旅の日記

スペイン・アルヘシラス編(2001年6月4〜5日)

2001年6月4日(月) アルヘシラスに移動(Moving to Algeciras)

 今日でロンダともお別れ。快適だったキャンプ場を後にし、最後にインターネットカフェに寄ってHPのアップロードとメール送受信を行う。これがヨーロッパでの最後のネットだろう。

 ロンダから地中海に面したアルヘシラスまでは、ずっとシエラ・ネバダ山脈を下る事になる。まるでWRCラリーのスペシャルステージのような断崖のワインディングだ。チリでイギリス人ライダー、クリスに売ってもらった中古のリアタイヤ(ミシュランT66X)が、ここに来てよく滑るようになった。山はまだあるのだが、タイトコーナーの立ちあがりでアクセルをラフに開けるとスッと流れる。あまりにも自然に滑るので、最初はこの変な挙動が本当にドリフトなのかどうか疑ったほどだ。まあ、まだ走れる。モロッコから戻ったら換えよう。

 予約の入れてあったユースホステルは、アルヘシラスからさらに10キロほども南下した郊外にあった。山の斜面にある、こじゃれたホテルのような施設。人も少なく、部屋も個室できれい。南スペインのユースは高いが、これなら納得できる。

 一息入れてアルヘシラスの街に出る。
 言われていた通り、モロッコへの玄関口となるこの街は、他のアンダルシア地方の都市とは雰囲気がだいぶ違い、アヤシイ感じがする。アメリカに面したメキシコのティファナがそうであるように、またモロッコ側のタンジェがそうであると聞くように、貧富の差のある2国間の国境の街には、貧しい側が富める側のスキをうかがう特有のアヤシサがあるものだ。
 ちょっと早いかもしれないとも思ったが、モロッコに備えてオイル交換をする。しかし意外なほどオイルは汚れていた。この暑さで酷使したせいかもしれない。

 夕食は大きなスーパーの食堂で食べた。考えてみればスペインに来てから、ファストフードや酒の肴でないものを外食するのはこれが初めて。モロッコは物価が安いはずなので、食事に期待だ。


本日の走行距離        157.8キロ(計41595キロ)

出費                  4200P   キャンプ場3泊
   600P  昼食(ホットドッグ&ビール)
   425P  インターネット
   4750P  ユース2泊前払い
   2300P  オイル
   500P  夕食(魚フライ定食)
   490P  ワインなど買物
計       13265P(約8840円
宿泊         International YH Algeciras
インターネット    Zona Guerra


2001年6月5日(火) ちょっとイギリスまで(Seeing Gibraltar)

 モロッコに行く前に、やっぱりイギリスに行く事にした。
 どんな方向と距離感覚やねん!とお思いかもしれないが、アルヘシラスから約20キロのところに大英帝国があるのである。英領ジブラルタル、れっきとしたイギリスじゃないの!え?インチキだって?ま、いいじゃないの!

 ジブラルタルは長さ約5キロ、幅1キロの半島で、その領土のほとんどが巨大な岩山に占められている。The Rockといわれるその岩を取り囲むように街があり、住民の多くはユダヤ人とジェノバ人。スペイン本土からの併合要求をガンとして拒み続ける彼らだが、英国に頼っているのは防衛面のみだという。つまり経済を含むほかの面では、完全に自立しているのだそうだ。

 ユースから約30キロ走って、半島の付根にある国境に到着。パスポートの提示もバイクの書類手続きも一切無し。素通りである。
 国境を抜けると、そこはもうイギリス。あのとんがったヘルメットを被ったお巡りさんもいるし、ロリーポップというあの変な街灯もある。道路標識も英語、ただし右側通行だけが本国と違うところだ。

 国境から大通りを進むと、信号に出た。赤なので停まるが、交差している道路がミョーに広い。ふと道路脇の標識を見ると「前方滑走路アリ。注意」・・・・ナヌ?と思っていると、ギャーーンというジェット音を轟かせて、RAF(英国空軍)の輸送機が目の前を通りすぎて行った。
 なんちゅー交差点だ!一般の道路が空港の滑走路を横切っているのである。考えて見れば平地のほとんどない領土、滑走路をつくるなら半島の付根を横切るようにするしかない。まさに苦肉の策、こんな交差点は世界でも他に無いんじゃないか?

