旅の日記

アルゼンチン・ウシュアイア編(2001年1月30日〜2月4日)

2001年1月30日(火) 世界の果てに到着!!(Ushuaia, the southern dead end of the world)

 昨夜、雨が降り続いていたので天気を心配したが、朝起きたら見渡す限りの青空だった。まさに往路のラストランを飾るのにふさわしい日だ。朝8時、凛とした空気の中を走り出す。

 100キロほどのダートを一時間強で走り、アルゼンチンとの国境に到着。ここがウシュアイアまでの最後の国境、20分ほどで手続きは終了した。
 ふたたびアルゼンチンに入国すると道は舗装路となった。パタゴニア地方特有の風も無く、120キロほどの速度で気持ち良く巡航する。途中、リオ・グランデという町でガソリン補給&朝ご飯を食べた。何もない寒々とした町で、さいはての地に来た事を実感する。

 リオ・グランデを出てしばらくすると、道はふたたびダートとなった。しかしパタゴニアのダートはよく整備されており、100キロぐらいで巡航できる。前をゆく車の砂ぼこりを除けば、美しい景色を見ながらの快適なライディングだ。

 ウシュアイアまであと20キロ、というところで眺めの良い場所があったので路肩にバイクを停めると、反対側から一人のサイクリストが走ってきて声をかけてきた。
 ローランドと名乗るこのオヤジはベルギー人の62歳(!)、パタゴニアだけだが自転車で回っているという。学校の先生をしていたがリタイアし、今は悠悠自適な生活を送っているらしい。
 ベルギーにも行く予定があると告げると、彼は家に招待すると言ってくれた。何でも彼は小型飛行機を友人と共同で所有しており、行けば乗せてくれるという。おお、それはすごいぞ!でも、ベルギーの先生ってのは飛行機が買えるほど高給取りなのか?
 最後に別れるとき、「君は有言実行の男だよな?」と言われた。そんな事言われると、行かないわけにはいかないじゃん。まあ行くからローランド、待ってて。

 そしてその20分後、峠を抜けると「ビーグル水道」と呼ばれる海峡に面した街が見えた。これが陸路で行ける南米の、そして世界の南の果てウシュアイアだ!!
 長かったなあ ・・・カナダのバンクーバーを出発して465日、36000キロの道のりだった。ここが私の旅の折り返し地点、今までは日本から遠ざかる旅だったが、ここからはサンチャゴに引き返し、ヨーロッパへ飛んで西へ・・・日本へ向かって走る旅となるのだ。
  しかし、最南端という実感は残念ながらあまり沸かない。ビーグル水道の向こう、南側にはすぐ陸地があって南極海をのぞむという訳にはいかない。かねてからビーグル水道と対面したらさぞかし感動が沸いてくるものかと思っていたが・・・まあまあってとこかな?
 けど、ここまで無事到達できて良かった、良かった!

 ウシュアイアの街に入り、さっそく上野邸を探す。ウシュアイアには上野さんという旅行者筋では超有名な方が住んでいて、彼の別宅がいわば日本人宿のようになっている。今年で82歳のはずだが、いまだにお元気でいらっしゃるという。
 街外れの上野さんのご自宅に伺うと、上野さん本人はNHKの取材のお手伝いとかで留守だった。そのかわり奥さんが私を出迎えてくれ、そして偶然顔を出しに来た田中さんという車で旅をしているご夫妻の奥さんに先導されて、街の反対側にある宿に行く。
 宿には5人ほどの宿泊客がいたが、この間の汐見荘よりも平均年齢が高く、私がダントツの最年少だった。噂にたがわず居心地の良さそうなところで、予定している1週間の滞在をオーバーしそうな予感がする・・・。

 チェックインした後は街の中心に行ってインターネットカフェを探すが、自分のパソコンをLAN接続させてくれるところが見つからない。仕方なく電話屋に併設されたカフェに行くが、日本語が使えるというパソコンは使用中だった。結局、日本語の読めないパソコンでホットメール経由でメールを拾い、フロッピーディスクに落として帰る。しかし、自分のパソコンで見ても半分くらいは文字化けしたままだった。やり方は間違っていないはずなのだが。
 そして調べてみると、私の契約しているプロバイダー、ニフティで使用できる海外ローミングアクセスポイントの中に、なんとウシュアイアがあるではないか!明日、電話屋からアクセスしてみよう。


本日の走行距離      452.8キロ(計36013.1キロ)

出費                  9.75P   ガソリン
   1P  コーヒー
   11.19P  酒、食材など買物
計       21.94P(約2410
宿泊         上野邸
インターネット    Locutorio


2001年1月31日〜2月1日(水、木) 執念のネット接続(Interneting in the far south)

 31日は早く目が覚めたので、国道3号線の終点にバイクで行ってみる。
  国道3号線はアルゼンチンを南北に貫くハイウェイ。この道の終点こそが陸路で行ける本当の終点であり、そしてそこはウシュアイアの街から数キロほど離れた「フェゴ島国立公園」内にある。朝焼けの中、走りやすいダートを飛ばして目指す。

