旅の日記

ブラジル・ボニート編(2000年9月22〜25日)

2000年9月22日(金) ダートを激走、牛次郎(Racing on a dirt road)

 工場で修理中のトラックのエンジン音で目が覚めた。
 とりあえず朝一番でクラッチの様子を見てもらうが、修理工のオヤジがクラッチのエア抜きを行うと、すぐに直ってしまった。おんや?あれだけ苦労してクラッチ無しで走ってきた苦労はいずこへ?
 後は昨日パンクしたタイヤを直してもらい、予想より早くボニートに向けて走り出す事ができた。

 そう、今日の目的地はボニートの町。ミランダからはちょうど真南、60キロの舗装路の後、70キロのダートを走らねばならない。ボニートはあまり知られていないが、付近には透明度の高い川が何本も流れており、シュノーケリングをしながら淡水魚と戯れることができるというブラジル人、またはブラジル在住の邦人が勧める観光スポットなのだ。

 ミランダを後にして舗装路を進むと、ウメさんが牛次郎の異常に気付いた。バッテリーの充電状態を示す電流計が動いていないのだ。メーターが壊れたのかも、と思ってそのまま乗りつづけるが、途中のボデケナという小さな村でエンジンがかからなくなった。これはちゃんとした(?)、ジェネレーター関連のトラブルだ。
 村に小さな修理工場があったので入ると、人の良さそうなメカニックのお兄さんがすぐに見てくれ、ジェネレーターの配線の不具合を発見して直してくれた。タダでいいと言われたが、コーヒー代ほどを渡して走り出す。

 ボデケナからボニートまでは70キロのダート。ダートの振動と衝撃がまた故障を呼び起こすのでは、と緊張したが、よく整備された幅広のフラットダートで、パンタナールのダートとは比べ物にならないほど走りやすかった。
 牛次郎をいたわって走るべきだが、まるで「セガ・ラリーチャンピオンシップ」みたいで、このフラットダートを飛ばすのが楽しい。速度は5、60キロほどだが、すごいスピード感だ。砂煙をもうもうと上げて進む。
 しかし、やはりトラブルは起きた。途中でクラッチが「ヌケて」来たのだ。クラッチオイルのタンクを見ると、オイルが半分近く無くなっている。今朝、満タンにしたばっかりなのに。とりあえず予備のオイルを注入し、だましだまし走りつづけ、ボニートの町に到着。

 ボニートの町では、今日3軒目となる修理工場を訪れた。年配の白髪のメカニックは牛次郎の下に潜りこむと、クラッチパイプの連結部分が切れているのを発見した。今朝もこの状態だったはずだが、ミランダのメカニックは見落としたらしい。年配のメカニックは約1時間かけて切れたパイプを繋いでくれたが、ここでも料金はいらないという。やはりブラジル人、いい人が多くて感激。タダではさすがに悪いので、ビール代ほどを渡す。
 修理工場の隣に安そうな宿があり、中庭に牛次郎が停められるというのでチェックインする。シャワー、トイレ、エアコン無しの部屋で交渉したのに、同じ料金で全部ついた部屋に通してくれた。しつこく言うが、ブラジル人は良い人が多いのだ。

 というわけで、今日は6日ぶりのホテル泊。中庭で夕食を料理し、食べる。ウメさんの持っていたガソリンストーブが壊れてしまったので、私が日本から持ってきたオプティマスの8Rが大活躍だ。ただし先日、3人分のスパゲティを茹でようとガンガン最大火力で使い続けたら、ガソリンタンクの圧力が高まりすぎて、フタについている安全弁があっけなく作動してしまった。一度安全弁が開くと、確かフタを換えないといけないそうなのだが、今はその弁に詰め物をして使っている。まあ、爆発はしないでしょう。

 夕食後は、これも6日ぶりにパソコンを立ち上げ、日記を打つ。さっき、ボニートの町中でインターネットカフェを発見したのだ。うまくいけば明日、ネット接続ができる。


出費         なし
宿泊         Pousada Casa Verde


2000年9月23日(土) 一日パソコン(Writing diary all day)

 本当は今日、川をシュノーケルで下るツアーに参加する予定だったが、 エアコンの効いたホテルの部屋が予想を上回る快適さで、午前中はずっと日記を打ちつづけた。
 午後、町のツアーエージェンシーで明日のツアーに予約を入れ、昨日発見したインターネットカフェへ行って見るが、あるのは看板だけでもう閉店したらしい。町でもう1ヵ所インターネットが出来るというホテルへ行くと、1台だけあるパソコンから電話線を引きぬいて貸してくれた。ホテルのIDとパスワードを借りてダイヤルアップするが、土曜の午後は混むそうでなかなか繋がらない。20回ほどリダイヤルしてようやく繋がったが、速度はまあまあだった。メールを22通、受信する。
 ホテルに戻ったあとも、ひたすら日記を打ちつづける。日記がたまってしまうのも牛次郎での生活の宿命だ。明日はツアーで早起きしなければならないのに、結局日記が打ち終わったのは夜12時ごろだった。

