旅の日記

スペイン・マドリッド編その2(2001年5月17〜21日)

2001年5月17日(木) 逆ギレする3人(Insurance wanted)

 朝早く、昨日行ったハーレーのマドリッド支店に行って保険会社の受付ダイヤルに電話してもらう。しかし保険会社はスペインのナンバープレートでなければ受けつけないと、ニベもない。Oficina de trafico(日本でいうと陸運局)に行って聞け、というので地下鉄に乗って行って見るが、さんざんたらい回しにされたあげく、結局どうすればいいか誰も分からない。「保険に入れなければ、走れないじゃないか」、何度言っただろうか、しかしその度に帰ってくる答えは「さあねえ」・・・。
 こうなればもう、バイクを通関するときに税関で聞いてみるか、かつてスペインでグリーンカードを取得した人にメールで聞くか、最後は大使館か?(あるいはほぼ間違い無く加入できるであろう、自動車クラブの住所がわかっている隣国ポルトガルのリスボンまで無保険で走るか)

 いずれにしても、今日はこれ以上打つ手はなし。あきらめて宿の方面に帰って近くの大きな書店に入ると、ずっと探していたロンリープラネット(オーストラリアの会社が作っている情報満載の頼れるガイド。ただし分厚くて全部英語だけど)のヨーロッパ版が何冊もあった。武田さんと喜び、ヨーロッパ全土のロードマップとともに一冊ずつ買う。
 宿に帰ってロンリープラネットをパラパラめくると、西欧、北欧、東欧、そしてモロッコまで網羅しており、そしてなんと、スペインの自動車クラブの連絡先まで載っていた!ここに聞けば保険のことも前進間違いなしだろう。やっぱり買って良かった。

 そして夜、いつもの通り3人で夕食を作り、部屋で食べていたら神経質な宿の主人に見つかった。「ここはレストランじゃないんだ。くさいから窓を開けろ!」・・・どうやら、ニオイで嗅ぎつけたらしい。チッ、細けえオヤジだぜ、まったく、ちくしょう、べらぼうめ、シャワーはちょっとでも浴槽から外に水をこぼすと怒るし、部屋の合鍵は廊下にそのまま転がしておいて鍵の意味無いし・・・うんこたれ。主人が去ったあと、さんざん悪態をつく3人だったが、結局は禁止されたことをしているのは我々なので、いわゆる逆ギレなのである。南米の安宿は、ほぼ何でもありだったから・・・。くそー、それにしてムカつくぜ。宿を換えようかな?


本日の走行距離             0キロ(計39770キロ)

出費                   750P   昼食(パエリア)
   5500P  ロンリープラネット、ロードマップ
   200P  インターネット
   350P  夕食の食材
計       6800P(約4540
宿泊         Maria del Mar
インターネット    Plaza Mayor Com


2001年5月18日(金) 美術館めぐり(Visiting museums)

 私と武田さんのバイクは昨夜のうちにマドリッドに着いたはず。朝、スイスカーゴに電話して確認をとると予定通り届いたというが、今日通関して受け取ってしまうと色々と慌しい。受け取りは月曜に延期する。保税倉庫も4日間までなら無料のはずなのだ。山本さんのバイクも月曜日に到着の予定なので、一緒に通関に行けばいい。とりあえず、これで月曜まではバイクのことを考えなくていい。

 次に、やっぱり主人がムカつくので別の宿を探すと、同じビルの一階上の宿が空いていた。ここは主人はフレンドリーなので、引っ越しを決定する。
 チェックアウトする旨を告げると、今の宿の主人は今まで以上に態度を硬化させ、さらにムカつき度パワーアップ。宿泊費のおつりを渡しにくるときはノックもしないでドアを開けるし(今までは少なくてもノックはしていた)、チェックアウト時間を2分過ぎたら「さっさと出て行け」と言いに来た。思い起こせば数日前、街で宿を探していた日本人母娘を連れてきたときにも、礼を言うどころかいかにも面倒くさそうに対応していたっけ・・・。
  まあ、今日でこの宿ともおさらばだ。3人で宿を出るとき、主人はジーッと出口で私たちを睨んでいた。あばよオヤジ、日本ではこの後、ドアの外に塩をまいておくものだぜ。

 さて、引っ越しの後はマドリッド初のまともな観光、美術館めぐりだ。主だった美術館は日曜日が無料なのだが、今日、5月18日もなぜか無料なのだ。
 まずは近代美術を中心に集めたソフィア王妃芸術センターへ。ここにはスペインが世界に誇る画家ピカソのコレクションがあり、中でも超大作「ゲルニカ」は圧巻だ。私がこの絵をはじめて見たのは確か中学か高校のときの教科書だったが、本物がこんなに大きいとは思わなかった。なんせ7.8m×3.5m、モノクロの大画面が見るものを圧倒する。

