旅の日記

チリ・アリカ編(2001年1月7〜9日)

2001年1月7日(日) 試練のアンデス越え(Going down 4667m in 4hours)

 朝食を食べてからオルーロを出ようと思ったのだが、外に食べに行くのが面倒なので、そのまま出発する。今日の目的地はチリ最北端の都市アリカ。ラパスへ向かって120キロほど北に戻り、そこで西へ折れ、アンデス山中にある国境を越えて太平洋まで下るのだ。
 寒くなるだろうと予想して今日は下のカッパまではいたが、オルーロを出てしばらくは青空が広がり、暖かかった。パタカマヤという町で西に折れ、チリとの国境を目指したあたりから厚い雲が覆い始め、ときおり小雨が降った。なに、チリ側へ渡ればすぐに晴れるさ、と思った。しかし、それは甘い考えだったことが後でわかる。

 チリとの国境の手前に、奇岩がゴロゴロしているエリアがあった。何の看板もサインもなく、特に観光地という訳ではなさそうだが、けっこう奇抜な形の岩々が見られた。これはちょっと寄り道する価値があると思い、バイクを道路脇に停めて写真を撮る。まるでアメリカのアーチーズ国立公園の小型版だ。

 オルーロを出発して約3時間後、国境に到着。ボリビア出国、チリ入国とも全く問題なし。もしかしたら手数料とか言われるかもしれないと思ってボリビアの通貨を少々残していたが、必要なかったので全てガソリンに換える。世界一のコカの葉の産地ボリビアを出国する際は普通、荷物検査が厳しいが、今回はまったくフリーパスだった。

 ボリビアとチリの国境事務所は数キロ離れているが、その中間くらいに「4667mの峠」という看板があった。今までバイクで走った最高の高さ、そしてこれからの旅でもこれ以上は無いだろう。峠からは、雲に覆われていたが、万年雪を被った6000メートル級の山々が遠くに臨めた。これでしばらくアンデスともお別れだと思った。

 しかし、本当のアンデスの洗礼はチリ側に入ってからだった。国境ですでに大粒の雨が降っていたが、太平洋に向かって下ればすぐに止むと思った。しかし、行けども行けども高度は下がらず、むしろ雲がより厚くなって寒くなってきた。
 ヘルメットのシールドが曇り、前が良く見えない。それにしても何かタイヤが滑るなあ、と思って路面を良く見ると、なんとみぞれが10センチほど積もっている。気付かず、時速100キロ以上で走っていた。くわばら、くわばら。
 雨だと思っていたのも実はヒョウで、体中に白い氷がへばりついていた。寒いというより、全身が冷たい。こりゃダメだ、と思って適当な建物を見つけて雨宿りならぬヒョウ宿りをしようと思ったら、そこは警察署だった。
 チリの警察とは牛次郎で旅したときに接したことがあり、印象はたいへん良かったが、今回もたいへん親切にしてくれた。バイクを屋根のあるガレージに入れてくれたり、コーヒーを沸かしてくれたりした。おかげで小1時間ほど休憩して温まることができた。

 警察署を後にしてからは霧がひどかった。約50キロもの間、20メートル先がやっと見えるくらいの濃霧に視界を遮られ、のろのろと走るしかなかった。しかもこの間、ところどころで道路工事をやっており、いきなり片側の車線が無かったりするのだ。みぞれの路面を走るのと同じくらい恐い。

 しかし太平洋まであと100キロ、というあたりから霧と雲はうすくなりはじめ、いつのまにか凍えていた体に暖かい風があたるようになった。まわりの景色も荒涼とした岩の砂漠になり、環境が変わったことがマンガのようにはっきりと分かる。

 そしてアリカ着。アリカは太平洋に面し、ビーチリゾートとして知られる街だ。4時間前は4667mの峠にいたのに、もう海面まで下ったのだ。
  アリカの街にはアリカ丘陵という高さ110mに岩山があり、まずはそこにバイクで上って街を見渡す。海沿いの道にはヤシなんかが生えていて、すっかりリゾートしている。なかなか良さそうな街だ。

 バイクの停められる適当な宿にチェックインしたが、シャワー、トイレ付きの若干高い部屋しか空いておらず、しかも断水で両方とも満足に使えない。意味ないじゃん。
 街に出てインターネットカフェに行くが、2軒はしごしたにもかかわらず、うまい具合に接続できなかった。明日、別のカフェを探そう。
 そして夕食は街で発見したマクドナルドに入って久々にビッグマックを食べた。昔アルバイトをしていたこともあって、マクドナルドは結構好きなのだ。


本日の走行距離      538.1キロ(計29138.2キロ)

出費                  82.5B   ガソリン(ボリビア側)
   8000P  ガソリン(チリ側)
   5000P  宿代
   550P  インターネット
   1850P  夕食(マクドナルド)
計       82.5B(約1460

       15400P(1ドル=約560チリ・ペソ、約3025

宿泊         Hostal Venecia
インターネット 忘れた!でもメールの送受信、FTPは出来なかった・・・


2001年1月8日(月) リカさんと再会する(Meeting Rika-san in Arica)

