朝、居心地の良かったHotel
Village Fozをチェックアウトしてパラグアイとの国境に向かうが、話に聞いた通り国境は大渋滞。ブラジル側のイミグレにたどり着くまで、30分ほど汗だくになって渋滞の列に並ぶ。
ブラジル側でパスポートに出国のスタンプをもらい、牛次郎のペルミソ(一時輸入許可証)をキャンセルして、2国間を結ぶ橋を渡る。これで正真証明、ブラジルとお別れだ。
パラグアイ側でも手続きは思ったよりスムーズだった。約30分ほどで牛次郎のペルミソを発行してもらい、無事パラグアイに入国。実は、パラグアイでは警察に気をつけろ、と複数の情報筋から忠告があった。「あいつらは腐っているから」と。入国の際に難癖をつけられるのでは、と構えていたが、国境ではそんなことは無かった。
さて、今日は月曜。昨日は閑散としていた国境の町シウダード・デル・エステも大変な活気を見せていた。入国早々、牛次郎を町の有料駐車場に入れて買い物に行く。
免税の町シウダード・デル・エステはまさに買物天国だった。電気製品、カメラを中心に、化粧品、酒類などが通常の南米価格よりはるかに安く売られている。日本製の電気機器は秋葉原よりちょっと高いくらいの値段で売られており、VICTORのデジタルビデオカメラが600ドル、OLYMPUSの200万画素のデジカメが340ドルなどと、下手すると日本より安そうな掘り出し物もある。品揃えも恐ろしく豊富、コンピューター関係でも大抵のものは揃うと思われる。パラグアイはまさに南米の秋葉原、ウキウキしながら店を回る。
探していたデジタルビデオカメラのテープがあったので、3本購入する。60分ので1本8ドル、日本よりちょっと高い。しかし50ドル札で払うと、2人の店員が確認したにもかかわらず、36ドルのおつりが帰ってきた。やった!10ドルもうけた。やはりこの町、たまらん。
途中で食べた中華料理屋の炒飯、麻婆豆腐、麺もおいしく、この町で一泊することに大変な魅力を感じてしまうが、いかんせんここは宿代が高い。あきらめて首都アスンシオンを目指して走り出す。この時点ですでに夕方の5時前、体は疲労を覚えていた。
さて、アスンシオンまでは約330キロ。道の状態は極めて良く、緩やかな丘陵地帯を牛次郎は順調に走った。走り出してしばらくは夕陽を追いかけていたが、それもやがて沈み、あとは深い闇となった。検問所がところどころにあるのだが、最初に止められたときは何のおとがめもなし、その後の数ヵ所は止められることもなく、意外とこの国の警察は問題ないかも、と思いはじめていたとき、事件は起こった。
アスンシオンの郊外まで来たとき、二人組みの警察官に止められた。「左後ろのテールランプが消えているので、キップを切る。罰金は本来100ドルだが、お前らは旅行者なので特別に25ドルにまけてやろう。今はもう遅いので銀行も閉まっている。今、この場で払え」・・・うーん、絵に描いたような悪徳警官のパターン。テールランプは単なる接触不良で、ウメさんがすぐに直した。しかし、今度は「後ろのナンバープレートを照らすランプが無い。これはパラグアイでは違反だ。やはり罰金を支払え」という。確かにそんなランプは牛次郎には無いが、同じような車がバンバン脇を走り抜けて行く。「今の車だって無かったじゃないか」と指差すが、「いや、今のは付いていた」と、言い張る。25ドルも払いたくないので(その金は間違い無く警官のポッケに入る)、これは向こうがあきらめるまで根気の勝負、と覚悟する。
30分ほど「払え」「そんな金はないッスよ」という問答が繰り返された。しまいにはウメさんも私もおかしくなってきて、笑う余裕まで出てきた。すると警官もしらけてきたのか、握っていた私の免許を返して「じゃあ罰金はいいから、何か日本みやげをくれ」と要求を曲げた。
こうなればこっちのものだ。日本から持ってきたピカピカの5円玉を渡して、「これ、穴の開いたお金。珍しいでしょ」と切りぬけようと思い、牛次郎の中で一時帰国の際に持ってきた5円玉の束を探すが、なぜか見つからない。延々と探しているうちに、警官も「もういい。行け」と言ってくれた。やった、根気勝ち!
悪徳警官のワナを無事突破すると、すぐにアスンシオンに到着した。首都アスンシオンは次国アルゼンチンとの国境に近い町。パラグアイの国土は日本とほぼ同じ大きさだが、今夜はそのくびれた部分を横断したことになる。
何回も道を聞き、ようやくバスターミナル近くの適当な安宿にチェックインする。この時点で午前1時すぎ・・・。長い一日だった。国境を越え、買物をし、330キロ走り、警官に捕まった。今夜はビールを飲んでもう寝よう、と思ってバスターミナルの売店にウメさんと2人でビールを買いに行く。
・・・そしたら、警官に捕まった。パスポート不所持で。「目の前のホテルからだ。一緒に部屋まで行こう、そしたらパスポートを見せる」というが、我々を囲んだ4、5人の警官は頑として通さない。「一人が取りに行け。一人は残れ」というので、仕方無く私が残り、ウメさんがホテルに帰る。
私はバスターミナルの警察のオフィスに連行され、厳しいボディチェックを受けた。サイフを取りあげられ、中の札、小銭まで1枚1枚調べられた(20ドル程度しか無かったが)。とてもいやな雰囲気。人のポケットに手を突っ込み、「この突起はなんだ!」だってさ。それは骨盤だって・・・。
やがてウメさんがパスポートを持って帰ってきた。警官たちは1ページ1ページ、パスポートをめくって調べて行く。ちゃんとパラグアイの入国スタンプがあるのを確認すると、意外にも「今後は気をつけるように」と解放してくれた。現金を所持していることは向こうもわかっているので、てっきり罰金でも要求されると思ったが、それは無かった。どうやら本当にアヤシイ人たちと思われたようだ。これは一緒にホテルまで行かなくて良かった。荷物まで全部調べられたかもしれない。
パスポートの携帯を義務づけている国は多い。南米ではほとんどの国がそうだが、実際問題、危なくて常に所持などできない。そして、今まではそれで通ってきた。しかし、このパラグアイだけはそうは行かないようだ。おそらくあの厳しさでは、パスポートのコピーでも通用しないだろう。知り合いのライダーも不所持でひどい目に会ったらしいし・・・。
というわけで皆様、パラグアイにお越しの際には常にパスポートを持ち歩きましょう。
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