バイクの輸送  

日本・千葉〜カナダ・バンクーバー編(1999年8月3日〜9月9日)

 海外ツーリングで頭が痛いのが、バイクをどう日本国外に持ち出すかということです。
 最近では海外でバイクを購入し、ツーリングの終了後に売るなどして処分してくるケースが増えてきていますが、世界一周のようにいくつもの大陸をまたがる長期のツーリングでは、まだ日本から持ち出して日本へ持ち帰る、というのが主流です。
 
 この「日本へ持ち帰る」というのがミソというか、日本から持ち出す条件になってくるのです。どういうことかと言うと、バイクに限らず何らかのブツをある国に持ち込もうとすると、関税がかかります。この関税が国によっては(とくに途上国など)バカ高く、バイクに対して100%以上の関税を要求してくる国もあります。つまり50万円のバイクをその国に持ち込むだけで、税関で50万円以上の税金を支払わなくてはならないのです。その国が恐れているのは、「こいつはこのバイクをうちの国に持ち込んで、売るつもりではないのか」ということなのです。
 国境を越えるたびにいちいちこの関税を払っていたら、いくらお金があっても足りません。そこで登場するのが「カルネ」という書類です。これは「売るつもりでなく、ただ一時的に持ちこむだけですよ」ということを証明してくれるものです。だから、持ちこんだ時と同じ状態でその国から持ち出す、というのが条件になります。カルネを使用して通関しても、万が一その国から持ち出すことができなかったら、あとから関税が請求されることになります。だから故障しようが、バラバラになろうが、日本へ持ちかえらなくてはならないのです。やむを得ない場合は持ち出せなくてもOK、ということもあるようですが、最近では盗難でも「やむを得ない場合」と認められないことの方が多いそうです。
 
 この「カルネ」を発行してくれるのはJAFです。ただし、このカルネ発行までには、本人と連帯保証人の印鑑証明や旅行計画書、スペアパーツリストなど大量の書類を用意せねばならず、また時間もかかります(遅くとも出発の2ヵ月前位から準備が必要です)。また、通過する予定の国のうち、最も関税率の高い国に輸入する場合の関税と同額の現金を保証金としてJAFに預けなければなりません。私の場合は\750,130でした。これは、この金額の3%を掛け捨ての保険料として支払うことで免除されますが(カルネ保険)、保証金は何もなければ戻ってきますので、私は現金で預けていくことにしました。だって今のご時世、銀行に一年預けたって3%の利子はつきませんから。
 カルネの有効期間は一年ですが、海外にいながらも代理人をたてて再申請することが可能です。

 カルネに関しての詳しい説明はここでは割愛させていただきます。詳しい取得方法などは、今回私がバンクーバーまでのバイク輸送をお願いした千葉県のショップ「タービュランス」さんのホームページに載っています。タービュランスでは、海外ラリーなどで蓄積されたノウハウを生かし、バイクを安く海外へ輸送するサービスを行っています。代表の石井さんが親切に相談にのってくれます。

自動車・オートバイ関係よろず屋「タービュランス」のホームページ

 
 ここでは、1999年8月3日にタービュランスで行った船積みのための梱包の様子を紹介しましょう。



 下準備としてガソリンを抜き、バッテリーの端子を外します。オイル類は抜く必要はありません。ミラーを外し、ナンバーを国際ナンバープレートに換えておきます。
 そして鉄パイプで組んだパレットの上にDRを載せ、4本のタイダウンベルトを使用してしっかりと固定します。サスはかなり沈んだ状態になり、巨大なDRも小さく見えます。
 空いたスペースにサイドケースやスペアパーツを載せます。雨にさらされることもあるので、それぞれビニール製のゴミ袋に入れ、防水対策をしておきます。サイドケースの中にはテントとヘルメットを入れました。

