旅の日記

メキシコ・メキシコシティ編最終章(2000年2月16〜19日)

2000年2月16日(水) 労働の報酬(Going to a Japanese Restaurant)

 朝まで撮影で起きていたので、目が覚めたのは午後遅くだった。昨日途中で終わった麻雀の決着をつけ、夜は日本食レストラン「ナガオカ」に5人で食べに行く。我々は別に旅の資金が足りなくてエキストラの仕事をやった訳ではない、経験のためだ。よって、入ったギャラはパーッと使ってしまおうということになった。旅に出る前は品川区在住2年、江戸っ子は宵越しの金は持たないのだ。
 「ナガオカ」まではバスで20分ほどの道のりだった。メキシコでも最も栄えている通りの一つ、インスルヘンテス通りを南下し、ホテル・メヒコの近くで降りる。その先の路地を右に曲がると閑静な住宅街になり、「ナガオカ」はその真ん中にあった。店の前では割烹着を着たメキシコ人が「いらっしゃいませ」と日本語で迎えてくれた。前庭には竹なんぞが植えてあり、燈篭が置いてある。こりゃ高級そうだぞ。
 しかし、中の造りはシンプルだった。座敷があるかと思ったらテーブルと椅子のみ。ソバ屋みたいな感じだ。わざとらしく壁にかかっている書や日本画がみんな微妙に斜めになっているのが悲しい。我々は2階の小さな部屋に通された。
 さて、メニューを見る。我々の目的は「和定食」。いろんなオカズとご飯、味噌汁がついて86ペソ(約900円)。他の一品料理を見ると、以外と安い。丼ものや麺類は4、50ペソ台で食べられる。こりゃまいった。早めに知っていればもっと来れたのに。シティにいる間にもう一回くることを心に誓い、初心貫徹、和定食をオーダー。
 まずはタコの酢のものが出た。酸っぱさが足りなかったが、それでもメキシコでこの味なら満足。その後にマグロと鯛の刺身、ヒレカツ、エビ3本と野菜の天ぷらというメインとご飯、味噌汁、漬物がならんだ。どれも味はちゃんとしていておいしい。一緒にいたタケバ氏曰く「これを日本のファミレスで食べたら『にぎわい御膳』みたいな名前で1800円はとられるぞ」。一堂、納得。
 飲物はビールで始まり、あとから冷酒を注文した。日本酒は熱燗でも冷酒でも対応できるようにはじめから冷えてはおらず、ビンは氷水の張ったワインクーラーに入って出てきた。みんなはちゃんと冷えるまで大人しく待とうと思ったが、待ちきれないジャマ氏(山ちゃん)は「これ、回すと早く冷えるんですよね」と、一生懸命ビンを回していた。メインの料理を食べ終えたころにようやく冷え、みんなで少しずつ飲む。アメリカ産の「大関」だが、けっこうな辛口でまあまあ美味い。しかし、久しぶりの日本酒は効くなあ。
 久美子はそのままみんなとビリヤードへ出かけていった。私はアミーゴへ帰り、ホームページの更新。またも夜更かししてしまった。出発が近いので朝型に直さなければ。

本日の走行距離     0キロ(計16367.5キロ)

出費             25N$ 菓子、ホットドッグ
                11N$ バス、ペセロ代
               250N$ 夕食(ナガオカ)
                15N$ ネット接続
計             301N$

宿泊            ペンションアミーゴ



2000年2月17日(木) 600ドルを返せ(Going to the immigration office)