 朝早く行くと公園の入り口に人がいなくてタダで入れるそうだが、残念ながら今日はいて、入園料5ペソも取られた。仕方ない。
 さらに公園内を15キロほど走ると「ラパタイア湾」というところに行き着き、そして道は終わった。看板には「国道3号線の終点。ブエノスアイレスまで3063キロ、アラスカまで17,848キロ」とある。
 ・・・ここが本当の折り返し地点だ。あまり実感は沸かないが、気持ちを一新するよう努力しよう。

 さて、宿に帰って朝ご飯を食べたあとは、昨日の電話屋に行ってウシュアイアにあるというアクセスポイントへの接続を試みる。
  街の中心にある大きな電話屋にはブースがいくつもあり、その中の一つにパソコンが繋げられるところがあった。早速モデムとダイヤルアップソフトの設定を行い、電話線を繋げて接続してみる。すると、一発で「ピーガーガー」という、あの例の音がしてネットに繋がった!ラッキー!
 しかし、である。回線が極めて不安定で、26通のメールを受信する途中、何度も何度も切断される。その度に再接続を行うのだが、また26通の最初からはじめるので、最初の方のメールは何通も同じ物がたまってしまう。結局、30分ほど粘っても26通全ては受信できなかった。そして、受信を全て終えないと送信もできないシステムにサーバーがなっているので、メールの送信もダメ。ホームページの更新なんて問題外だ。
 あれだけ何回も何回もダイヤルしたので、さぞかし料金はかさむだろうと覚悟したが、なんと料金はタダだという。どうやら、あのアクセスポイントの番号はフリーダイヤルらしい。うまくいかなかったが、タダなら我慢できる。

 31日は適当に買物などして帰り、そして適当にメシ食って適当に酒飲んで、適当に寝た。


  翌日、今度は昨日の電話屋のパソコンにゲリラ的にLAN接続を試みた。この間交渉したときは断られたのだが、それで素直にあきらめるほどカズヒロは人間ができていない。昨日、パソコンのLAN設定をのぞいて見たらうまくいきそうだったので、今日はLANカード持参で赴く。
 電話屋に併設されたカフェのパソコンはコイン式で、パソコンの隣にある機械に1ペソコインを入れると15分使える仕組みになっている。しかしこの機械で制御しているのはキーボードのみで、時間が切れたからといってパソコン本体の電源やLANのシステムまで落ちることはない。
  パソコンの背面を見るとLANコードはフツーにはめられているだけなので、こっそり外して我がVAIO君に繋げる。コイン式なのでカフェ内に店員がいないのも幸いした。
 ・・・そしてLANの設定を行って再起動すると、一発でネットに接続!回線速度は遅いが、切れると言う事はさすがに無い。メールの送受信、HPの更新を行って幸せになる。構造上、コインを入れなくてもいつまでも使えるはずなのだが、さすがにそれは罪悪感を感じるので使っている間はずっとコインを入れつづけていた。

 無事のネット接続を祝い、宿に帰って上野邸名物「五右衛門」風呂に入る。
 天然資源に恵まれているウシュアイアでは電気やガスが「余っている」といい、この風呂も24時間、ガスで沸いている。入るときに水でうめるのだ。
 湯加減の調整にはコツが必要だが、久しぶりの湯船は気持ち良かった。身も心もサッパリする。今日2度目の幸せ。

 夕食は上野さんが「余った」といって持ってきたタラバガニを食べた。今日3度目の幸せ。さて、明日はどんな幸せが待っているだろう?


2日間の走行距離        98キロ(計36111.1キロ)

出費                     5P   国立公園入場料
   7P  インターネット
   8.68P  食材
   11P  絵葉書&切手
計       31.68P(約3490
宿泊         上野邸
インターネット    Locutorio


2001年2月2〜4日(金〜日) こたつの中の日々(Life in far south)

 上野さん家はこたつのようだ。
 日本は異常気象で大雪だそうだが、ここウシュアイアも異常気象。真夏などいうのに雪が降っており、こんなことはこの地に住んで20年の上野さんでも初めてだそうだ。
 外が寒いので、暖房が効いて暖かい上野さん家がますます快適に感じる。この3日間はスーパーマーケットとインターネット屋ぐらいしか出かけなかった。しかし、それでも有意義な日々だった。

 今年82歳になる上野さんの話は、聞いていてとてもタメになる。少々長いとの意見もあるが、太平洋戦争に従軍し、そして日本を離れ、国にも組織にも頼らずに自分の力だけアルゼンチンで生きてきた体験談は、ウシュアイア一番の名物だと思う。
 ウシュアイアにはいろんな旅人が来る。バスや飛行機で来た者、自転車で走ってきた者、バイクで来た者、リヤカーを引っぱって歩いて来た者・・・そして、みんなが行き着く所が上野さんのところだ。それぞれ長旅の中でいろんな経験をしてきたろうが、上野さん家にある「思い出帳」には「ウシュアイアで上野さんに会ったのが一番インパクトがあった」と書く人が多い。
 旅をロールプレイングゲームに例えるなら、上野さんは主人公に知恵を授けてレベルアップさせる仙人のような人だ。「ウシュアイアで上野さんに会ってレベルが1アップ!」みたいな・・・。(あるいは最後のボスキャラかもしれない)


3日間の走行距離        20キロ(計36131.1キロ)

出費                 26.63P   食材、酒など
   7P  インターネット
   10.5P  ガソリン
   3.02P  ノート、ペン
計       47.15P(約5190
宿泊         上野邸
インターネット    Locutorio
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