旅の日記

チリ・ビーニャデルマル編その6(2001年4月24〜29日)

2001年4月24、25日(火、水) 賑やかになる汐見荘(Many friends arrive)

 今まで1週間近く一人だったのに、一人来たら次々と客が来るようになった。
 24日、ロペス・モトでのタペットとバランサーチェーンの調整作業が途中で終わってしまい、バイクを置いてバスで汐見荘に帰ると、宿泊客が二人増えていた。一人はのちに汐見荘に置いてある漫画「沈黙の艦隊」にハマり、「艦長」と呼ばれることになる川嶋さん、そしてもう一人は昨年5月にエクアドルのキトで初めて会い、その後ペルーのクスコで再会、クリスマスを一緒に過ごした安部さんだ。安部さんとはメールのやりとりをしていて、そろそろ南米最南端ウシュアイアから上がってくるころだろうと待っていたのだ。
 安部さんがウシュアイアで免税のバーボンを買って来てくれたので、24日はそのまま酒盛りに突入。というより以後、毎晩が酒盛りなのだけど・・・。

 25日はひきつづきロペス・モトで作業。エンジンオイルとリアタイヤの交換を行う。昼食はロペス家でごちそうになった。夜は汐見荘の4人で肉を買ってきて、ステーキにして食べる。悪くないが、肉はやっぱりアルゼンチンの方が安くておいしいな・・・。


2日間の走行距離       25キロ(計39360.8キロ)

出費                  7500P   エンジンオイル
   600P  バス
   6750P  飲食費
計        14850P(約2970
宿泊         汐見荘


2001年4月26日(木) モアイ像を見る(Seeing a Moai)

 モアイ像というのをご存知だろう。太平洋上の絶海の孤島、イースター島にいた民族がつくった謎の巨像である。イースター島はチリ領土であり、チリに来る旅行者の多くはモアイ像と対面し、島に栄えた巨石文明を偲ぼうとサンチャゴから飛行機で飛ぶ。イースター島からさらに西へ向かい、ニュージーランドやオーストラリアまで渡る太平洋横断チケットも人気だ。
  私もできればイースター島に行きたかったのだが、予算と時間の関係であきらめていた。しかし本物のモアイ像は1度見ておきたかったので、今日は安部さんと一緒にビーニャデルマルの考古学博物館に行った。博物館前にはイースター島からはるばる運んできた本物のモアイ像が置いてあるというのだ。

 ビーニャのセントロ(中心街)から歩いて約10分、着いた博物館は思ったより小さく、白い木造の一軒家だった。入口前にデーンとモアイが立っているが、そのデーンの度合いが少々弱い。思ったよりも像が小さいのだ。まあ小さいと言っても高さ3メートルはあるが。ご対面したモアイ様は少々お顔にコケがついているものの、故郷のイースター島に向いておられるのでしょうか、凛々しく遠くを見つめていらっしゃいました・・・。
 記念写真を撮り、せっかくなので博物館に入ってみる。大した展示物は無いが、北部の砂漠から持ってきたと思われる少女のミイラや、イースター島のモアイ像のパネル写真が良かった。こういうのを見ていると、やっぱりイースター島に行きたくなってくるな・・・。

 汐見荘に戻ると、もう3年も旅をしているという筋金入りのバックパッカー夫妻、中西さんがやって来ていた。彼らはしばらく汐見荘に滞在したのち、イースター島からオセアニアに抜けてオーストラリアを経由して日本に帰るらしい。3年も夫婦で旅をしていると、二人で工夫して色々と料理を覚えるのだそうだ。というわけでこの中西夫妻の登場により、以後の汐見荘の食生活がバラ色になるのだった・・・。


本日の走行距離           0キロ(計39360.8キロ)

出費                   650P   インターネット
   270P  コレクティーボ
   250P  バス
   500P  コーヒー
   800P  博物館
   500P  絵葉書
   1800P  夕食(カレー)
計        4770P(約950
宿泊         汐見荘
インターネット    Cyber Cafe


2001年4月27日(金) ガスケット交換、映画を見る(Changing the gasket)

 先日、バイクのバランサーチェーンを調整する際に、実は手を抜いてしまった。ガスケットを交換しなかったのだ。昨年秋に交換したばかりだし、今までもクランクケースを開ける際は2回に1回の割合でしかガスケットは交換していなかった。今回もそれで行けるかも思っていたが、オイルがにじんできてしまった。仕方なく、午前中にまたロペス・モトの作業場を借りてガスケットを新品に交換する。考えて見ればこのガスケットはもう2枚もあるので、ケチる必要など無かったのだ。

 午後は安部さんと、アカデミー賞(何部門かは知らないが)を受賞したという映画、「トラフィック」を見に行く。ティワナを挟んだアメリカ側とメキシコ側の、それぞれの麻薬密輸業者や取締り捜査官の姿をドキュタリータッチに描いたもので、アメリカでは高い評価を受けたそうなのだが、メキシコが舞台のシーンでは映像がセピアというか、すさんだ色が出るようなフィルムを使っており、メキシコが好ましくない国のような印象を受ける。舞台がアメリカなのかメキシコなのかを区別するためだと思うのだが、アメリカ側の映像は美しいフルカラーなので、どうしてもそれと比較してしまうのだ。映画そのもののテーマもメキシコからの麻薬密輸問題だし・・・。メキシコのファンとしては、ちょっと遺憾に思うのだ。この映画を見たアメリカ人の親は、自分の子供がメキシコに旅行に行きたいなどと言い出したら100パーセント反対するだろうな・・・。


