旅の日記

ブラジル・マナウス編(2000年7月8〜12日)

2000年7月8日(土) ジャングルの中の都市(The city in the Jungle)

 朝は車内の猛烈な暑さで目が覚めた。まるでサウナだ。みんな暑さと眠さを天秤にかけていたが、とうとう我慢しきれずに起きだし、車外へ脱出した。直射日光のあたる外の方が、まだ涼しいのだ。
 一番早く起き、銀行を探しにいった猪飼さんがツアー会社のスタッフだというブラジル人と帰ってきた。奥さんが日本人だといい、たどたどしい日本語を話す。普通、こういう輩は信用してはいけないが、彼がいいホテルを教えてくれるというので猪飼さんが見に行くと、連れこみでは無い普通の安宿で、駐車場もあったそうだ。それはいいと、みんなでそのホテルへ移動することにする。
 しかし、今朝もエンジンがかからない。カバーを開けてエンジンを見ると、キャブレターを固定するネジが抜けて、フラフラだ。元の位置に手で固定してエンジンをかけると、一発で始動。これが原因だ。とりあえずそのまま、ホテルまで走る。
 ホテルの名前はPensao Sulista、4人部屋を40レアルから30レアルに割り引いてくれた。部屋の天井が高く、雰囲気もいい。駐車場完備、スタッフも親切で、しかも朝食付き。願ってもない宿だ。 チェックインしたあと、ウメさんがキャブレターをネジで固定しなおした。これで問題ないだろう。

  その後、私は一人で航空会社のオフィスを回った。ここから日本へ一時帰国するための航空券を買うためだ。私はNY〜ロンドン間の正規料金のチケット(払い戻しが可能)と、ロンドン〜マレーシア〜日本の格安チケットを持っている。ここマナウスには一応国際空港があり、マイアミなどへ路線があるという。まずはマイアミ経由、ロンドン行きのチケットの値段を調べるが、1440ドル・・・。高すぎる。マイアミまででも521ドルするというのだ。格安航空券が出まわっているエクアドルのキトまででも450ドルだというし、カラカスに至っては直行便はなくなったという。マナウスは航空券を買う場所ではないとは聞いていたが、これほど高いとは。
 そこで、サンパウロまでの国内線の価格を聞いてみた。すると、452レアル(約250ドル)だという。これは、サンパウロまで飛び、そこで日本への往復のチケットを買った方がいいと判断した。どうせ日本での用事が済めば南米へ戻ってくるのだし、一説によると、サンパウロから日本までの往復で700ドル近辺のチケットがあるという。無理してロンドン〜マレーシア〜日本のチケットを使おうとしても、かえって高くつくのだ。今、久美子はNYにいて、近々ロンドンへ飛ぶというが、再会は日本でになる。仕方がない。
 今日は土曜日、正午でどこのオフィスも閉まるというので、とりあえず予約などは月曜日に持ち越す。サンパウロに飛ぶまでの間、アマゾン体験を満喫しよう。

 その後はパソコンを持って、インターネットカフェを探しながらマナウスの街をさまよう。
  マナウスは広大なジャングルの真っ只中にポツンとある都市だが、人口は100万を越える。街は19世紀、天然ゴムで得た富によって繁栄した。一時は世界のゴムの8割を産出し、ヨーロッパなどから一攫千金を夢みた人々が押し寄せたという。今ではかつてのような繁栄はないが、それでもジャングルの中で生きる人々のたくましさで、活気あふれる街となっている。
 我々はまず、宿からネグロ川の方面へ歩いた。ネグロ川は大アマゾンの主な支流で、名前のとおり、黒くて豊富な水量を誇る。川沿いに市場があったのでのぞいてみると、すごい活気だ。特に目を見張るのが魚の売り場。アマゾンから水揚げされた巨大な淡水魚が並び、中にはピラニアまでが売っていた。釣りが楽しみでたまらないウメさんは、期待に胸を膨らましていた。彼がアマゾンまではるばる来たのは、釣りをするためと言っても過言ではない。

