朝、とりあえずアルハンブラ宮殿のチケット売り場に行くと、今日の午後の分のチケットが買えた。明日じゃないと入れないと思っていたので、ちょっと嬉しい。
　アルハンブラ宮殿は城壁部分と離宮、そしてメインの宮殿と大きく三つにわかれるのだが、入場制限があるのは宮殿の部分。私の買ったチケットは午後2時から8時まで城壁部分と離宮が見られ、そして宮殿には午後4時半から5時の間に入らなくてはならない。この30分を逃すと、もう入れなくなるのだ。

　午後3時ごろまでまた昨日の丘に登ったり、ショッピングセンターに行ったりして時間をつぶした。コルト・イングレスという大きなデパートのスーパーでは、ビタミン錠剤を買った。物価の高い国で外食をすると、どうしてもファストフードに偏ってしまうからだ。

　そしていよいよアルハンブラ宮殿に入場。
　まずは離宮部分へ。ここはスルタンと呼ばれるイスラムの王が夏の間を過ごした別宅である。細長い中庭は噴水と色とりどりの花、そしてきれいに刈られた垣根で構成されており、まさにイスラムのスルタンかアラブの石油王の住まいって感じ。いいなあスルタン、バブリーな生活じゃん。美女とよろしくやっていたんだろうなあ。
　次に城壁の塔に登る。修学旅行の小学生が一緒でちょっとうるさいが、グラナダの街とシエラ・ネバダ山脈が一望できた。ここから見張りが、キリスト教徒が攻めてこないかと見張っていたのだろう。

　そして午後4時半になったので、いよいよ宮殿内部に入る。
　そしたら、入った瞬間からビックリ！壁や天井のいたるところに細かいアラベスク紋様の彫刻が施されているのだ。すげえ手の込みようで、たいへん美しい。モロッコを前に、早くもイスラム文化にウットリなのである。この宮殿が建てられたのは13世紀、まさにイスラム正統文化の絶頂期なのだそうだ。
　興味深いのは、後にこの地を支配したスペイン人は、手を加えたり内部に教会を建てたりはしたものの、宮殿を破壊しなかったことだ。南米のインカの宮殿などは、ほとんど破壊されているのに。イスラム文化は理解に値するということなのだろうか？

　そうこうしているうちに、ライオンの中庭というところに出た。アルハンブラ宮殿広しといえど、よく絵葉書になる有名なところである。中央には噴水があり、それを支えているのは12頭の獅子。周囲には、やはり細かい装飾が施された柱が並んでいる。息を飲む美しさ、私は将来家を建てるならインカの石組み風がいいと思っていたが、イスラム風でもいいなあ！（どこにそんなお金があるのよ）
　複雑な宮殿をお年寄りの団体に揉まれながら見てまわり、そして庭園を抜けるともとの城壁の前へ。なるほど、宮殿内部は狭いからこりゃ入場制限が必要だ。

　結局、宮殿全体を見るのには3時間ほどかかった。ゆっくり見て回ろうと思うなら、本当に1日がかりになるだろう。
　1492年、グラナダの最後のスルタンはキリスト教徒に囲まれ、涙ながらにこの宮殿を開放したという。そりゃ悲しいだろうなあ、これほどの宮殿だもの。マイホームを手放すといっても、規模が違う。そしてそれは、いわゆるレコンキスタ（キリスト教徒の国土回復運動）の終了した瞬間でもあったのだ。