旅の日記

スペイン横断編(2001年6月25〜28日)

2001年6月25日(月) セゴビア、いいじゃん!(Wonderful Segovia)

 キャンプ場からスペインはもう目と鼻の先。残ったポルトガル通貨を全てガソリンに替え、30キロほど東に走って越境。ゲートはやはり素通りだった。
 スペインに入っても、さすがにここまで北上していると陽射しも弱くなる。道も広くなって走りやすい。スイスイと距離を稼いでセゴビアに到着する。

 セゴビアはマドリッドの北西約100キロに位置する古都で、本来はマドリッドからのエクスカーションに組み込まれるところだ。人から聞いてもガイドブックを読んでも良さそうなところなので、ちょっと寄ってみることにしたのだ。

 節約するならキャンプ場だが、たまった日記を打ちたいので宿を探す。しかし安宿の競争率は高く、ロンリープラネットに載っていた2軒はいずれも満室。インフォメーションセンターも昼休みで閉まっていたので、広場の近くにあった一つ星のオスタル(民宿)にチェックインする。一晩3400ペセタ(約2150円)+税と高いが、ホテル並みに部屋はきれいだった。バイクは表の通りに路上駐車。田舎だし、部屋からも見えるので安心だが、考えてみればこの旅で初めての路駐だ。

 昼食を食べてから観光に出る。
 まずは旧市街の北端の断崖にそびえ立つアルカサル(城)へ。聞いておどろけ!なんと、この城はあのディズニーの白雪姫のお城のモデルなのだ。私はもっと寒い地方の、針葉樹の森に包まれた湖畔のお城をイメージしていたのに、実はスペインだったのね・・・。見るとなるほど、青空に突き出た尖塔がファンタジーしてます。
 しかしこの城、単にディズニーにイメージを提供しただけでなく、由緒正しきかつてのカスティージャ王国の王城。のちにアラゴン王国のフェルナンド王と結婚してスペインを統一したイザベル女王は、ここでカスティージャ王に即位したのだ。
 中に入ると、しかしこれが予想以上にこじんまりとしているというか、コンパクトにまとまっているというか、お城というよりは大邸宅という感じ。眺めの良い断崖の上に立ち、イヤに大きすぎないところが気に入り、西洋の城で初めて住みたいと思ってしまった。というわけでスペイン政府ならびにセゴビア市民のみなさん、いらなくなったらいつでもお呼びください。あ、いくらも払えませんが・・・。

 城のあとは町の反対側、ローマ時代の水道橋へ。
 全長1キロ弱のこの水道橋は、1世紀ごろに建てられてなんと19世紀末まで活躍していたという。斜めから見ると、どこまでもアーチが続いているかのように見えて美しい。よくみると途中にマリア像が付け加えられていた。

 旧市街全体は城壁で包まれ、石畳の細い路地が伸びている。静かで雰囲気もたいへんよろしい。数あるスペインの都市の中でも、かなり気に入ってしまった。うーん、ロンダと同じくらいいいぞ・・・。
 ただし問題が一つ、インターネットができないのだ。5ヵ所あるうち、1ヵ所は電話屋の隅に2台あるだけでいずれも使用中(しかも自分のPCはおろかCDやフロッピーも使えない雰囲気)、1ヵ所は廃業、もう1ヵ所は夜9時ですでに閉店(ここも厳しそう)、もう1ヵ所は故障中、最後の1ヵ所はCDドライブが無かった・・・。これでインターネット環境が良ければ間違いなく延泊なのだが。
 やはりマドリッドに立ち寄るしかないか?実は、バルセロナに行く前に読んでおかねばならないメールがあるのだ。


本日の走行距離         325.7キロ(計45780キロ)

出費                    800E  キャンプ場
   1720E  ガソリン
   2300P  ガソリン
   1000P  昼食(肉の定食)
   175P  ジュース
   350P  城入場料
   1200P 夕食(サンドイッチ、ビール)
計       2520E(約1315円
       5025P(1ドル=約180ペセタ、約3350円
宿泊         Hostal Plaza


