旅の日記

スペイン・マラガ、ロンダ編(2001年5月30日〜6月3日)

2001年5月30日(水) 地中海に出る(The Mediterranean sea)

 ユースをチェックアウトして、グラナダから南下する。目指すは地中海に面した港町マラガだ。
 マラガ!スペインに来てから、何度この名前を聞いただろうか。「私は若いころ、マラガの中華料理屋で働いていた」・・・マドリッドで会った中年カップルの男性から名前を聞いたのが初めてだった。しかしその後、「実は私もマラガでスペイン語の学校に通っていた」「俺はマラガで恋に落ちた」・・・今までメールのやりとりをしていた人の中にも、続々とマラガのエピソードを持っている人たちが現れたのだ。
 なんか知らんが、とにかく期待だけは脹らんできた。果たしてマラガとは、どんなとこぞ?

 グラナダからアウトピスタを飛ばすと、すぐに真っ青な地中海に出た。おお、眩しや。この旅、4つ目の海であります。
 地中海を左手に見ながらさらに走ると、午後2時ごろ、マラガ市内に入った。・・・思ったよりも大都会でビックリ。そして、けっこうツーリスティック。それもそのはず、ここはヨーロッパ人に人気のコスタ・デル・ソル(「太陽の海岸」、スペイン南部のビーチリゾートエリア)の玄関口なのだ。
 「漁師町でのんびりできる」とか聞いたから、「老人と海」みたいに深いしわの刻まれた漁師が海を眺めていて、その上でカモメがギャーギャー鳴いているのが唯一の音・・・とか勝手に想像していた。

 ダメもとでユースに行って見るが、やはり満室。バイクの置けそうな安宿も無し、インフォメーションセンターで紹介されたキャンプ場はびっくりするような高さだった。(一番人気のビーチにあった)
 そこで、来る途中にキャンプ場があったのを思い出して引き返す。すると、なんとマラガから40キロも東に戻ったところだった。ま、静かなところなのでいいか。ちょっとハエが多いけど・・・。


本日の走行距離        233.5キロ(計40941.7キロ)

出費                  8775P   グラナダのユース3泊
   2900P  ガソリン
   695P  昼食(ボカディージョ&ビール)
   510P  夕食の買物
計       12880P(約8590円
宿泊         Camping El Pino


2001年5月31日(木) マラガ観光(Seeing Malaga)

 今日はテントに荷物を置いたまま、マラガ観光に出かけた。
 40キロの道のりを再び走って適当なところにバイクを停めると、まずは街を見下ろすヒビラルファロ城に登る。イスラム教徒が建てた砦と連結しているのだが、厳しい陽射しを浴びながら延々と斜面を登るのは辛かった。バイクで登れば良かった・・・。
 城壁からはマラガの街と港がよく見渡せた。港には豪華客船が何隻も停泊中で、南スペインの人気ぶりがうかがえる。城にはちょっとした博物館もあって、かつてこの城を守っていたスペイン兵の制服なんか置いてあるのだが、おいおい、こんな服着ていたのかよ・・・ばっちり長袖&ブーツで、革手袋までしているよ・・・などと汗をふきふき見るのであった。

 マラガはピカソの生地でもある。次に街まで下ってピカソの生家へ行って見るが、シエスタで閉まっていた。ま、いいか。ただし街にあったスプレーの落書きも「ゲルニカ」を描いたりしていて、ピカソの街の雰囲気をちょっと感じた。
 ピカソの生家の並びにインターネットカフェを発見、しかも看板に「ノートブック歓迎」と書いてある。店員に確認を取ると、やはりLAN接続OKとのこと。よし、明日マラガを通るときにやらせてもらおう。

 キャンプ場への帰り道、巨大なスーパーがアウトピスタ沿いにあったので行って見る。何でも揃っているが、こういうのを見ていると要らない物までも欲しくなる。夕食のおかずのキャビア(!)など、最低限のものだけを買った。
 さて、明日はどうしようかな。マラガはいい所だけど、ちょっとのんびりする雰囲気ではないし、このキャンプ場もハエがいなくて、もっと街に近ければいいのに。

本日の走行距離        107.8キロ(計41049.5キロ)

出費                   500P   昼食(ボカディージョ&ビール)
   425P  夕食の買物
計       925P(約620円
宿泊         Camping El Pino


2001年6月1日(金) ロンダ!(A pretty town called Ronda)

 結局、やっぱり移動することにした。
 そして次の目的地とは、ロンダというシエラ・ネバダ山脈に抱かれた町。そんなに有名でなく、地球の歩き方(ヨーロッパ編)には載っていないが、ロンリープラネットには「プリティでゆっくりできる」と書いてある。そしてスペイン通のさるメル友も、「行ったらどんな様子か教えてください」とのこと。むむむ、また期待してしまうぞ。