 街中に入る。空も今日に限って曇り、イギリスの雰囲気を高める。
 ヘルメットのシールドを開けていると、何かがほっぺたに当たった。虫か?と思ってバックミラーをみると、カモメのフン・・・。ロンドンのトラファルガー広場で、1度に脳天と足首の2ヵ所にハトのフン爆撃が命中した少年時代のあの暗い過去が甦る。
 どうも英国連邦は私に冷たい・・・とチリ紙でふきふきしていると、街中がフンの跡だらけなのに気付いた。それもそのはず、領土の真ん中にデーンと構えるあの岩山は、かっこうの野鳥の住処ではないか!街の上はカモメの大群が巡回し、羽休めができそうな所には白いペンキをひっくり返したようなフンの跡・・・。なるほど、駐車している車もカバーをかけているのが多い。

 ロンリープラネットによると本国よろしく物価が高いそうなので、長居する気は毛頭ない。何から見ていいのかよくわからんが、道をゆくと「100トン大砲」ってのがあったので見てみる。
 19世紀に配備された巨大な大砲は1トン近い砲弾を10キロは飛ばせ、ジブラルタル海峡にニラミを効かせていたそうである。ただし砲弾の装填に蒸気を使うため、「敵発見!」から湯を沸かして「発射準備完了!」まで3時間かかったそうである・・・まあ当時の船は帆船が主だったので、それでも良かったそうだ。
 結局この大砲は実戦で1度も使われることなく御役目を終了、今は観光資源として一役かっている。

 その後はやっぱり岩山に登りたくなった。頂上までのケーブルカー片道1100ペセタは高いが、我慢しよう。そうそう、ジブラルタルの通貨はやっぱりポンドですが、スペインのペセタのそのまま使えます。(ただし換算レートは悪い)

 頂上からはジブラルタルの街がよく見渡せた。規模はちょっとした市、ってところ。観光産業がメインだと思っていたが、立派な港があって貨物船が多数停泊している。貿易都市としても活躍してるのだろう。
 歩きながら下るが、そこら中にカモメと並んで岩山の住民となっているサルがいた。「エサを与えないでください」と看板はあるのだが、やっぱりエサをあげているバカがいた。おかげでちょっとでもエサを持ってそうなそぶりを見せると、向こうから飛びかかってくる勢いである。

 バイクを置いたケーブルカーの乗り場までは、たっぷり一時間の散歩。おかげで領土の多くを歩いて見られた。もうジブラルタルはお腹いっぱい、それと反比例に本当のお腹は減ってきたので、もう帰る事にした。ガソリンだけはスペインよりリッター20ペセタ(約13円)は安いので、満タンにしておく。
 ふたたび滑走路を横切って国境へ。スペイン入国のチェックはジブラルタル入国よりはやや厳しいみたいで、自動車は長蛇の列になっていた。ただしバイクはその横を涼しい顔でスリ抜け、チェックもなし。

 アルヘシラスの街に寄って明日のモロッコ行きのフェリーのキップとロードマップを買った。これで明日はいよいよアフリカ大陸だ!ちょっと緊張!


本日の走行距離         85.8キロ(計41680.8キロ)

出費                  1100P   ケーブルカー
   2150P  ガソリン
   5945P  モロッコ行きフェリー
   950P  モロッコのロードマップ
   500P  昼食(魚フライ定食)
   435P  切手
   330P  夕食の買物
計       11410P(約7610円
宿泊         International YH Algeciras