 明日はボニート名物、川下りだ。久々のシュノーケリング、とても楽しみなのである。


出費                     3R  ビール、ジュース
            5.3R  昼食(ピザ)
            2R  インターネット
計        10.2R(約600円)
宿泊         Pousada Casa Verde
インターネット    Hotel Sao Jorge


2000年9月24日(日) ブラジルの「青の洞窟」(The blue lake cave)

 今日は午前中は「青の洞窟」、午後は「スクリ川」をシュノーケリングで下るという観光の一日のはずだったが、強い雨が部屋のドアをたたきつける音で目が覚めた。昨日まで雲一つ無い天気だったのに・・・。
 「青の洞窟」行きのツアーの集合時間は朝7時40分。その10分前に宿の前の公衆電話からキャンセルの電話を入れるが、「今さら何をいうのだ。待っているから早く来い」という、冷たくも当たり前の対応。 仕方なく、眠い目をこすりながら集合場所のツアー会社まで牛次郎で行く。
 ボニート発の各ツアーは現地までの移動手段が含まれていない。ツアー参加者は自分の車にガイドを乗せていくか、タクシーに乗らねばならない。我々もツアー会社で案内してくれるガイドを拾い、約20キロ離れた「青の洞窟」を目指した。可哀想なガイドさん、オンボロの牛次郎で小一時間ほど揺られるハメに。

 「青の洞窟」はボニートの郊外、緑に覆われた丘の下にあった。この鍾乳洞の底には湖(というより池だが)があり、日光の反射でそれはそれは青く見えるらしい。何でも、本家イタリアの「青の洞窟」より美しいのだそうだ。他の車でついてきた別の観光客たちと15人ほどのグループを形成し、ガイドを先頭に洞窟へ。
 相変らず雨は降ったり止んだり。気温も肌寒い。それでも蚊や小さな羽虫がたかってきてうっとうしい。手で払いながら、洞窟の斜面に設けられたすべりやすい階段を慎重に下っていく。洞窟の直径は2、30メートル、深さは40メートルくらい。下りながら、ガイドはおそらく洞窟の形成された過程などを説明しているらしいのだが、何しろポルトガル語なので全然わからん。
 下るにつれ、底の湖が見えてきた。天気が悪いにもかかわらず、確かに水は真っ青。これが晴天なら、もっときれいなんだろうな・・・。写真を撮りまくるが、暗くてなかなか青く写ってくれない。ウメさんの撮った1枚が一番青いので、ここではそれを載せます。
 湖の深さは4、5メートルほど、水はとても冷たそう。ここで川口浩ならジャブジャブ入っていって奥まで探索するんだろうなあ、そういえばあの人、アマゾンでピラニアに噛まれていたなあ、噛まれたといえば、ムツゴロウさんはライオンに指噛まれたんだよなあ、などどくだらない事に思いを馳せるうちに時間となったので、ガイドとともに地上に上がる。

 以上にて「青の洞窟」のツアーはおしまい。ガイドは現地に残るので、あとは各自で町まで帰ってくれという。しかし、ツアー代金の10レアルをまだ払っていない。どこで払うのかと聞くと、町のツアー会社まで戻って払ってくれという。おいおい、このまま逃げようと思ったら逃げられるじゃん。ブラジル人は良い人が多いが、とくにボニートはとてものどかな町なので、性善説で事を進めているらしい。いいなあ。
 町のツアー会社まで戻ってちゃんと10レアルずつ払うが、午後の「スクリ川」のシュノーケリングツアーはさすがに明日に延期してもらう。こんな寒さで川に入ったら、帰らぬ人になっちゃうって。

 ホテルまでの帰り道、1軒のレストランの前で「シュラスコ」を焼いていた。シュラスコとはブラジル名物のバーベキューというか、スペアリブというか、まあ肉の固まりを串に刺し、炭で豪快に焼く料理なのだ。もうすぐブラジルを出国するが、そういえばシュラスコはまだ食べていない。ちょっと贅沢だが、みんなで食べることにする。
 選んだ肉は、長さ50センチほどの固まりで9レアル(約500円)。写真に写っているのはその半分で、昼食はこの半分だけで満腹になった。もう半分は夕食用に持って帰る。

 ホテルに帰った後は、夕方まで昼寝。久々に早起きしたから、ぐっすりと寝てしまった。
  そして夕方はインターネットをしに町まで行き、夜は残ったシュラスコをかじりながら部屋のTVでオリンピック観戦。女子ビーチバレーの銅メダル決定戦、ブラジル対日本をやっていたが、日本は1セットも取れずに負けていた。残念。同時に男子バレーボールのブラジル対キューバもやっていたが、ビーチバレーを見た後だとコートの混み具合にびっくり。そして、いつのまにかサーブ権があってもなくても得点が入り、1セットは25点先取になっていた。いつからルール変更になったの?


