とても居心地のよろしいビーニャの街を去る日がやってきてしまった。
昨夜のうちにパッキングはすませていたので、後は荷物を載せるだけなのだが、午前中いっぱい寝て、昼ご飯も悠長に作って食べていたら、出発は午後遅くになってしまった。
牛次郎のセルモーター(あるいはフライホイール?)は完全にイカれてしまっていて、やはりエンジンはかからなかった。唯土くんに手伝ってもらって汐見荘の駐車場から押して出す。汐見荘の前は急な下り坂になっているので、後は引力にまかせてエンジンをかけるだけ。そして唯土君と涙のお別れをし、いざ出発。牛次郎は勢い良く坂を下り始め、クラッチを繋ぐと、8日ぶりにエンジンに火が入った。
しかし我々はまず、ビーニャに到着した日に訪れた巨大なスーパーに向かった。食料の買い出しをかねて、もう一度ゆっくりとあのスーパーを見たかったのだ。
押しがけができる場所を選んで牛次郎を停め、いざ買物へ。パンや野菜の他、ウメさんは勢い余って空気で膨らますベッドが安いというので買っていた。おそらく史上最も荷物の多いバックパッカーであろう。
結局買物が終わり、ビーニャの街を後にしたのは午後5時ごろだった。まずは東へ向かい、チリを南北に縦断する5号線に戻ってから、ひたすら北を目指す。
日が長いので、完全に暗くなるころにはもう8時ごろになっている。暗くなってからもガンガン走り、どこかで夕食を作ろうと思ったが、海辺の道は風が強く、ひどく寒い。今夜は外食で済ませようと1軒のレストランに入ったら、もう午後11時すぎだった。久しぶりに食べたチキンはたいへんなボリュームで、体が温まった。
その後も午前1時ごろまで走り、ラ・セレナという街のスタンドで眠ることにした。スタンドにはパトカーがいて、我々を不審に思ったのか警官が職務質問をしてきたが、事情を説明するとパスポートを調べるでもなく、やさしい言葉をかけてくれた。チリの警官はいい人が多いなあ。ちなみにチリでは警察は「第4の軍隊」と呼ばれるほど強いんだそうな。いいぞ、頼りになるぞ。
今日は夕方発にもかかわらず、400キロ弱は稼げた。目的地は遠いが、調子は悪くない。
|