 まずはマラガを通るので、昨日みつけたインターネットカフェへ。無事LAN接続がうまくいき、ヨーロッパ初のマイ・パソコンでのネット。サーバーにたまっていた100通近いメールをダウンロードする。(ホットメール経由で見てはいたけど)

 マラガの後は地中海に別れを告げて、海岸の北に走っているシエラ・ネバダ山脈に突入する。アウトピスタ(高速)よりこういう片側1車線の田舎道の方が風情があるんだよな・・・と思っていたが、走り始めて30分で疲れてきた。山脈を登る道は思ったよりも険しく、センターラインもないワインディングが続く。舗装状態もよくなく、スピードが出せない上に刺すような日光が容赦なく照り付ける。
 途中、風のふきつける展望台があったので一息つく。そこから見たシエラ・ネバダ山脈は白い岩がゴロゴロしていて、まるで四国のカルスト台地みたいだった。

 マラガから100キロくらいしか離れていないのに、3時間はかかったと思う。喉からからでロンダに到着。町外れにキャンプ場があったので行って見るが、プール、レストラン、バーつきでいかにも高級そう。しかし値段を聞いて見ると、至って平均的。気に入ったのでここに泊まることにする。

 木陰が少ないのが玉にキズだが、それでもコンパスを駆使し、朝でも夕方でも陽のあたりにくい場所を選んだ。そしてテントを張ると、まずはとりあえずプールにジャボン。このプールは今日からオープンしたそうで、ちょっと風が涼しいものの、とっても気持ちがいい。西日の照り付けるワインディングで熱を持った体を冷やす。

 すっかり夕方になっていたが、ふたたびバイクにまたがって町に行って見る。キャンプ場から町の中心までは約2キロほど離れている。
 ロンダは、川が山脈の岩盤を削り取ってつくった渓谷の上の町。アンダルシアの各都市がそうであるように、かつてはイスラム教徒の支配下にあった。キリスト教徒はこの町を奪回した後、再び敵の手に落ちることのないよう騎士育成のための組織をつくり、そこでは牛との闘いが訓練として導入されたという。やがてその訓練は馬から降りて行われるようになり、そして一つの競技となった。そう、ロンダは近代闘牛の発祥の地とされているのだ。

 キリスト教徒はまた、深い渓谷の上に見事な橋をかけた。町を貫く石畳みの大通りを通ると、自然にこの橋を渡る事になる。橋から下をのぞくと息をのむ高さ。町中を歩いているとわからないが、この町は絶壁の上にあるのだ。
 ロンプラに書いてあった通り、とってもプリティな町である。観光客は多いものの、こじんまりとしていてゆっくりできそう。キャンプ場もいいし、インターネットカフェもけっこうある。むむむ!太鼓判を押して勧めよう!いいぞ、ロンダは!

本日の走行距離        171.8キロ(計41221.3キロ)

出費                  3050P   キャンプ場2泊分
   250P  インターネット
   150P  ビール
   975P  夕食の買物
   600P  昼食(ボカディージョ&サングリア)
計       5025P(約3350円
宿泊         Camping El Sur
インターネット    Internet Meeting Space


2001年6月2日(土) 闘牛のふるさと(The birth place of Bull fighting)

 ちゃんと木陰を選んでテントを張ったので、サウナ状態の暑さで目が覚める事もなく、たっぷりと睡眠ととって小鳥のさえずりを聞きながら起きる。ウーン、贅沢。そしてハエもいない。(巨大なアリがたまにいて恐いけど)

 ゆっくりと朝食を作って食べた後、ロンダの町を観光に。
 まずはイスラム時代の風呂の跡や外壁を見て回り、そして近代闘牛史にとって重要な闘牛場を見に行く。入場料600ペセタは高いが、こういうのをケチっても仕方ない。
 直径66mのこの闘牛場は1785年、ペドロ・ロメロという闘牛士の一戦(本当は何ていうんだろう?試合?競技?)でこけら落としを迎えた。このペドロ・ロメロは闘牛史に名を轟かす人で、闘牛を騎士道の一訓練から芸術にまで高めた人らしい。何でも現役時代に5600頭もの牛を倒し、かすりキズ一つ負わなかったという。ヒンズー教的にいうと、何てバチあたりなんでしょ!
 この闘牛場は20世紀にもオルドニエス親子というスーパースターを生み、かのヘミングウェイもこの地を訪れて彼らをモデルに作品を書いたらしい。そういえば、昨日の橋がよく見える小道も「ヘミングウェイ通り」って名前がついてたっけ。

 午後になって陽射しにターボが効いてきたので、キャンプ場に戻って昼食を取り、プールで涼む。そしてキャンプ場のバーにコンセントがあったので、ビールを飲みながら日記を打たせてもらう。本当にこのキャンプ場、至れり尽せりだぜ。