出費                    10R  「青の洞窟」ツアー
            8R  昼食(シュラスコ)
            4R  インターネット
計        22R(約1300円)
宿泊         Pousada Casa Verde
インターネット    Hotel Sao Jorge


2000年9月25日(月) スクリ川を下る(Snorkling down the river Sucri)

 朝起きたら、風があって涼しいものの、青空が広がっていた。これなら念願の「スクリ川シュノーケリング下り」が実行できそうだ。
 ツアーの予約時間は午後1時半なので、午前中は宿でゆっくりしていく。すると、ツアー会社はガイドの不足を理由に1時半のツアーは催行できない、とか言う。ぶーぶー文句言うが、通訳してくれたブラジル人の観光客によると、ここはガイドがいないと何もできないところだから仕方がないという。
 午後3時にまた来い、というので町をブラブラしていると、ツアー会社で通訳してくれたブラジル人が「やっぱり行けるらしいので、ツアー会社に戻れ」と呼びにきてくれた。戻ると、現地でガイドが待っているから自力で車で行けという。簡単な地図を書いてもらい、約20キロ離れたスクリ川までダートを走る。

 現地に着くと、ツアーの発着場所となる事務所でウエットスーツやライフジャッケット、シュノケールの道具を貸してもらい、ガイドとともにいざ川へ。
 川までは歩いて15分ほど。そこまではジャングルの中を通る遊歩道になっており、ガイドは涌き水がでている池などを紹介しながら案内してくれた。
 そしてスクリ川へ到着。途中の遊歩道の湧き水の青さに感動し、写真を撮ったのがアホらしくなるほど本番のスクリ川は美しかった。何でも水は湧き水で、地中をろ過されながら通ってきたために非常に透明だという。そして川の底は白い砂であり、日光とあいまって水を青く見せているのだ。

 10人乗りくらいの小船に乗り、しばしガイドの説明付きで川を下る。スクリ川は幅5、6メートル、深さは最大でも3メートルほどの小川だ。 無数の淡水魚が生息しており、警戒することなしに船のまわりに集まってくる。大きいもので体長40センチほど。水が透明だから、まるで手が届くように見える。
 15分ほど船で下ると、ブイが水面に浮いているところに出た。ここから水に入ってシュノーケリングで下るのだ。準備のできた者から水の中にザブンと入る。

 水に潜ると、口をパクパクさせて泳いでいる魚の様子や、川底の水草らしきものを食べている魚の様子が良く見えた。太陽が出ているので、川底まで照らされて美しい。水族館なんかよりもはるかに美しい自然の小川に、実際に潜る事ができるのだ。何て贅沢なのだろう。
  川はゆったりと流れており、泳ぐことなく流れに身を任せて下る。行程は約2キロ、一時弱の「浮遊」だ。しかし、行程の半分を過ぎたあたりから寒くなった。入った時は思ったより水は冷たくないと感じたが、水温は20度前後、ウエットスーツを着ていても1時間浸かっているのはつらい。途中から歯をガチガチいわせながら下る。

 スクリ川はとても美しかったが、別の川と合流する地点に来て、そこがゴールと判ったときには「ようやく」といった感じだった。もっと気温が高い日なら満喫できたのに・・・。
 元の事務所に戻り、ホットチョコレートと暖炉で体を温める。以上でツアーはおしまい。あいかわらず、「お代は町のツアー会社に戻ってお支払い下さい」。人を疑わんのか、ここの人は。

 寒いのが難点だったが、それは今日は風があって涼しかったから。それを十分すぎるほど上回る感動が、スクリ川にはあった。ボニートの町からは、昨日訪れた「青の洞窟」や今日の「スクリ川」以外にも数々の小川や滝を訪れるツアーが発着する。シュノーケル以外にも乗馬、ラフティング、マウンテンバイクなどのアクティビティが可能だ。
  にもかかわらず、ボニートは外国人にはあまり知られていない。「地球の歩き方」や、私の持っている版の「ロンリープラネット」にも載っていない。町から各方面へ伸びる道も大半がダートで、交通の便も悪い。だから、町にはまだツーリストは少ない。観光地にありがちな、現地の住人がスレているということも無い。ここはハッキリ言ってオススメである(今のうちは)。ここのためにブラジルに来るほどでも無いが、パンタナールに来たついでや、サンパウロから西方面、あるいはその逆をたどるルートを取る場合には、ぜひ加えてほしいスポットなのである。
  でも、いずれツーリストが増えると、ここも変わってしまいのだろうか・・・。


出費                    40R  「スクリ川」ツアー
            0.9R  絵葉書
計        40.9R(約2400円)
宿泊         Pousada Casa Verde