今日は遅めに出発するというクリスに見送られて、アントファガスタの宿を出発する。電子メールが大嫌いだという彼だが、別れ際、アドレスを紙に書いてくれた。でも、これを使わないでもまた会える気がする。
ふたたびパンアメリカン・ハイウェイを南下する。
相変らずアタカマ砂漠の中の一本道。考えて見ればチリに入国してから約1500キロ、ほとんど景色が変わっていない。なんか変わった事はないか、と思って先を見ると・・・あった、道路脇に。ただし大きな手のモニュメント、まるで孫悟空が飛び回っていたのはお釈迦様の手の平の上だったというあのエピソードのようだ。あれだけ一生懸命走ったのに、「はい、まだまだですよ」と言われているみたいで空しい。実際、次の目的地ビーニャ・デル・マルまでもう1500キロはあるのだ。
それでもめげずに走ると、クリスが教えてくれたパン・デ・アスーカルという国立公園の近くまで来た。ここでは野性のペンギンなんかが浜で見えるらしい。どうせビーニャまで3日間に刻んで走ろうと決めたところなので、ちょっと寄ってみることにする。
公園の入場料3500ペソは高いが、「ペンギン、ペンギン」を口ずさんで公園内のダートを走る。入場ゲートの感じのいいおじさんは、9キロ先に色んな施設があると教えてくれたのだ。
やがて白い砂浜と海の家らしき建物群が見えてきた。ここらへんか、と思って駐車場にバイクを停めようとすると、たいへん嫌な感じのオヤジが近づいてきて「あそこに停めろ」とか「いやここだ」とかうるさい。バイクを下りれば頼んでもいないのにペンギンツアーのガイドを引っ張ってきて、申し込めなどという。だいたい公園の職員なのか海の家の人なのかもよくわからない(格好は汚い)。まわりにいた水着の観光客もガラが悪く、珍しい日本人をニヤニヤと好奇の目で見ている。ちょっとイヤな気がした。
ツアーに参加するかしないかはわからないので、とりあえず周辺を散歩する事にする。そして10分後、バイクに戻るとシートが砂まみれだった。きっと、砂のついた水着のまま誰かがまたがったのだろう。そしてハンドルには濡れたシュノーケルが干してあった。近くにいたあのオヤジは「何か文句があるのか」みたいな目で見ていた・・・。
頭に来た。どうせペンギンは南に下れば見られるのだ。こんな公園、ちっとも居たくない。入園して30分もたたぬまま、写真の1枚も撮らぬまま、すぐに出る。そしてまた南下をはじめた。
30分後、やはりクリスが教えてくれた「フラメンコ海水浴場」に到着した。まだ日は高いが、ここなら雰囲気も良さそうだ。キャンプ場があったのでそこにテントを張り、海を見に行く。
青く澄んだ水だが風が冷たい。海に入る事はせず、岩からただボケーっと波の行き来を見ていた。
午後9時ごろ、ようやく暗くなったのでレストランで夕食を食べ、テントに帰って寝る仕度を始める。星がきれいだった。潮騒を聞きながらのキャンプもいいが、1人だと夜やることがなくてちょっとヒマだ。
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