 朝一番で、リカさんのメールに書いてあったホテルに行って見ると・・・いたいた、リカさんだ。予定通り、夜行バスでさっき着いたばかりだという。クスコ在住のリカさんはもうすぐ日本に帰るが、その前にウユニ塩湖を見たかったらしい。しかしウユニ塩湖は今、雨季まっただなか。行っても仕方ないと判断した彼女は、乾燥したチリ側のアタカマ塩湖を見ようと南下してきたのだ。そこで8日ごろアリカに着くというので、メールで待ち合わせをした。それが私がポトシから急いだ理由だ。

 アリカはリゾートなので、とりあえず午前中はビーチに行った。海は残念ながらそんなにキレイじゃないが、白い砂浜に寝っ転がってビールを飲みながら思う存分日光を浴びる。ジリジリと、まるで消毒されるみたい。昨日の今ごろはアンデス山中で氷まみれになっていたのというのに、ここはすっかり夏である。隣は水着の美女である。サザンの世界である。カズヒロ、至福の時。

 昼食後、いったんリカさんと別れて市内のインターネットカフェを回る。昨日の2軒のカフェではFTPがうまくいかず、ホームページのアップロードができなかったのだ。幸い回線速度こそ遅いが、FTPが正常に動くカフェを発見、1時間かかってようやく今年2回目の更新を行う。

 夕方は夕陽を見ようとリカさんとアリカ丘陵に登る。バイクで二人乗りで行こうと思ったが、チリはヘルメットがないと警察がうるさいらしい。市内の自転車屋でインチキなメットを買おうと思ったのだが、昼間が暑いアリカでは商店の営業時間は夜が中心で、なんと夕方6時を回ってもまだ店は開かなかった。しかたなく、歩いて登る。
 7時過ぎに頂上に到着したというのに、陽はまだ高かった。8時ごろまで待ったがなかなか陽は傾かず、ちょっと寒くなったので下る事にした。結局、夕陽が海に沈み、空が真っ赤に染まったのは9時ごろだった。

 自転車屋がようやく開いたので二人乗り用のヘルメットを買い、夕食を食べる。暑いとビールがうまいが、生をジョッキ2杯飲んだらけっこう酔った。
 私もリカさんも、次の目的地は約800キロ南のサンペドロ・デ・アタカマだ。いくらメットを買ったといっても、しょせん自転車用なのでそこまでの二人乗りはキツイ。800キロだと私はイキケ経由で2日の距離だし、リカさんはバスで行くというので、明後日の再会を約束してリカさんと別れ、ホテルに帰って寝た。


本日の走行距離          0キロ(計29138.2キロ)

出費                   350P   朝食(ホットドッグ、コーヒー)
   230P  ビーチまでのバス
   1900P  ビーチでのビール、ジュース
   1400P  昼食(チキン)
   600P  インターネット
   2000P  夕食(魚、生ビール)
   13000P  インチキヘルメット
計       19480P(約3830

宿泊         Hostal Venecia
インターネット Internet Services


2001年1月9日(火) イキケの「ソフリ」("Zorfi" of Iquique)

  チリは今、夏時間を採用している。あまり経度が変わらないペルーよりも2時間時計が進んでいることになるのだが、なんか極端な気がする。だって夕陽が沈むのは午後9時ごろだし、いつもの習慣で8時ごろに出発しようと思って外に出たら、まるで朝日はさっき昇りました、みたいな感じだった。おかげで朝焼けに照らされながら約330キロ南のイキケを目指す。

 ほとんどノンストップで走り、午前中のうちにイキケに到着。港町イキケには「ソフリ」と呼ばれる免税地区があり、大きなショッピングモールがあるそうな。やや苦労して中庭にあるホテルをみつけ、チェックイン後、すぐにそのモールを目指す。
 噂にたがわず、モールは大きな規模だった。家電製品を中心に酒、衣類、おもちゃ、カー用品など色々と売っているが、私の探していた高級エンジンオイルは残念ながら無かった。フードコートで昼食をとり、しばらく店を冷やかしてから街の中心に帰る。

 ホテルの近くのオイル専門店に「モービル1」があったので、早速購入してその場で換えさせてもらう。それにしても1リットル8800ペソ(約1730円)、涙がちょちょぎれるほど高い。まあ、前回の交換からもう5000キロも走っているし、最近ずっとモービル1だし、エンジンのためと思って我慢しよう。

 そのほか、明日行くサンペドロ・デ・アタカマにはスーパーがなく、食料品が高いので自炊用の食材をスーパーで買う。イキケのビーチでは忙しくて行けなかったが、前を通ったときに見た限りでは波が高く、サーファーやボディーボーダーがたくさんいてアリカより賑わっている感じがした。
 私はアリカより色々と買物のできるイキケの方が好きになった。なんたって都会っ子だから。


本日の走行距離      346.8キロ(計29485キロ)

出費                  3500P   宿代
   4048P  食材などスーパーの買物
   26400P  オイル!高い!
   7100P  ガソリン
   990P  昼食(ハンバーガー)
   1500P  夕食(セビッチェ)
計       43538P(約8850

宿泊         Hostal El Turista