旅の日記

コロンビア・バランキージャ編(2000年6月25〜26日)

2000年6月25日(日) 壊れまくる牛次郎(Troubles of the car)

  さあ、カルタヘナも満喫したし、今日はベネズエラの国境付近まで行こう。明日国境を越えれば、明後日には首都カラカスに着けるだろう。

 張り切って牛次郎のエンジンをかけようとするが、セルは勢い良く回るのにエンジンがかからない。チョークは引いているし、何でだろう?と思ううち、バッテリーも弱まってきた。仕方なく駐車場のおじさんに牛次郎を押してもらうと、一発でかかった。はて?調子でも悪いのかな?と思ったが、今思えばこれが全ての前兆だった。
 カルタヘナの旧市街を出て、北東方面へ向かう道を探すが、今度はブレーキの調子がおかしい。効きがひどく悪い上に、ブレーキをかけるとハンドルが右に大きく取られるのだ。これは、左のブレーキが効いていないに違いない。このままがんばって次の街まで行こうとも考えたが、一回、目の前で急停車したバスに追突しそうになり、やはりカルタヘナで直していくことにする。

 一軒のブレーキ専門店を見つけ、事情を説明すると、店員達はブレーキの分解にかかった。エクアドルでは後輪のブレーキシューしか替えてもらわなかったので、今回は前輪のを新しくしてもらう。またブレーキのマスターシリンダーにも不都合があるらしいので、そこも替えてもらう。
 全ての作業が終わるまで、約4時間かかった。その間、店先や車の中で待っていたが、暑い事この上ない。この暑さはニカラグア以来だ。特に何もしていないのに、ひどく疲れた。

 無事ブレーキは直った。さて、遅れた分を取り戻そうと、カルタヘナを後にする。
 ベネズエラ方面へ向かうと、カルタヘナの次の大きな街はバランキージャ、その次はサンタ・マルタだ。今日はブレーキの件で遅れたから、サンタ・マルタ止まりかな、と思いながらバランキージャまでの約100キロを快調に飛ばす。検問もなく、調子は非常に良かった。
 しかし、バランキージャの街をかすめ、次のサンタ・マルタへ向かう有料道路の料金所を抜けたところで、新たな悲劇(喜劇?)は始まった。今朝直してもらったブレーキが、少し引きずっている感じはしていたのだが、料金所の手前で強くブレーキをかけたら、今までになくブレーキが戻らなくなり、アクセルを踏み込んでもなかなか進まなくなってしまったのだ。
 とりあえず、ここで運転を交代することになっていたので牛次郎を停め、ハンドルをウメさんに譲る。すると、ウメさんがエンジンをかけようとしても、セルがウンともスンともいわない。こりゃ朝、バッテリーを上げ気味にしてしまった後遺症か?でも、あれからしばらく走ったので充電はされているはずだが・・・。
 ブレーキの件はともかく、エンジンがかからなきゃ話にならない。朝のようにみんなで牛次郎を押しがけしようとするが、そこでみんなは気がついた。押そうにもブレーキを引きずっているので、 とてつもなく重いのだ!!ハンドルをKさんにまかせ、男3人で渾身の力をこめるが、平地にもかかわらず牛次郎はほんの少しずつしか動かない。この状況には、さすがに笑ってしまった。押しがけしなきゃならないのにブレーキが引きずっているなんて、何て運が悪いのだろう。
 四苦八苦しているうち、道端の家の人たちが手伝ってくれた。5、6人で押すと勢いがついたが、牛次郎のエンジンはかからない。これは単なるバッテリー上がりではなく、電気系の別のトラブルに違いない。道行く車を停め、ブースターケーブルで繋がせてもらおうとするが、車は全然止まってくれない。しかし、無理も無い。我々だって故障車がいても、止まった試しは無いのだ。
 その時、幸運にも有料道路をパトロールしているレッカー車が通りかかった。事情を説明し、バッテリーを繋がせてもらうようお願いするが、止まった場所がカーブに近くて危険なので、見通しの良い直線まで牽引しようという。
 そうそう、こんな時のためにエクアドルで牽引ロープを買っていたんだよね、と新品のロープを取り出してレッカー車と牛次郎を繋ぐ。パトロールの隊員も、「おお、あのチェーンよりも強く、弾力があって使いやすいというアメリカ製のヤツだろ」と知っていた。さて、レッカー車にゆっくりと進んでもらう。やがて強化ナイロン製のロープが少しずつ伸び、牛次郎も動き始めた。おお、こりゃいいと、どんどん引っ張ってもらう。少し止まりかけ、再びレッカー車は加速した。そこでロープはまた長く伸び、止まりかけていた牛次郎を加速させようと引っ張ったところで、マンガのように「ブチン」という音がして、ロープは切れた・・・。 みんははじめボーゼンとしていたが、さすがに大爆笑した。ロープの袋には「チェーンより強い!」とうたっており、トラクターがバスを引っ張っている絵が描いてある。おい、牛次郎はバスより重いんかい!