本日の走行距離          15キロ(計39375.8キロ)

出費                  2100P   昼食(魚フライ)
   1200P  映画
   500P  コレクティーボ
   1591P  野菜など買物
   1400P  夕食(野菜スープ)
計        6791P(約1360
宿泊         汐見荘
インターネット    Cyber Cafe


2001年4月28日(土) バルパライソ観光(Seeing the town of Valparaiso)

 考えて見れば通算で1ヵ月以上もビーニャにいるのに、隣町のバルパライソの観光さえも満足にしていない。というわけで、今日は安部さんと川嶋さんと武田さんの4人で、バルパライソ観光に出かけた。
 ビーニャデルマルとバルパライソはほとんどくっついているのだが、お互いの中心街は約10キロ離れている。両者間は頻繁にバスやコレクティーボ(乗合タクシー)が行き来しているが、海沿いを走る列車もあるのだ。以前から何度となく目にしながら、1度も乗った事の無いこの列車に乗ってバルパライソに向かうことにする。
 土曜日だから本数が少ないのか、さんざん待ってようやく来た列車は、私が期待していた趣きのある旧式の車両ではなかった。仕方なく地下鉄のような新型車両に乗りこむが、車窓から見る太平洋は日光に輝いてきれいだった。

 10分ほどの短い旅が終わると、列車は終点のバルパライソの駅に到着した。駅からセントロ方面へ散策し、途中の生ビール屋でコンプレトと生ビールのセットを頼む。昼間っから生ビールを飲むいい年の男4人。いい身分なのである。
 チリ最大の港町バルパライソは、急坂や崖の町でもある。市内には崖の下と上とを結ぶ100年も前に作られた旧式のエレベーターが数本あり、そのうちの一本に乗って太平洋を臨む斜面に建てられた「ラ・セバスティアーナ」を目指す。
 「ラ・セバスティアーナ」とはチリの国民的詩人ネルーダが住んでいた館で、バルパライソの見所の一つとして公開されている。5階建ての細長い館は趣味のいいインテリアで溢れており、窓からは美しい太平洋が一望できる。中でも一番気に入ったのはダイニング奥のバーで、そのポップな雰囲気はそのまま店にしても通用しそうにカッコいい。しかし写真撮影はご法度だそうで、バーの写真を撮ろうとしたら注意されてしまった・・・。
 このネルーダという人、ノーベル賞を受賞した詩人であると同時に、フランス大使なども勤めた外交官だったらしい。やっぱり文学だけで身を立てるのは容易ではないのだ。


本日の走行距離           0キロ(計39375.8キロ)

出費                   250P   列車代
   780P  生ビール、コンプレト
   1800P  「ラ・セバスティアーナ」入館料
   1400P  夕食(スパゲティ)
計        4230P(約850
宿泊         汐見荘


2001年4月29日(日) ロペス家に行く(Visiting the Lopez family)

 やはり類は友を呼ぶのだろうか、私は現地で知り合いができると、その人は離婚経験者だったというパターンが多い。バルパライソでバイク屋を営むロペス家の長男マルコもそうで、別れた奥さんとの間には二人の息子がいる。一時帰国の前にマルコと話したときには寄りを戻す可能性が強いと言っていたが、先日はその芽が完全に消えた、と遠い目をして語っていた。
 しかし今日、ロペス家に昼食に呼ばれていくと、マルコの元奥さんも来ていた。よくわからんなあ。仲も良さそうだし。まあ、俺と久美子のことも「よくわからん」という人は多いが。

 何はともあれ、ロペス家の昼食である。本日のメニューはレイネタのワイン蒸しである。ピンク色の身がおいしいレイネタは、汐見荘ではよく刺身にして食される。本日はでかいオーブン皿にレイネタの切り身を敷き、赤・緑ピーマン、にんにく、玉ねぎ、粉チーズ、香草などを散らし、ワインを注いでアルミ箔で蓋をする。そして庭に用意された炭火のバーベキュー台にのせ、放置すること約40分。アルミ箔の隙間から、いい香りのワインの蒸気とジュクジュクというおいしそうな音が漏れてきた・・・。
 いざ食すると、お!うまい。1月にごちそうになったパステル・デ・チョクロ(とうもろこしのパイ)は鶏肉が入っているにもかかわらず砂糖もたっぷり入っていて、妙な甘さにまいったが、今日のレイネタはとてもうまいぞ!

 食後は昼寝の時間まで与えられて、リビングのソファーでグーグー寝た。起きたらすでに夕方になっていて、マルコの元奥さんたちもいなくなっていた。私もおいとまする。ロペスの親父はまだ幸せそうにベッドで眠っていたが・・・。


本日の走行距離        22.2キロ(計39398キロ)

出費                  1744P   おみやげのワイン
計       1744P(約350
宿泊         汐見荘