 しかし、私はどちらかというサルバドール・ダリの方が好きだな。なんとも不思議な時空間を描いていて、見ていて飽きない。ピカソに比べると展示してある作品数が圧倒的に少ないのが残念だった。ソフィア王妃芸術センターでは他に現代の作家の特別展もやっていたが、どれもセンスがよくてカッコ良かった。満足、満足。
 そして売店もセンスの良いグッズばかり売っていたが、なぜか美術館に縁もゆかりもない(と思われる)日本製のたこやきやフランクフルトの形をした消しゴムが売っていた。・・・何でこれらの消しゴムが、この美術館のお眼鏡にかなったのだろう?

 まだ陽が高いので、次にスペインを代表する美術館プラドまで歩いていく。ここも今日は無料だ。
 この美術館はスペイン王家のコレクションを中心とした中世の絵画や彫刻がメインだが、はっきりいって私は中世の作品に興味が無いから、見ても「フーン」ってな感じ。とくに宗教画なんて暗いイメージしか感じない。スペイン人はこの時代に南米中の先住民の文化を破壊し、彼らを奴隷にして教会を建てさせていたのだ。その事を考えると、どうしても冷めた目でしか見られなくなる。グレコ・・・フーン、ベラスケス、ゴヤ・・・フーン、あ、ルーベンスもあるのか、「フランダースの犬」で最後にネロが見ながら死んで行く、あの絵を描いた人だな・・・。などと、2時間弱ほどで美術館を見終わる。これらの作品に憧れている人に言わせれば、なんともったいない事だろう。

 宿に帰り、夕食は今度同室になった山本さんと部屋で親子丼をつくって食べた。宿を換えても、ゲリラ調理は続くのであった・・・。


本日の走行距離             0キロ(計39770キロ)

出費                  7200P   宿代4日分
   400P  昼食(バーガーキング)
   150P  ビール
   400P  絵葉書
   320P  夕食(親子丼)
計       8470P(約5650
宿泊         Hostal Encarnita


2001年5月19、20日(土、日) 懲りない人たち(The Guerilla cookers)

 19日はとくに予定もないのでゆっくり起き、とりあえず3人で昼食を食べに出る。ボカディージョというサンドイッチが安くてボリュームのあることを知った。バーガーキングのセットが安いと騒いでいる場合じゃなかった。

 その後にインターネットをして、夕方から闘牛を見に行くも、チケットは完売であきらめる。ダフ屋は3倍の金額を言ってきたが、メキシコで一回見ているから(それもスペインからのマタドールのやつだった)、それほどまでして見たくはないのだ。
 帰りに3人でバールに寄り、生ビールに焼肉、きのこをつまむ。ほろ酔い気分でコルト・イングレースというデパートの地下のスーパーに行くと、食材が豊富なのであれもこれもと買ってしまう。アジア食品売り場では「出前一丁」をゲット。出発前にまた来て買おう。
 というわけで、今夜は3人でラーメンライス。部屋でぐつぐつラーメンを煮込み、ごはんと一緒にハフハフ。まったく懲りない人たちである。食後はワインにサラミ、チーズとチョコレート・・・トレス・ボラーチョスのできあがり!

 20日は地元のサッカーチーム、レアル・マドリッドの試合がある日だった。当日券(あれば)は午前11時から発売だというので、ダメもとでスタジアムの券売所に行ってみるが、やはり券は前売りで完売。昨日の闘牛に引き続き2連敗のさえない3人は、すごすごと退散するのだった。
 3人はその足で、毎週日曜日に開催されるラストロ(ノミの市)に行った。スリが多いので注意!らしいので、カメラとかは置いて気合を入れていったが、すさんだ雰囲気などは全然なかった。民芸品っぽい服なども売っているが、南米に比べるとはるかに高い。逆に革ジャン屋で超かっこいいシングルライダースが品の割にはいい値段で売っていたので、あやうく衝動買いするところだった。結局、洗濯ロープを買うに留めたが。
 その後は宿に帰って昼寝をしたり、日記を打ったり。その間、武田さんが一人でまたラストロに行ったのだが、さっきまで並んでいた露店は夕方前には一斉に姿を消し、代わりにアラブ人たちが市をたてていたという。人通りも少なくなり、さっきとは打って変わって危険な雰囲気だったという。マドリッド、やはり油断はできない。


2日間の走行距離            0キロ(計39770キロ)

出費                  5800P   宿代3泊分前払い
   600P  昼食代(2日ともボカディージョ)
   400P  インターネット
   720P  バールでビール&つまみ
   200P  洗濯ロープ
   1200P  夕食の食材(2、3日分)
計       8920P(約5950
宿泊         Hostal Encarnita
インターネット    Plaza Mayor Com