 夕方になって、夕陽に染まる町を撮りに出かけた。本当は断崖の下から見上げるように写真を撮りたいのだけど、そこへの下り方がよくわからない。絵葉書なんかにはよくその構図があるんだけど・・・。結局、キャンプ場の近くの古い教会から町がよく見渡せたので、そこから撮った。それにしても最近、横長の写真が多いなあ。


本日の走行距離         34.9キロ(計41256.2キロ)

出費                   480P   切手
   600P  闘牛場
   250P  ビール
   320P  夕食の買物(イカ炊き込みご飯!)
計       1650P(約1100円
宿泊         Camping El Sur


2001年6月3日(日) ピレタの洞窟(The cave of Pileta)

 今日はロンダでの最後の観光として、「ピレタの洞窟」へ行って見る事にした。
 その洞窟は町から20キロほどセビージャ方面に向かったところにある・・・とインフォメーションセンターでもらったガイドに書いてあったので、標識がでるものと思ってガンガン行ったら、とんでもなく行きすぎてしまった。ガソリンスタンドで聞いたら、あるところで曲がらねばならないという。標識ないじゃん・・・わかんねーよ。おかげで数十キロは無駄に走った。気持ちいいライディングだったけど。
 到着したのは12時半。シエスタの前は午後1時までやっているはずなので、間に合ったと思ったら、見学は人数がまとまらないとダメだそうで、ついさっき最後のツアーが出たとのこと。天使の微笑みでお願いするが、険しいおっちゃんの表情は変わらず。あきらめて夕方に出なおす事にする。

 キャンプ場のバーでパソコンに向かって時間をつぶし、夕方になったので再びあの洞窟へ。今度は入口の前で30分ほど待った後、数組の家族とともに見学する権利をゲット。これでようやく見られるぜ。

 この洞窟、内部は一切撮影禁止。よって私のつたない文章でのみ、表現せねばならない。
  ・・・まず、冷たい風の吹いてくる直径1メートルほどの入口からかかんで入ると、受付があって険しい表情のおっちゃんが立っている。電気は来ておらず、ランタンの灯りに照らされて壁の注意書きが見える。 「この洞窟はアンダルシア地方でも最も重要な文化財です。観光用の洞窟ではありません」
  ・・・そして目が慣れてくると、おっちゃんの頭が思いっきりヅラであることがわかる。おっと!余計なこと書いちまったぜ。ま、早い話がこの洞窟では観光客にこびません、ルールを守って見学しなさいということ。その姿勢がおっちゃんの表情に表れているのか、それとも1日中暗い洞窟にいるからそうなってしまったのかは、定かではない。

 話が大分それた。本題に戻そう。
 この洞窟は鍾乳洞なのだが、ところどころに5千年〜2万5千年前に描かれたとされる古代の壁画が残っている。確かに重要な文化財なのだ。
 見学は10〜20名ほどのグループで行われ、数人にひとつランタンが渡される。そしておっちゃんのガイドのもと、1時間ほどかけて暗い洞窟内を見て回るのだ。内部の気温は15度に保たれ、ボンネットの上で目玉焼きができそうな暑さの外から入ると、たいへん心地よい。ただし湿度も常に100パーセントだそうで、下がヌルヌルして滑りやすい。

 スペイン語でぶっきらぼうに説明するおっちゃんについてゾロゾロ行くと、あのつらら状の岩が垂れ下がったところに出た。たまにコウモリがいたり、変な形の岩があったりして、「あれは何に似ている」とかおっちゃんが言ってくれる。
 そしてしばらく行くと、期待の壁画が!馬や魚の絵、そして象形文字のようなものが、まるで小学生の落書きのように描かれている。黒い線は墨で描かれたのか、はっきりと残っているが、赤い色は淡い感じだ。・・・むむむ、これが何千年も何万年も前に描かれたのか。その間、洞窟の外では壮絶な歴史が繰り返され・・・ってあれ?おっちゃん、もう行くの?他の人ももういいの?みなさん、壁画には意外とドライな様子で。俺だけ?こんなに感動してるの。

 おっちゃんは再び「あの岩は何に似ている」とかブツブツ言いながら引き返し、はやツアーは終了。ま、けっこう感動したからいいか。
 さて、ここで疑問が湧いた。私の記憶が正しければ、バルセロナオリンピックのマスコットには、キツネのような犬のようなキャラクターが使われていたと思うのだが、あれは確か、古代の壁画をもとにデザインされたはずだ。この洞窟にそれに似ている壁画あったのだが、あのキャラクターはそれが元なのだろうか?
 疑問をおっちゃんにぶつけたが、「・・・は?」って感じで険しい表情のまま、取りつく島もない。誰か教えて!本当はどうなの?


本日の走行距離          181キロ(計41437.2キロ)

出費                  3000P   ガソリン
   900P  洞窟入場料
   400P  ビール
   200P  インターネット
計       4500P(約3000円
宿泊         Camping El Sur
インターネット    Planet Adventure