 仕方なく、レッカー車に積んであったチェーンで引いてもらう、やはり古来からの鉄は信用できるのだ。直線まで来たところでレッカー車を牛次郎の横に付け、ブースターケーブルで繋げるが、やはりエンジンはかからない。これは本格的な故障のようだ。とりあえず、さっき抜けた料金所にレッカー隊の基地があるらしいので、そこまで牽引してもらう。
 料金所の横にある建物にはレッカー隊の簡単な工場や救急車の駐車場があったが、牛次郎はそこまで引っ張ってこられた。別のレッカー車と再度ブースターケーブルで繋ぎ、セルを回すと、今度は勢い良くエンジンがかかった!おお、復活か、と思ってケーブルを外すと、エンジンはプスンと止まってしまう。再びケーブルを繋ぎ、エンジンをかけて電圧計を見ると、針は0を指している。牛次郎自体、電気を発生していないのだ。これは、ジェネレーター(発電機)のトラブルだ。

 日曜日の夜ということもあり、今からバランキージャの街に戻っても修理屋は閉まっているので、明日までここで野宿することにした。幸い料金所のすぐ横で交通量もそこそこあり、電気も明るく、危なくはない。レッカー隊員も、トイレや水道を使わせてくれて親切だった。いきなりの初ブッシュ・キャンプだが、以外と快適そうだ。
 ますは外でスパゲティをゆで、夕食を食べる。すると、レッカー隊員や道路脇の住人が、「ヘンなチノが野宿している」と、もの珍しそうに集まって見ていた。
 幸い風が出てきたので、思ったりより暑くない。夕食後はすることもないので、しばらくトランプをしていたが、眠くなってきたので早めに牛次郎の中で寝る。
 故障が明日、直れば良いが。


出費                12000P  カルタヘナのホテル代(2泊分)
            1000P  コーヒー2杯
            2500P  昼食(チキン)
            900P  ビール  
計        16400P 宿泊         料金所脇に停めた牛次郎


2000年6月26日(月) 復活!牛次郎(The car strikes back)

  荷物もあったので牛次郎の中で4人寝るの狭そうに思えたが、以外と快適だった。ただ、窓を猪飼さんの蚊帳で覆っていたにもかかわらず、数匹の蚊が侵入してきて、ウメさんを除くみんなを刺しまくった。ウメさんは特異体質なのか、血がまずいのか、なぜか蚊には刺されない。とてもうらやましいのだ。明け方にはあまりの蚊の多さにウメさん以外の3人は目を覚まし、車内の蚊を退治にかかった。蚊取り線香をたいたり、飛んでいる蚊をつぶしたりしたが、5、6匹はいて、どれもたっぷりと血を吸っていた。このあたりはマラリアの危険はそんなに無いが、デング熱はあるらしい。蚊の皆様、血が欲しいならあげるけど、かゆくしたり、病気を持ってくるのだけはカンベンして!