 ヘルメットはカビが生えることがあるので船に積まない方がいいらしいのですが、二つも手荷物で持っていくのは面倒なので同送することにしました。
 最後に全体をビニールで巻き、「サナギ」状態にします。これで完了です。作業時間は一時間ちょっと。ハンドルを外したり、フロントホイールを外すなどの面倒な作業は一切無しです。バンクーバーではビニールとタイダウンを外し、ガソリンを入れればすぐ走り出せます。
 


 次はカナダでの受け取りの様子です。
 まずはタービュランスから指定されたシュネッカーという運送会社の代表番号へ電話してみます。すると交換台がまちがった担当者へ電話をまわしてしまい、何のことだが分からない、と言われてしまいました。しつこく何回か電話しているうちに正しい担当者に電話が回り、とりあえずオフィスに来いと言われました。
 カルネ手帳をはじめとする書類一式を持ってオフィスへ。すると、そこの目の前にある税関へ行って通関の手続きをしなさい、とのこと。本来なら通関とともに検疫を通さなくてはならないのですが、私の場合はバイクがカナダに着いてからかなり後(2週間ほど)に私自身が受け取りに行ったので、運送会社がしびれをきらして費用を立て替えて検疫を通したあとでした。
 指定されたとおり税関のオフィスへ。カルネを見せると慣れた様子で手続きをしてくれました。時間にしてほんの10分ほどです。あとは税関からバイクが保管されている倉庫へ連絡が行き、バイクを受け取るだけとのこと。保険について何か言われるかと思ったのですが、こっちからたずねるまで、何も言われませんでした。保険についてはICBCという保険会社(公社?)へ電話して聞け、とのことでした。
 税関を通した旨を運送会社へ告げると、倉庫で引き取りの準備が出来るまで待てと言われました。そして2日待ったのち、待望の電話連絡が来て、倉庫まで引き取りに行けと言われました。
 そしてバンクーバー郊外の倉庫へ。書類を見せると、だだっ広い倉庫の中からバイクが置かれているところへ案内されました。荷解きできる場所までフォークリフトで運んでもらい、バイクをパレットから下ろします。そしてバッテリーの端子を接続し、燃料を入れ、セルを回してみます。すると、セルの回りが非常に弱々しく、全く始動する様子がありません。また、私が入れた燃料は宿の近くで安く売っていたホワイトガソリンでした。ずっとホワイトガソリンはガソリンから精製しているから代わりになると思っていたのですが、どうも間違いだったようです。(オクタン価の問題?だれか詳しい人教えてください)
 仕方ないのでホワイトガソリンを抜き、倉庫の方からガソリンを分けてもらって入れてみます。それでもかかりません。バッテリーもいい加減あがり気味になってきました。持参したブースターケーブルでフォークリフトのバッテリーとつながせてもらいますが、セルが勢い良く回ってもエンジンはかかりません。プラグもそろそろカブるだろうと思ったころ、倉庫の人がエアクリーナーのインテークにガソリンを少したらし、これでセルを回せといいます。すると、そこしボボボって感じでエンジンが反応しました。しばらく続けると、ようやく白煙をふきながらエンジンが始動しました。
 やっとのことで宿へバイクで帰り、今度は保険会社に電話しました。考えてみれば、保険に入るのが先でなければならないのですが。すると、ノースバンクーバーの事務所まで書類を持って来い、と言われました。次の日に指定されたオフィスへいくと、担当の方が旅行者のための自動車保険を案内してくれました。アメリカまで有効で、15日間で75カナダドルとのこと。私は米国滞在が許された12月の頭まで一応加入しました。今考えてみれば、もっと短くて良かったのですが。

 これで受け取りの手続きは終了です。カナダでは税関の担当者も、保険会社の人も非常に応対が良く、慣れた様子でした。通関に関するトラブルはほとんど無いと思われます。
 ただし、同時期にカナダへバイクを送った方が税関のストライキで受け取りが非常に遅れている模様です。私はラッキーだったのかもしれません。