2001年5月21日(月) グリーンカードゲット!(Getting the green card)

 さて、月曜日。今日から本格的にバイク引き取り作業に入るぞ。
 まずは空港の貨物ターミナルに、バイクの通関のみを行いにいく。まだ保険の事がクリアになっていないので、引きとっていきなり走り出すのは危険だ。保険に加入するときに、きっとペルミソ(一時輸入許可証)などの書類が必要だから、先に通関だけすませて書類を整えようと思ったのだ。

 例のごとく、地下鉄で空港の旅客ターミナルまで行って、そこから貨物ターミナルまで歩く。武田さんが一緒なのは言うまでもないが、今日は山本さんも参考のためにと一緒に来た。彼のバイクは色々あって、まだブラジルを発っていないという。
 我々の向かった先は、イベリア航空のでっかな保税倉庫。他の航空会社のカーゴで送っても、最後はこの倉庫に預けられるらしい。スイスカーゴに言われた通り、書類を持って倉庫の受付に行く。
 受付では書類のことでちょっとしたトラブルがあったが、スイスカーゴと電話で話をしてもらって解決した。保税倉庫代や書類代を払って通関に必要な書類一式を受け取り、今度は別の建物にある税関へ。英語で荷物の受取り手順の描かれた倉庫周辺の地図も渡されたので、とても簡単だ。

 税関は、これまで経験したどの国境越えの時よりもきれいな建物だった。ここが本当に税関なの?というような小奇麗なオフィスに通され、スーツを着たやさしそうなおじさんがニコッと笑って書類に「通関しました」というスタンプを押しておしまい。
 え?以上でおしまい?「カルネを切る必要はないとしても、ペルミソもないの?」と聞くが、おじさんはまたニコッと笑って「スペインでは一切書類は要りません」・・・。うおお、じゃあいつまでもバイクをスペインに置いておけるじゃないの!しかもこのおじさん、バイク自体を見ているわけじゃないから荷物検査もフレームナンバーチェックもなし。通関に要した時間、ものの数分。
 おじさんに保険のことを聞いて見ると、またニコッと笑って、やはりスペインの自動車クラブを紹介してくれた。よし、行って見よう。いったん倉庫に戻って、明日引き取りに来る旨を告げて空港を後にする。

 マドリッドの中心街にあるスペイン自動車クラブ(RACE)に行ってみると、近くの保険会社を紹介された。そこがマドリッドで唯一、外国ナンバーの保険を取り扱っているという。
 またたらい回しにされるのでは、という不安を抱きつつ、Sagasta通り18番3階の「SEREA」というオフィスに行って見ると、「おお、ここがグリーンカード(ヨーロッパ共通の自動車保険)の入れるところだ」というではないか!頭の中でファンファーレが鳴り響く。まるでドラクエを解いたような気分だ。いやー、ここまで長い道のりだった・・・。

 しかし!ここで新たな問題発生。スペインではグリーンカードは1ヵ月単位、最高で2ヵ月分までしか入れないという。その後はスペイン各地にある提携事務所で更新の手続きを取らねばならないのだ。昨年、同じように南米からスペインに入ったライダー、Yoggyは確かマドリッドで一年の保険に入っている。しかしそのことを言っても、法律が許さないのだから無理だと保険会社のおじさんは言うのだ。
 たまたまその時、同じ窓口にスペインに4年住んでいるイギリス人が来ていたのだが、彼のバイクもイギリスナンバーのままなので、2ヵ月おきに保険の更新に来ているのだという。「友達がマドリッドで一年の保険に入ったって?そんなことができるなら、俺もそうしたいよ・・・」。 Yoggy!一体君は、どんなマジックを使ったのだ!?
 仕方なく、バイクの書類(カルネ&国際登録証)を見せて2ヵ月分の保険に入る。今度はポルトガルかフランスで延長しよう・・・。

 何はともあれ保険にも入ったし、これでマドリッド出発は明日と決まった。そうとなったら、色々やることがある。絵葉書を出し、最後のインターネットをして、荷造りをして・・・最後の夜はバールで祝杯をあげようと武田さんと言っていたが、それはかなわなかった。結局、今日も部屋で自炊して、酒飲んで 早寝。明日も朝から忙しいのだ!


本日の走行距離             0キロ(計39770キロ)

出費                   290P   地下鉄
   480P  切手代
   2560P  保税倉庫、書類代
   17670P  グリーンカード2ヶ月分
   650P  昼食(パエリア)
   500P  インターネット
   500P  夕食(イカ飯+ビール)
計       22650P(約15100
宿泊         Hostal Encarnita
インターネット    Plaza Mayor Com