2001年6月26日(火) マドリッドに立ち寄る(Madrid for Internet)

 やはりマドリッドに行くことにした。 久々に泊まったホテルなので、もとをとろうとチェックアウトタイムの12時ぎりぎりまでゆっくりして、セコビアを出発。
 マドリッドまでは100キロを切る距離だが、このルートは標高2000mほどの峠を越える山道で、景色が美しいかわりにカーブが激しい。スペイン人は一般の人も運転が激しく、特にカーブへの突っ込みが鋭い。荷物満載とはいえ、800ccのバイクでも油断しているでコーナーとオヤジの運転するセダンにアオられたりする。そんな時は道を譲ればいいのだが、負けじとムキになって飛ばしてしまう性格なので、きっとタイヤが減るのが早いのだろう・・・。

 午後2時にはマドリッドに着いたが、ガイドブックに載っているキャンプ場がみつからない。空港のインフォメーションセンターに寄って市内地図をもらったのだが、それを見てもチンプンカンプン。結局、見つけかるまで2時間以上もウロウロし、ガソリンと時間と体力を浪費してしまった・・・。
 ようやくみつけたキャンプ場は値段の割に設備が質素で、テントサイトはアリの巣だらけだった。ていねいに場所を選んでテントを張ったつもりだったのだが、荷物を広げるとすぐに大量のアリが群がってきた。頭に来たので、近くの巣にガソリンをかけて大量虐殺!!・・・しかし燃えていくアリを見ていると、とてもかわいそうに思えてきた。ああ、何てことをしてしまったのだろう。がっくり。

 昼食にスパゲティ・ペペロンチーノを作って食べ、涼しくなってから地下鉄に乗って1ヵ月前に通っていたインターネット屋に行く。2台のマシンにグローバルIMEをインストールして日本語が使えるようにしていたのだが、全てのマシンのシステムを入れ替えたらしく、おかげでマイクロソフトのサイトからダウンロードし直さなければならなかった。ま、回線の調子がよくて数分で終わったから良かったが。
 無事に見たかったメールを受信し、バルセロナで会うべき人の電話番号を得た。キャンプ場に戻り、さっそく電話でアポを入れる。さて、それはどんな人でしょう?


本日の走行距離         153.8キロ(計45933.8キロ)

出費                   3675P  ホテル
   1800P  バールで飲みながら夕食
   600P  インターネット
計       6075P(約4050円
宿泊         Camping Osuna


2001年6月27日(水) キャンプ場のシブいオヤジ(Cool owner of a camping)

 純粋なる移動日。マドリッドのアリだらけのキャンプ場を後にし、目の前の国道N11で一路東へ向かう。
 意外と涼しくて疲れない。250キロ走ったところにあるサラゴサを通過し、さらに東へ。向かっているのはスペインのほぼ東端に位置するバルセロナだが、そこで人と会う約束は29日。マドリッドから1日で行けないこともないのだが、途中で寄りたいところもあるし、急いでも仕方がない。

 今日はジェイダという町で泊まろうと決め、国道にあった標識に従ってキャンプ場に入ると、実はそこはジェイダの手前30キロのフラガという町だった。ま、せっかく入ったのだからいいか。スペインの夏の夕方5時はまだまだ陽が高いが、疲れない日があってもいい。
 しかし、この間違いが正解だった。キャンプ場のオヤジがめちゃくちゃシブくていい人だったのだ。「ようこそフラガへ」とシブい声で迎えてくれ、キャンプ場の説明をしたあと、後でフロントにビールを飲みに来るようつけ加えた。

