旅の日記

ペルー・プーノその2〜ボリビア・オルーロ編(2001年1月2〜4日)

2001年1月2日(火) 歯を治して眼鏡をつくる(Fixing the teeth and making glasses)

 無事に年越も済ませたし、これで予定よりもはるかに長居したプーノを出ることができる。しかし、その前に壊れた眼鏡と取れた前歯を何とかしなければ。

 朝一番で歯医者を探すと、ホテルの近くの広場に面した1軒の歯医者がみつかった。早速、前歯の治療をお願いする。妙に陽気で「ヘイ、アミーゴ、ワッツ・アップ?」みたいな軽いノリの歯医者だったが、渾身の力を込めて前歯を接着してくれ(歯ぐきが痛くなるくらい)、無事、歯は元の位置に納まった。なんか噛み合わせが変わったような気がするが、ラテン社会でそんなことは気にしていられない。グラシアス、ドクトール。

 さて、次は眼鏡の番。眼鏡屋をみつけて修理を頼むが、やはり金具が折れているので新しいフレームに換えなければならない。レンズも作ると時間がかかるそうなので、壊れた眼鏡のを流用してもらい、オレンジ色のプラスチックのフレームにした。鏡を見ると、今までの濃紺のフレームより陽気な感じになった気がする。え?バカに見えるって?
 眼鏡は数時間でできた。丸1日はかかると思っていたので出発は明後日のつもりでいたのだが、これなら明日に出られる。よくよく眼鏡をかけてみるとちょっと小さい気がするが、ラテン社会でそんなことは気にしていられない。グラシアス、セニョリータ。

 その後はホテルで年賀状をつくる。他に年越の日記も打ち、あわせてインターネットカフェからアップロードする。
 これで正真証明、プーノでやることは無くなった。明日はボリビア入国だ。


本日の走行距離          0キロ(計28126.3キロ)

出費                    20S   前歯治療代
   40S  眼鏡のフレーム、工賃
   2.6S  パン、卵など買物
   2.5S  インターネット
   6S  昼食(中華)
   1.5S  チョコレート(性懲りも無く)
計       72.6S(約2280

宿泊         Hotel Los Pinos
インターネット    Internet Cyber Club Puno


2001年1月3日(水) ボリビア入国、ティワナク遺跡を見る(Entering Bolivia, Tiwanaku ruins)

 朝一番でお世話になったホテルを出る。バイクを入れるときは難儀したが、出すときは楽だった。プーノ市街も何ら迷うことなく、一路ボリビアとの国境を目指す。

 さて、ペルーからボリビアへの国境越えは、チチカカ湖に張り出した半島の先まで行ってボリビア側のコパカバーナから入るルートと、湖の南岸をまっすぐ走り、デサゲデーロという国境の町から入る2種類のルートがある。厳密にいうと湖を船で横断するルートもあるが、金と時間がかかって現実的ではない。
 ボリビア側のコパカバーナはその街自体が観光地で、近くには「太陽の島」や「月の島」といったチチカカ湖でも有名な島がある。従って、このルートを通って観光をしながらボリビアに入るのが一般的だが、私はチチカカ湖や島にはだいぶ満足したし、コパカバーナの先は結局フェリーに乗らなければならない。さらに後者の国境の方が静かで手続きもスムーズに行くと考えので、私はそっちに向かった。プーノからは約150キロの距離だ。

 晴れたり小雨が降ったりする忙しい天候のなか、2時弱で国境に到着。思っていたとおり静かな町で、国境特有のアヤシイ雰囲気がない。バイクを見張る子供を二人雇い、ペルー出国の手続きを済ませる。至ってスムーズ、何の問題もない。
 次に小さな橋を渡ってボリビア側へ。入国税として30ボリビアーノ(約5ドル)を払わなければならないが、私は100ボリビアーノ札しか持っていなかった。イミグレでそれを差し出すと、お釣りが無いという。ボリビアというと、じゃあ100にしておこうか、といわれる印象を持っていたが、係官は「じゃあ、タダにしておこうか」と言ってくれた。やった、30ボリもうかった!国の印象もだいぶ変わる。
 次に税関に行ってバイク入国の手続き。なんの問題もワイロを請求されることもなく、カルネを使って無事、手続き終了。係官は笑顔で見送ってくれた。やはり田舎の国境の方が人がスレていない。
 両国にまたがってバイクの見張り番をしてくれた子供二人にチップを払う段になったが、残っていたペルー通貨のコインは予想以上にあった。ケチって残しても仕方ないので4ソル(約150円)、全部あげる。え?150円くらいでウダウダ言うなって?ペルーでは4ソルあれば、立派に一食食べられるのです。

