事が終わったところで、奥さんと3人で近くの魚介レストランへ。
 すっかりご馳走になりながら色々な話を伺ったが、ご自身で新しい人生を切り開いた的地さんは、とても幸せそうだった。奥さんも竹を割ったような方で、こういう人となら異国の地でも楽しくやっていけるのだろう。
 自分の人生を、自分で生きる。当たり前で大切なことだが、実は日本人の多くができていない気がする。人生は「人を生きる」と書くのに、形あるものに流され、まるで「物生」・・・。もっと、日本人は好きなことをやっても生きていけると考えた方が良い。私の世代でも、子どものころは子どもらしい夢を持つよう、そして大きくなるにつれてそれを捨てるよう学校で教育された。「好きなことでは生きていけない」と。だけど、好きな生き方を試しても見なかった人に、そんな事をいわれても何の説得力もないだろう?

 エビや貝、パエリアをたらふくいただき、腹の中はすっかり地中海。デザートにアイスまでもらって、いやー、ヨーロッパに来てから最高の食事だった。おそらくこの先も、こんな食事は当分ないだろう・・・。
 的地さんには別れ際、家で余ったというインスタント食品までいただいた。「こんなので悪いんだけど・・・」とおっしゃるが、松茸のお吸い物(!)、味噌汁&パックご飯(!!)、日清カップヌードル&明星「一平ちゃん」(!!!)、オーマンマミーヤ、宝の山ではありませんか!
 なんか、栄養をいただきに的地さんに会ったみたいで・・・ありがとうございます。そしてご紹介いただいた木村さんにも、厚く御礼申し上げます・・・。


本日の走行距離         283.2キロ(計46837.7キロ)

出費                   1700P  アンドラのキャンプ場
   2350P  ガソリン
   70P  電話
計       4120P(約2750円
宿泊         Camping La Ballena Alegre


2001年6月30日(土) ガウディの建築物に魅了される(Gaudi's fine architecture)

 本日よりバルセロナ観光開始。
 さて、バルセロナの見所は何と言ってもアントニオ・ガウディの建築物である。まずは旧市街の目抜き通り、ランブラスの近くにあるグエル邸へ。ここはグエルという、ガウディの友人にして大金持ちだった人の邸宅で、ガウディ初期の代表作。写真撮影禁止なのが残念だが、ガイドつきツアーで邸宅をまわると、彼がイスラム建築の影響を受けていたことがよくわかった。

 グエル邸からはランブラスの反対側にあるゴシック地区に向かった。ここにはカテドラルや、かつて大航海の後にスペインに戻ったコロンブスがイザベラ女王に謁見するために登ったという階段がある。
 しかしランブラスから道に迷い、一本裏の通りに入ってしまった。そしたらいるわいるわ、少年ギャングが。落書きだらけの通りの両側で、昼間っからところどころに悪そうなのがたむろしている。さっそくからんできたが、荷物をしっかり持って睨み、口元だけ笑って「ケ・パソ?」(どうしたの?)と言ったら、からかいの言葉だけで去って行った。夜だったら、こうは行かなかったろう。やはりマドリッドとバルセロナだけは油断ならない。南米と比べたって、安全とはとても言えないのだ。

 一通りゴシック地区を見た後、バルセロナ、いやスペインの観光名所のトップランカー、サグラダ・ファミリア(聖家族教会)へ。
 いや、正確にいうと、「サグラダ・ファミリアの建築現場」だろう。アントニオ・ガウディはライフワークとして1882年に建築を始めたが、彼は1926年に路面電車に跳ねられて(!)死んでいる。以後も工事は進められているのだが、120年経った今でも半分も出来あがっていない。予定ではあと200年はかかるという・・・。じゃ、完成するころには、はじめの部分はもう老朽化しているのではないだろうか・・・。

 よく絵葉書やガイドブックにのっている、あの独特の尖塔が並んでいる建物は、実は門である。東と西の両側にこの大きな門が完成しており、その中央には高さ170mのメインの塔がそびえる予定なのだ。
 完成している門の塔でも高さは100mあり、ガウディの曲線を生かした生物的なデザインと伝統的なカトリック建築の融合は、確かにこれだけで歴史に残る大モニュメントである。しかし地下の博物館にある完成予定図を見ると、「やっぱりまだまだじゃん!」と確認させられる。何でこんなに時間がかかっているのかはよく分からないが、こんな時代に4世紀にもわたって進められる建築など、世界でも例が無いだろう。

 尖塔にはエレベーターがあるが、別途料金がかかるので階段であがる。人一人がやっと通れるほどのらせん階段が延々と続くが、そこで悲しいものを見る。
 人目につかないのをいいことに、階段が落書きだらけなのである。「ホセ&マリア1990年」とか、「USA」とか・・・。何でこんなとこに書くんだろう?人類が誇るべき建築物と、駅のトイレの壁と区別がつかないのだろうか?あるいは、どこかの岬の岩に、恋人と来た証として名前を彫るような感覚なのだろうか?

 日本語だけは無いだろうと思っていたのだが・・・あった、あったよ。壁を削って白く、大きく、「来ました」と。そしてその下の相合傘には「トモ」と「マサ」という名前が・・・。
 階段を登った疲れがドッと倍増した。おいトモ&マサ、お前らはどういうつもりで彫ったか知らないが、日本人がこれを見るたびに、お前らは日本を代表するバカだと思うだろう。恥を知れ、ハジを。・・・マサって、まさかチリにまだいる「ゴリラのマサ」じゃないだろうなあ。

 階段をあがっても特に展望台など無いのだが、塔と塔をつなぐ橋から工事の様子とバルセロナの街がよく見えた。
 私が老人になったら、またここに来たいと思う。そのころ、どれほど工事は進んでいるだろう?

 サグラダ・ファミリアの後も、市内のガウディ建築を回る。
 「石切り場」の異名をもつカサ・ミラは、ゆがんだ曲線のベランダと屋上の塔が特徴だ。やはり従来の建物の概念を壊した、生物的なデザインである。悪くいえば「おどろおどろしい」というか・・・。しかし、私はサグラダ・ファミリアよりも、グエル邸宅やこのカサ・ミラの方が好きだ。100年も前にこんなCoolなデザインを考えるとは、ガウディ恐るべし。
 考えて見れば、スペインは既製の概念を壊した芸術家が多いなあ。ガウディにしろピカソにしろ、あとダリとかミロとか・・・。一方では、伝統的な文化を重んじられているのに。

 最後のカサ・バトリョはカサ・ミラのすぐ近くで、今までのどの建築よりも小さい。しかし・・・一番カッコいい気がする。建物は東に面しており、なるほど、これは「地球の歩き方」にあるとおり朝に見た方がいいだろう。よし、また今度来よう・・・。

 キャンプ場に戻るが、やはりこのキャンプ場は素晴らしい。何がいいって、インターネットができるのだ。フロントに電話のブースが並んでいるのだが、そこの電話機には日本と同じRJ‐11式の電話線が来ており、外線番号の設定をするだけで簡単にパソコンが繋げられるのだ。
 うーん、キャンプ場で沈没か?テントの中で電気が使いやすいように延長コードも買ったし・・・。


本日の走行距離          55.6キロ(計46893.3キロ)

出費                     70P  塩
   650P  サグラダ・ファミリア入場料
   195P  ビール
   720P  昼食(マクドナルド)
   320P  電話
   1115P  延長コードなど買物
計       3070P(約2050円
宿泊         Camping La Ballena Alegre
インターネット Camping La Ballena Alegre