 夜、言われたとおりに行くと、ちょうどオヤジが家族と遅い夕食をとるところだった。ヒッピーあがりのような奥さんと、ちょっと太目の長男ハイメ(9歳)、そして天使のようにかわいい長女エレナ(7歳)が座るテーブルにご一緒させてもらう。
 オヤジはスペイン語しか話せないが、ていねいに話をしてくれ、いろんなことが話題にのぼった。ペルーのフジモリ大統領のことから始まり、日本で先日起きた小学生無差別刺殺事件、日本人とスペイン人の労働意識の違い、そして子どもの教育・・・。こういうと失礼だが、本当にあなたはキャンプ場のオヤジなの?と思うくらい、彼は世界や日本のことをよく知っていた。
 そして、私と話をした内容をちゃんと子どもたちに分かりやすく説明し、理解できるよう努める。オヤジの教育がいいのだろう、2人の子どもたちは礼儀正しく純粋で、まっすぐに育っていた。エレナは日本人のボーイフレンドができたと喜んでいたが、そんなに可愛いと本気にするぞ・・・。漢字で名前を書いてくれというので、ハイメは「俳目」、エレナは「絵礼名」と書いてあげた。

 すっかり話しこみ、テントに戻ったのは12時過ぎ。しかし、その後も会話の余韻を楽しみながら、一人でペットボトルに入れた残り物のワインを飲んだ。来る予定のなかった何もない田舎町で、会うべき人にあった。そんな偶然を感じた1日だった。


本日の走行距離         425.6キロ(計46359.4キロ)

出費                   2050P  マドリッドのキャンプ場
   350P  菓子パン
   2700P  ガソリン
   785P  夕食の買物
   1550P  フラガのキャンプ場
計       7435P(約4960円
宿泊         Camping Fraga


2001年6月28日(木) 世界一大きな免税店(Andorra, the biggest duty free store)

 ちょっと遠回りになるが、先にアンドラ公国に行っておくことにした。
 アンドラ公国というのは、フランスとスペインを隔てるピレネー山脈に抱かれた、人口6万5千人の小国である。しかしれっきとした国連加盟の独立国家、車のステッカーも「AND」だし、インターネットのアドレスも「.ad」で終わっている。流通通貨はほとんどスペインのペセタで、あとわずかにフランスのフランだけど・・・。

 夏はハイキング、冬はスキーで楽しめるが、この国が観光客を引き寄せているのは全ての店が免税だからである。首都(というより首町だが)のアンドラ・ラ・ベリャには家電製品やブランド品の店が並び、町全体が巨大なデューティーフリーと化しているのだ。

 キャンプ場のシブいオヤジに別れを告げ、山脈にはいつくばる国道を200キロ走ると、アンドラとの国境に到着。フリーパスでゲートをくぐると、そこはもう別の国。数キロでアンドラ・ラ・ベリャにさしかかる。
 町は美しいピレネーの谷に沿って広がっており、中世風の石の建物や山小屋風の木の建物もあって、スイスを思わせる。「ロンリープラネット」には「麺類のレストランが無いのをのぞけば、香港と似ている」と書いてあったが、おいおい、そりゃないだろう・・・。たしかにメインストリートには免税店が並ぶが、ゴテゴテしているほどではない。ちょっと賑やかな別荘地という程度だ。

 町にはバイク屋、バイク用品屋も多い。その数、上野のバイク街を上回るほどである。ちょうどシーズンということもあって、町は近隣国から来たライダーだらけ。負けじとキャンプ場にテントを張り、さっそくショッピング開始。
 ・・・しかし、そんなに安くない。消費税がかからないから、その分が安いくらいか。フロントタイヤがそろそろ減って来たので、安かったら交換しようと思っていたのだが、税別の金額はスペインと同じ。だったら、もっと持たせてイタリアあたりで交換しよう。結局、キャンプ用の空気枕とエンジンオイルを買うにとどめる。
 家電製品も秋葉原の方が断然安い。安いのはやはりタバコと酒か。久しぶりにスコッチウイスキーの小ビンを買ってみる。

  夕方いっぱいまでウインドーショッピングを楽しみ、あとはキャンプ場でオイル交換。キャンプ場のオヤジはがっくりするほど愛想が悪いが、アンドラはとても気に入った。ライダーのみなさん、アンドラは部品も用品も揃うし、ガソリンも近隣国より安いのでぜひ立ち寄りましょう!


本日の走行距離         195.1キロ(計46554.5キロ)

出費                   1500P  ガソリン
   2250P  オイル
   1140P  ウイスキー、食材
   295P  空気枕
計       5185P(約3460円
宿泊         Camping Riberaygua