 昨日タケバ氏へ説明していて、メキシコへ入国した際にとられたバイクのデポジット600ドルのことを思い出した。クレジットカードで支払ったので、法律も無くなったことだし引き落としはされないのでは、と淡い期待もあったが、先日ちゃんと引き落とされていた。タケバ氏はシティにいる間にイミグレ(入国管理事務所)にでも行ってちゃんと返してもらえるか調べた方がいいのでは、とアドバイスしてくれたので、今日は朝一番でイミグレへ。
 イミグレまでは地下鉄とバスで30分ほどかかったが、受付のオバさんに「車のペルミソのことで来たんだけど」と説明すると、メトロのイダルゴ駅の近くにそういう事に関するオフィスがあるのでそっちに行け、と住所を渡された。イダルゴ駅ってアミーゴの隣の駅じゃん。振りだしに戻る。
 指定された住所に行くと、陸運事務所というよりは大きな役所だった。受付で教えられたとおりに広い敷地内を歩いていくと、税金関係の部署に出た。そこら辺でブラブラしていた係官を捕まえて聞いて見ると、親切にも偉そうな人のところまで案内してくれた。で、その偉そうな人によれば、やはりグアテマラへ越境する際に国境の銀行で現金で返されるらしい。ドルで、とは言っていたが、それは信用しないことにしよう。ペソでも戻ってくればいい。そして何かあったときのために担当の人の名前と電話番号も教えてくれた。これでちょっとは安心した。
 午後はまた「ナガオカ」に。昨日「冷やし中華」がメニューにあるのをチェックしていたのだ。しかし、いざオーダーするとシーズンでないので無いという。非常に残念。結局カレーうどんと冷麦を注文した。(なんで冷やし中華はないのに冷麦はあるんじゃい)
 アミーゴへ帰ってから、近くのバイク屋へタケバ氏と二人乗りで行った。同氏のKLRのスターターリレーがイカれたので、それを注文するためだ。アミーゴのすぐ近くにあるこのスズキのディーラーはメキシコでも信頼のおける所みたいで、店内もきれい。世界最速というバイク「隼」が展示してあった。こっちで買ったら高そうだな。アライのヘルメットだけでも6000ペソ(6万円強)だったし。
 夜、明日はみんなでシティ郊外のトゥーラ遺跡へバイクで行こうということになった。7人で4台のバイク、ちょっとしたマスツーリングだ。これが最後のイベントになるぞ。

本日の走行距離   14.4キロ(計16381.9キロ)

出費             18N$ ペセロ代
                 3N$ メトロ代
             36.89N$ 夕食の買物
               135N$ 昼食(ナガオカ)
計          192.89N$

宿泊            ペンションアミーゴ



2000年2月18日(金) トゥーラの戦士の像(Touring to Tula)

 今日は久しぶりに観光&ツーリング。目的地はメキシコシティの北60キロにあるトゥーラ。メンバーはタケバ氏カワサキKLR650と後ろにジャマ氏、リーさんBMW−R100GSと後ろにチョコボール高橋氏、広さんスズキDR350、そして我々の4台7人。タケバ氏のKLRが押しがけでないとエンジンがかからないので、出発前からいい運動をした。そして朝10時にアミーゴを出発。
 まずは途中にあるピラミッドに立ち寄る。まわりがヘビの像で装飾された小さなピラミッドだったが、なぜかまわり一帯が糞臭いので早々に立ち去る。トゥーラへ行くのには有料道路を通らねばならないが、その手前の町の市場で昼食を食べた。そして有料道路に入るが、走る区間は10キロもない。すぐに降り、そこからトゥーラまでは30キロちょっとの田舎道。有料道路に入ったところからBMWと私のDR800のペースと、KLRとDR350のペースが違うので二手に分かれたが、先に行った我々が午後2時ごろに到着して5分もたたぬうちにタケバ氏らはやってきた。
 トゥーラは10世紀ころから発展したトルテカ文明の中心地だったところ。遺跡は小規模で出土品の多くはシティの人類学博物館に持っていかれているが、見所はピラミッドの上に4体並んだ「戦士の像」。高さは4メートル以上もあるが、これはかつてはピラミッドの上に築かれた神殿の柱だったらしい。4体のうち2体は複製品になっているが、それでも青空にそびえる勇姿はとても絵になる。
 トゥーラは軍事色の強い文明で、生贄をささげる儀式も盛んに行われていたそうな。何でも生贄をささげないと太陽が昇らないと、本気で信じていたらしい。生贄は戦争の捕虜がなったというから、生贄を得る目的でも戦争したんだろうな。トゥーラの博物館には生贄の心臓をのせる石の台が展示してあった。ピラミッドの上の神殿では生贄の心臓を生きたまま取り出し、この台に乗せて神にささげたらしい。心臓を取り出した体は、そのままピラミッドから落として捨てたという。恐ろしや。
 タケバ氏が前回来たときには日曜日だったので大変な数の観光客が像のまわりにいたというが、今日はまばらだった。しばらくブラブラしていると、ピラミッドの上は完全に我々だけになった。そこで、みんな好き勝手に写真を撮りまった。リーさんなんか像の前にある高さ3メートルほどの石柱に登り、てっぺんで座禅を組んでいた。見られたら怒られるだろうなあ。
 行きの高速が短い割に高かったので、帰りは下の道で帰った。しかしラッシュアワーと重なり、渋滞の中、眠った久美子を背負ってスリ抜けするのに大変疲れた。結局アミーゴに戻ったのは午後7時ごろ。ひさしぶりにマトモな距離を走った。
 夜食を食べたあとはなぜかみんなでボーリングへ行く事に。アミーゴから歩いて20分くらいのところにそのボーリング場はあったが、最近できたらしく、大変きれいでレーンもピカピカ、スコア計算もコンピューター式だった。熱海ボウルや青葉台ボウルなんかよりもずっとキレイだぞ。ただし、日本並みに料金も高いが。2ゲームやり、1ゲーム目は149を取ってトップだったが、2ゲーム目は疲れが出てボロボロだった。
 アミーゴに戻って軽くビールを飲んだが、疲れと喉のかすれで早めに眠る。明日はアミーゴで過ごす最後の日だ。