 国境から本日の目的地、ティワナク村までは約50キロ。すぐに着いた。
 村の外れには同名の遺跡があり、チチカカ湖と並んでボリビア西部の観光の目玉となっている。村には2軒ほど宿があり、安い方にチェックインする。そして遺跡近くのレストランで観光前の昼食を取るが、そこで悲しい事実が判明した。
 支払いの段になって100ボリビアーノ札を出したが、店主はニセ札だという。もう1枚の札と見比べると確かに店主の指摘する通り、紙の質が違ったり、あるはずの刻印が無かったりする。100ボリというと約15ドル、損失は大きい・・・。ちなみにこの札、ウユニ塩湖へのツアーに行ったときに入手したものと思われる。
 くやしいので、遺跡の入場料を払うときにもう1回その札を出したが、やっぱり拒否された。仕方ないので、レストランのお釣りの札で払う。

 ティワナク文明はここチチカカ湖畔に紀元前に誕生し、いくつもの段階を経て紀元800年ごろまで続いた。南米史上インカ文明の次に大きな勢力を誇り、その影響はその後の文明の随所に見られる。やはりインカ同様、巨石を使った神殿などが遺跡となっている。

 なかでも一番の見所は「太陽の門」。1枚岩から削り出され、精巧な彫刻が施されている門だ。しかし、実はここを訪れた複数の人から太陽の門、ひいてはティワナク遺跡は期待外れだったという意見を聞いていたのだ。
 果たして実際の「太陽の門」と対面すると・・・あれ?これがそう?ってな大きさ。小さいとは聞いていたけど、迫力なー。横からみるととても薄くて、さらに淋しくなる。「地球の歩き方」の写真とは大違い。しかし一応、記念写真は撮る。

 「広大な敷地の遺跡なのでかなり歩く覚悟が必要」と、やはり「地球の歩き方」にあるが、そんなことはない。大きさはちょっと大きめの公園くらい、ゆっくり見て回っても1時間半もあれば十分だ。
  遺跡からはたくさんのモノトリート(石像)が出たというが、敷地の中に残されているのは4体ほど。一番有名だという「ポンセの石像」は確かにカッコ良かったが、逆光でいい写真が撮れなかった。かわりに、2番目にカッコいい石像を載せます。

 遺跡自体は期待外れの感はいなめなかった。ただ、残された神殿の基礎部分の石組みや彫刻などから、ティワナク文明がいかに石の加工技術で優れていたか理解することができた。石というとやはりインカが有名だが、同文明は西洋でいえば中世のころにあたる。それだけの技術があるのは当然といえば当然だ。(まあ、インカの場合は鉄や車輪が無かったというハンデがついているのだが)
 しかし、ティワナクはインカよりさらに1000年も遡る。それでいて、インカにひけをとらない加工技術を誇ったのだ。これは驚きに値する。

  もう一つ、驚きに値するものがあった。遺跡に隣接された博物館に「ミノムシミイラ」があったのだ。
 この博物館には遺跡から出土したいろいろなものが展示されているが、その中でひときわ目立っていたのがこのガラスケースに入れられ、照明があたって輝いていたミイラだ。説明がないのでよくわからんが、このミイラ、どうみたってミノムシだぞ。なんか、寝袋に入ったままミイラになったみたい・・・。

 観光が終わると、やることが無くなった。村はシケているし、宿もシケている。夕食は外食にしようと思っていたが、雨が降ってきたので部屋で米を炊く。さすがに高度が3800mもあるとうまく炊けなかったが、食べられないほどでは無かった。味噌汁とふりかけで食べる。
 食後はさらにやることが無いので、日記を打って寝た。早く明日が来るように。  


