朝、これからフェリーでフェゴ島へ渡り、ウシュアイアを目指すというアドリアンと別れてプンタ・アレーナスを出発する。目指すはチリ側パタゴニアの観光の目玉・パイネ国立公園だが、その前に寄るところがあった。おととい行こうと思って行けなかった、ペンギンのコロニーだ。
実はおととい、迷って引き返し、アドリアンと出会って一緒にプンタ・アレーナスに向かう途中、それらしき看板を見つけていたのだ。
というわけで、今朝はその看板に従って進む。よく整備されたダートで、おとといの道とは比べものにならない。やっぱりこっちがメインのルートだ。
国道から30キロほど走って、ペンギンのコロニーの入口に着く。入場料2000ペソを支払い、オトウエイ湾に面した海岸沿いのコロニーに入ると、いるわいるわ、マゼランペンギンの大群だ!

浜にいたマゼランペンギンは、「ブー」とか「ボー」とか鳴いていた。求愛の鳴き声だろうか、大空に口をあけて一生懸命に鳴いている。それにしても、ちょっと音の感じがペンギンのイメージと違うなあ。そういえば、昔オーストラリアの海でイルカに触ったときも、イルカは「キュルキュル」鳴くものかと期待していたら、頭の上にある気孔(つまり鼻の穴)から、「ゲフッ」とオヤジのゲップみたいな音を出していたっけ・・・。
そして陸の方にいたペンギンたちは、集合時間かなにかなのだろうか、みんな一斉に浜に向けて行進していた。そのヨチヨチ歩きが、かわいいのなんの。人間はロープで区切られた遊歩道から出られないのだが、ペンギンたちは恐れる事を知らず、けっこう近くに来たり遊歩道を横切ったりする。水族館だって、こんなに間近に見られないぞ。しかも、こっちは天然モノだ。
ペンギンを堪能した後は約300キロ北のパイネ国立公園を目指した。例によって風が強く、寒い。パイネ観光の基地となるプエルト・ナタレスの街に到着するが、昼食を食べただけでさらに北を目指す。公園内にバイクで入れるキャンプ場があると、アドリアンから聞いていたのだ。
日が傾きかけたころ、パイネ国立公園(正確にはトーレス・デル・パイネ国立公園)のゲートに到着した。パタゴニアでも屈指の名所なので、てっきり公園に向かう道や公園内の道は舗装かと思っていたら、全部ダートだった。別に構わないけど。
雪山や湖、氷河、滝など公園内には見所がたくさんあるが、なかでも有名なのは公園の名前にもなっている「トーレス・デル・パイネ」(パイネの塔)という、3本の塔状の岩山。まずはここを見ようと、そのふもとにあるキャンプ場を目指す。しかし、その途中の景色も十分に素晴らしい。
そのキャンプ場は「ラス・トーレス」というホテルと、同名の山小屋(レフヒオという)と隣接で、本道から7キロほど入る。本道から分かれると、道はまずパイネ川という川を渡らねばならない。当然橋があるのだが、この木の橋が湿って滑りやすくなっており、私は豪快にコケてしまった。
すぐ後ろにホテルの白いトラックがいて、バイクを起こすのを手伝ってくれた。あー、やってしまった、と思った。しかし、コケるぐらいならまだまだ可愛いのだ!この橋とパイネ川が後にどんな事になるか、このときの私は想像もしなかった。そして、この白いトラックも後でまた登場するのだ・・・。
そんなこんなでキャンプ場に到着。遠くに雪を被った3本の「トーレス・デル・パイネ」をのぞむ、絶景のキャンプ場だ。おまけにシャワーはガス湯沸し機つきで、熱いお湯がバンバン出る。こりゃ最高、といい気分で寝袋に入った。それが、後でこのキャンプ場をあんなに出たくなるとは・・・。
|