本日の走行距離    193キロ(計16574.9キロ)

出費           80.5N$ ガス代
                37N$ 昼食(定食)
                50N$ 高速代
               136N$ ボウリング代
                15N$ 夕食(ハンバーガー)
             18.10N$ ビール
計           336.6N$

宿泊            ペンションアミーゴ



2000年2月19日(土) 最後の晩餐(The Last Dinner)

 我々がペンションアミーゴにやってきたのは昨年の12月19日。今日でまる2ヵ月になり、そして今日がアミーゴで過ごす最後の日だ。
 必要なものは揃えたし、パッキングはどうせ明日の朝にならないと出来ないので、日中は日記を書いたり、アミーゴに払う宿泊費を銀行から降ろしたりしてゆっくり過ごした。久美子は芸人ホリグチさんの髪の毛を切ってあげ、代わりに髪の毛を染められていた。ベットリとしたヘアカラーをつけた髪は自在に髪型が変えられ、アンテナのようにまっすぐ上に伸ばしたり、扇のように広げたりして遊んでいた。
 そして最後の晩餐は久美子のリクエストにより、スキヤキということになった。思えば、最後にスキヤキを食べたのはアメリカ・タホー湖のジェフの別荘だ。懐かしいなあ。
 アミーゴの中庭には卓球台が出され、その上にキャンプ用ストーブが3っつ用意された。そして五関家(久美子の実家)秘伝の割り下が用意され、3っつの鍋に分かれていざ食わん。しかし、その時である。Nちゃんという不思議な雰囲気をもった女の子がメキシコ人の友達二人を連れてきて、みんなに紹介したのだ。しかし、スキヤキができるのを首を脱臼するほど長くして待っていたみんなは、目もくれず鍋の肉に突進。おあずけを食っていたドーベルマンに肉の固まりを与えたような、またはピラニアの河に小錦が落ちたような、すさまじい光景だ。「みんな、聞いてよ」とNちゃんは怒っていたが、メキシコ人の友達も日本人がいかにスキヤキが好きか分かったことだろう。
 食後はそのまま飲み会に突入。今まで毎晩、あたりまえのように続いていたこの雰囲気も今夜が最後。明日からはまた淋しくなるなあ。

本日の走行距離       0キロ(計16574.9キロ)

出費              5N$ 昼食(タコス)
                 5N$ みかん1キロ
                 6N$ ライム500グラム
                 6N$ メロン1個
                50N$ 夕食(スキヤキ)
             28.20N$ ビール
              1330N$ 宿泊費(1月31〜2月19日)
計         1430.20N$

宿泊            ペンションアミーゴ