本日の走行距離      195.5キロ(計28321.8キロ)

出費                    40S   プーノの宿2泊分
   40S  ガソリン代
   4S  少年見張り番代
   18B  昼食(チキン)
   15B  遺跡入場料
   3B  卵、パンなど買物
計       84S(約2640
       36B(1ドル=6.2ボリビアーノ、約640円

宿泊         Hostal Puerta del Sol


2001年1月4日(木) 何もない街(Boaring town of Oruro)

 淋しいティワナク村を出発すると、ボリビアの実質上の首都ラパス(憲法上の首都は別にある)までは60キロほど。1時間もかからないうちにさしかかった。

 ラパスは盆地というのとちょっと違う。広大な高原の中に突然すり鉢状の巨大な窪みが現れ、それ全体が都市なのである。安部さんが冗談で「ラパスはUFOが着陸した跡にできた」と言っていたのが理解できる。すり鉢の底にあたる部分が最も標高が低く、暖かく、空気が濃い。よってすり鉢の底から順に、社会階級の高い人が住んでいる。最下層の人たちはエル・アルトと呼ばれるすり鉢の縁、あるいはそれよりも外側にはみ出した貧民街に追いやられている。
 私の今回のボリビア突入の目的は世界最高所の都市ポトシ。首締め強盗が多発し、私の興味をそそるものが無いラパスには用はない。すり鉢の底に降りて中心街に迷いこむと面倒なので、縁を回るように次の街オルーロへ向かう道を探す。幸いボリビアはエクアドルやペルーより標識はある方なので、難なく見つけることができた。
 オルーロに向かう前に給油をする。何気なく昨日のニセ100ボリビアーノ札を出してみると、スタンドの姉ちゃんは疑いもせずおつりの70ボリをくれた。やった!でもごめん、姉ちゃん。

 ラパスからオルーロまでは約230キロ。遠くに雪を被った山々を見ながら、標高3500mを超す高原を走る。空は雲が多く、ときおり小雨がパラつく。とても寒い。フリースやカッパなど、着られるものは全部着ているのに寒い。休憩を取りたいのだが途中にある村にはたいした店もなく、寒々とした大地の真ん中で凍えながら休むのもなんなので、そのまま走る。

 午後2時前、オルーロに到着。鉱山で栄えた人口約20万人のこの都市では、毎年2〜3月にかけてブラジル・リオのカーニバル、ペルー・クスコのインティライミと並ぶ、南米三大祭りの一つに数えられるカーニバルが行われる。しかし、それ以外の時期にはたいした見所もなく、訪れた観光客は口をそろえて「何にもない」という。
 実際行ってみると、本当に何にもなかった。街の大通りは閑散としていて、風が舞い上げた埃だけが元気に行き交っている。そんな通り沿いにある「ホテル・リプトン」にチェックインする。「ロンリー・プラネット」に、駐車場があると紹介されている安ホテルだ。

 最終目的地ポトシはオルーロから300キロあまり南。ただし道が悪く、無理してバイクで往復するのも意味が無いので、この街にバイクを置いてバスで行こうと考えたのだ。ホテルに荷物を置いて早速バスターミナルにバスの時間を見に行くと、今夜10時発の夜行がある。ちょっと急だが、これで行く事にしよう。

 時間までオルーロの街をぶらついて、何もないというのを再認識する。そして夕食を食べ、必要な荷物だけをタンクバックに詰めてポトシ行きのバスに乗った。これで明日の朝、目が覚めれば世界最高所の都市というわけだ。


本日の走行距離      278.3キロ(計28600.1キロ)

出費                    18B   ティワナク村の宿代
   30B  ガソリン
   6B  有料道路
   9B  昼食(チキン)
   3B  歯磨き粉
   2B  コーヒー
   75B  オルーロの宿3泊分前払い
   40B  ポトシ行き夜行バス
   4B  夕食(セナ=定食)
   1.5B  バスターミナル利用料
   2.5B  水
計       191B(約3390

宿泊         夜行バスの中
バイクの置き場所 Hotel Lipton