キトから北上し、コロンビア国境まで行く道はアンデスをぬう険しい道だが、とにかく走りつづけた。街灯などない暗い道で、牛次郎のライトは本当にささやかなものしかついていないが、それでも月が明るかったのでそんなには困らなかった。途中何回か給油したが、燃費を計ると4、5キロ/リッターだった。山道をだから仕方がないか。
夜明けごろまで運転したが、眠気がピークに達してきたのでウメさんに代わってもらう。その後しばらく走ると、坂を下ったところで警察に止められた。何でも、下り坂で制限速度をオーバーしたという。牛次郎はそんなにスピードが出ないはずなのに。難癖をつけられそうになったが、ウメさんが得意なスペイン語でうまくカンベンしてもらった。いいぞ!ウメさん。
朝8時ごろに国境に到着。南米での国境越えは初めてだが、ここの国境はエクアドル側、コロンビアとも建物が綺麗で驚いた。エクアドル側で出国の手続きを済ませ、税関に行って車の出国手続きについて聞くが、国境から数キロ戻ったトゥルカンの街まで行って書類を取る必要があるという。それは面倒なので何とかならないかと相談すると、じゃあいい、というのでそのままコロンビア側へ。
コロンビア側でパスポートに入国のスタンプをもらい、税関に行って車のペルミソをもらおうとしたら、やはりトゥルカンまで戻り、コロンビア領事館で書類を作る必要があるという。フリーパスで通過しているエクアドルナンバーの車が多いので、あれらの車はどうしているのかと訪ねると、何でもカリまでは手続き無しで行けるらしい。カリ以北や、コロンビアから他の国へ抜ける場合に書類が必要らしいのだ。面倒くさいが、仕方がない。パスポート上ではコロンビアに入国したことになっているまま、エクアドルへ戻ってトゥルカンの街へ。
トゥルカンに着くと、すでに車が通行できないよう道の真ん中でタイヤが燃やされていた。しかし、動いている車に対して物を投げるような過激なことは無く、人々はむしろお祭り気分だった。通れる道を探し、コロンビア領事館へ。
しかし、そこでも書類は作れなかった。領事館で作れるのはコロンビアへ入国してエクアドルへ戻る書類のみで、ベネズエラなど第三国へ車両で抜ける場合はコロンビア側の国境の町イピアレスの税関事務所でペルミソを作らねばならないという。何だ、わざわざエクアドルまで不法に戻ってきたのに意味ないじゃん。
再び国境を越え、コロンビアへ。最初の町イピアレスの税関に行くと、ペルミソは無料で発行してくれた。これでエクアドルナンバーの車でもベネズエラへ通過できるらしい。本当は今日中にゲリラ危険地帯を抜けてポパヤンまで行きたかったが、すでに昼過ぎになっていたのであきらめる。かわりに、今日はイピアレスから約7キロ離れたサントゥアリオ・デ・ラスラハスへ行く事にした。ここはホンダ・ゴリラで世界一周中のマサのおすすめで、何でも橋の上に教会が建てられているらしい。
イピアレスを後にしてしばらく進むと、深い峡谷に石造りの橋が架けられ、その上に灰色の美しい教会が建てられている光景が遠くに見えた。おお、これは予想以上にすごいぞ、と思って進み、教会近くの駐車場に牛次郎を停めると、何やらタイヤからシューという音が。見ると、右前輪がパンクしているではないか!今までDRでは24000キロ走ってパンク無しなのに、牛次郎は早くも初日でパンク・・・。トホホの巻、なのだ。きっとトゥルカンで何か踏んでしまったのだろう。
仕方なく、イピアレスまで戻って道端で見つけたパンク修理屋で直してもらう。牛次郎のタイヤは今では珍しいチューブタイヤだが、オヤジはタイヤマシンなどないのに自転車のパンクを直すように軽々とタイヤをはがして直してしまった。そういえば、エクアドルではバスのタイヤを手で交換している人たちがいた。便利な機械がない分、すごい技を持っている人たちがいるのだ。
パンク修理が終わると、再びサントゥアリオ・デ・ラスラハスへ。駐車場に牛次郎を停めて急な坂を歩いて降りて行くと、さっきはるか上から見えた教会はあった。V字の峡谷の底には川が流れており、架けられたアーチ構造の橋の高さは45メートル。教会はその上に今世紀前半に造られ、祭壇はむき出しのがけがそのまま利用されている。この旅では大小さまざまな教会を見てきたが、ここの美しさは文句無しにナンバーワン。よくもこんな所に教会を建てたなあ。わざわざ寄り道してきたかいがあった。マサ、教えてくれてありがとう。
教会の近くで昼食を食べ、再び走り出す。今夜はゲリラ危険地帯の入り口、パストの町に泊まる事にした。パストから北へ約230キロ離れたポパヤンまでの間が、ゲリラが出没する可能性が高い危険地帯なのだ。ここは明日の午前中に走ろう。
パストへ着いたのは夜7時ごろ。偶然入ったガソリンスタンドの裏に24時間営業の駐車場があったのでそこに牛次郎をを預け、近くの適当な安宿にチェックインする。夕食を近くの食堂で済ませた後、夜は日記でも打とうかと思ったが、眠くてそのまま寝てしまう。昨夜はウメさんが運転している間に車の中で仮眠しただけなのだ。眠いはずだ・・・。
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