アルヘシラスからモロッコ側のセウタまでは1日に16便も高速フェリーが出ており、昨日買った切符にも便の指定は無い。好きなときに港に行って、フェリーに乗ればいいのだ。
ユースで朝食を食べ、チェックアウトを済ませたら港に着くのが10時前になった。10時15分発の便があったので、その船に乗りこむ。乗務員は何もしてくれないので、自分で船の壁にかけてあったタイダウンベルトを使ってバイクを床に固定した。
名前の通り、フェリーはびっくりするほど速い。時速にして4、50キロは出てるんじゃないか?あっと言う間にジブラルタル海峡を渡って対岸のアフリカ大陸へ到着。
アフリカ!初めて足を踏み入れる大陸である。 しかし、そこはまだスペイン。スペインのなかにイギリス領があるように、ジブラルタル海峡の向こう側、モロッコにもスペイン領のセウタという都市がある。モロッコとの国境は町外れにあり、セウタには特に用事も無いので素通りしてそこを目指す。
スペイン側の出国手続きは一切無し。素通りである。あ、パスポートにも出国のスタンプもらわなかった。ま、問題無いでしょ。
さて、モロッコ側へ・・・あははは、いるわいるわ、怪しいのが!中米の国境を思い出すぜ!さあこい、闇両替屋に自称ガイド、まとめて相手にしてやるぜ!
・・・と意気込んだのだが、悪そうに見えてけっこう皆さんフツーの人々。ポリスもしっかりしているし、怪しそうなのが国境に近づいてくるとシッシッと追い出してくれる。モロッコの「自称ガイド」は世界でも有数のうざったさだと聞いていたので覚悟していたが、この国境は問題ないようだ。
親切なお巡りさんの案内で、パスポートとバイク通関の両方の手続きを行う。バイクを警察の前に停めさせてくれたので見張りをつける必要もなし。意外だったのは荷物のチェックが無かったことと、バイク通関でカルネを切らなかったこと。バイクの登録書とグリーンカードの提示で簡単にペルミソを発行してくれた。おかげで30分ほどで入国手続きを全て終了。
さて、これで本当の初アフリカ、そして初イスラム国!意気揚揚とモロッコ側を走り出す。
今日の目的地はシャウエン(Chaouen)。セウタから100キロほど南の山間の静かな町で、大都市のように「自称ガイド」もいないとのこと。モロッコで初めての夜を過ごすのにちょうど良さそうだ。
サマータイム中のスペインとモロッコには2時間の時差があり、モロッコ時刻はまだ午前10時過ぎ。このまま飛ばして一大観光都市フェズまで行ってしまおうかとも思ったが、南下する道はやがてリフ山脈にさしかかり、片側1車線の山道となった。結局、シャウエンに着くころにはけっこう疲れて今夜の宿泊を決定。マドリッドで一緒だったハーレー乗りの武田さんが教えてくれた宿にチェックインする。
そうそう、武田さんはモロッコに行く予定は全くなかったのだが、アルヘシラスのフェリー乗り場を見にいったら「勢いで」キップを買ってしまったそうだ。彼はもうそろそろスペインに戻るころ、モロッコでもすれ違いだ。
シャウエンの町は話に聞いていた通り穏やかだった。たまに「ガイドをさせてくれ」とか「ハシシ(=ガンジャ=マリファナ=大麻)買わないか」とか言って来る輩はいるが、そんなにしつこくない。
モロッコの町には大体「メディナ」という城壁に囲まれた旧市街があり、その中は細い路地が入り組んで迷路のようになっている。大都市のメディナではそれこそガイドがいないと迷子になりかねないそうだが、シャウエンのメディナは小規模で初心者がうろつくにはもってこい。それでも同じ所をぐるぐる回ったり、意外なところに出てしまったりしたけど。
メディナの中の広場で、クリスというニューヨーカーに出会った。この旅で3人目の「クリス」はアマチュアカメラマン。本職は英語教師だが、たまに休みをとっては海外に撮影旅行に出て作品をためている。
「近々個展を開きたいんだ」と言いながら、彼はかたわらに置いてある一眼レフのシャッターを押した。モロッコ人も写真を撮られるのを嫌がる(あるいは金を要求する)ので、ファインダーは覗かず、カメラだけを往来に向けておいて被写体になりそうな人が通ったらシャッターを押すのだそうだ。良い作品が撮れる確立は4本のフィルムを使って一枚ぐらいだが、こうでもしないとモロッコ人、特に絵になるような味のある老人やスレていない田舎の子供はなかなか撮れないそうだ。
昼食をクリスとレストランで食べた。旅行者向けの店だったが、ちゃんとしたタジン(モロッコの煮込み料理)で25ディラハム(約250円)。やはり物価が安くて安心する。店はイスラム調の内装だがBGMがなぜかカントリーウエスタンで、広場のスピーカーから聞こえるアザーン(イスラム教の1日5回の祈りの呼びかけ)と入り混じってミョーな雰囲気。隣の席では地元のおっさんがハシシをプカプカ吸って、臭いが風にのってプーン。砂糖たっぷりのミントティーにはハチがたかり、ブーン。フーン・・・これがモロッコか。(勝手に納得)
ホテルは50ディラハムで広いダブルの部屋。夕食も7ディラハムで具たっぷりのサンドイッチ。うおお、ヨーロッパに戻る前に外食しまくるぜ!
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