 朝は予想通り、早くから車内が暑くなって目が覚めた。 とにかく牛次郎を直さねばならないので、ウメさんと2人でバスに乗ってバランキージャの街へ行く。
 バランキージャは、最近ラテンアメリカを訪れる旅行者たちを虜にしている女性歌手、シャキーラの出身地だ。私もご多分に漏れず彼女にはメロメロなのだが、まさかこういう形で訪れるとは。
 バスに乗ってバランキージャを目指している時、遠くに新市街らしきビル群が見えたが、自動車修理屋は貧民街の近くに集中することが多い。バランキージャでも市場の近くのガラが悪いところに集まっていた。きっとシャキーラの出身の家はここらには無い。もっと山の手なんだろう。
 バスの車掌に教えてもらった電気系専門の修理工を訪ね、さっそく牛次郎の所まで一緒に来てもらう。症状を聞き、エンジンを見たあと、修理工は一回自分の工場まで戻って別のバッテリーを取ってきた。このバッテリーが無くなるまでは牛次郎は走れるわけで、急いで彼の工場へと向かう。
 工場の前に牛次郎を停め、エンジンからジェネレーターを外して見てもらうと、中のコイルが断線しているという。普通じゃ考えられない故障ばかり起きるなあ。簡単なハンダ付けで直るらしいので、早速やってもらうことにする。直るまで約1時間、牛次郎の中で待っていたが、周辺はマリファナの臭いがしみついたオヤジや、ケンカして血を頭から流している若者などが徘徊していて、やはりガラが悪い。直ったジャネレーターを取りつけると牛次郎は元気良く復活したので、すぐにバランキージャを出発する。

  出発して約100キロ行ったサンタ・マルタでウメさんに運転を交代してもらい、国境を目指す。コロンビア〜ベネズエラの主な国境は二つあるが、我々が通るのは北の海沿いの方。南のククタを経由するルートはゲリラの支配地域を通るし、一般犯罪の面でも危険らしい。しかし、北のルートでも一大マリファナ産地として知られ、ゲリラのテリトリーとなっている山々の近くを通る。
 ちょうどその山間の道を通っているとき、 牛次郎のエンジンが突然止まった。車内に漂う重い空気。今度は何だろうか・・・。
 セルは回るし、プラグから火花も散るので、電気系ではないらしい。とすると、燃料系か?ガソリンはさっきスタンドで5ガロン(約20ルットル)入れたばかりだし・・・と思いながらもタンクに棒を突っ込み、残量を調べると(牛次郎には燃料計などというものは無い)、ありゃ、ガソリンが無い。どう考えても、さっきのガソリンスタンドでだまされた。5ガロンがこんなに早く無くなるわけはないのだ。きっとメーターでもいじっているのだろう。
 予備のポリタンクから給油し、セルを回すが、エンジンはまだかからない。見ると、キャブレーターがガソリンを吸っていない。一回完全にガス欠になり、ポンプが空気を吸ったからだろうか。仕方なくキャブレーターから燃料ホースを抜き、ガソリンを口で吸う。そういえば、エクアドルの修理工もこうやっていたっけ。勢いあまってガソリンを危うく飲むところだったが、無事ガソリンはホースから出てくるまでに至った。そこでホースを元に戻し、セルを回すと、エンジンは元気良く復活!
 一時はまた深刻なトラブルかと思ったが、簡単に直って本当に良かった。こんな山の中(しかも通称マリファナ山脈)でもう一泊野宿、というのだけはイヤだった。

 その後は快調に、国境まで100キロ残したリオアチャの街まで走る。道沿いにあったホテルが手頃だったのでチャックインする。これで、明日の午前中にはベネズエラ入りだ。コロンビアも以外と短かったなあ。2週間弱か。

出費                 2300P  ジュース代
            700P  昼食(ピラフ)
            4000P  夕食(チキン)
            4000P  宿代 
計        11000P 宿泊         Hotel Tico Rico