 市場の反対側には船着場があった。ここからベレン行きなど、アマゾンを下る船が出るのだ。停泊しているのはどれも小型の客船で、これで5日もかけてベレンまで下るのは面白そうだなあ。時間があればアマゾン下りに参加できたのに。
 船のチケット売り場へ行き、車を載せられる船があるかどうか聞く。すると、ある会社のオフィスを紹介されたが、残念ながら閉まっていた。月曜日まで待つしかないか。
 船着場の裏にある商店街を歩いていると、マナウスに2軒あるというインターネットカフェのうちの1軒を見つける。LAN接続をお願いすると、すぐOKしてくれた。設定すると、一発で繋がった。実にエクアドル以来のLAN接続である。久しぶりにメールの送受信を行う。

 夕方からは日記を打つ。例の事故に遭遇したことを延々と書いているうちに、あっという間に夜は更けた。宿の駐車場で自炊し、夕食を食べる。明日は日曜日、商店もほとんど閉まるだろうから、釣りでもしようか。

出費                    1R  ジュース
            3R  インターネット
            2R  昼食(魚ごはん)
            2R  おやつ(サンドイッチ)
            1R  ビール
計        9R
宿泊         Pensao Sulista
インターネット    Discover Internet


2000年7月9日(日) ミニ・ジャングルツアー(Mini Jungle Tour)

 今日は日曜日、旅行代理店もインターネットカフェもみんな休みだ。午前中はパソコンに向かい、午後から牛次郎で釣りにでかけた。

 我々の向かった先は、昨日宿を紹介してくれたブラジル人が教えてくれた、ネグロ川の支流のポイント。国際空港が途中にあるので、VISAのキャッシングやシティバンクカードでの引き出しが可能かどうか確かめたが、だめだった。昨日街中で何軒かみつけた銀行で試したが、だめだったのだ。明日以降、また別の銀行を探さねば。マナウスでの引き出しはとても不便である。
 さて、教えてもらったポイントの付近まで来るが、どうも道がよく分からない。何度か道を聞いて未舗装路を進むと、川に出た。ここが教えてもらったポイントかどうかわからないが、とりあえず試して見る。市場でもらった魚をエサにウメさんと猪飼さんが挑戦したが、魚がいる気配が全く無い。深いジャングルの中の穏やかな川で、いかにも魚がいそうな雰囲気なのに。
 これはいくら待ってもムダと判断し、腹も減って来たので、おとなしく街に戻る事にする。しかし、牛次郎を停めた場所が砂地の上り坂で、出るときに苦労した。何度もスタックし、その度に坂を降りてやり直した。最後に大きく助走をつけ、後ろのバンパーの上にウメさんが乗って体重をかけたら、なんとか一番砂の深い場所を走りぬけられた。魚こそ連れなかったが、ちょっとした冒険気分を味わえた。

 宿に戻り、向かいのレストランでピザとビールをいただく。今日も汗をかいたので、とてもウマイ。
 その後、私は宿でゆっくりしていたが、ウメさんと猪飼さんは船着場へ釣りに出かけ、しばらくするとナマズを何匹か持って帰ってきた。しかし釣れたのは1匹だけで、あとは人にもらったらしい。
 夜はまたパソコンに向かい、メールを書いた。明日はサンパウロ行きのチケットを買わねば。


出費                    5R  昼食(ピザ)
            0.5R  ジュース
           167.43$  牛次郎費用2回目精算
計        5.5R
        167.43$
宿泊         Pensao Sulista


2000年7月10日(月) サンパウロ行きのチケットを買う(Buying the air ticket to Sao Paulo)

 今日は朝から旅行代理店に行き、サンパウロ行きの国内線のチケットを買った。
 マナウスからだと選択肢は二つ。452レアルのトランス・ブラジル航空と、566レアルのヴァリグ航空。両者の間には約60ドルの料金格差があり、普通に考えれば当然前者を選ぶのだが、後者のヴァリグ航空にはマイレージプログラムがあり、サンパウロから成田までも就航しているので、全部ヴァリグで飛べばかなりのマイレージを稼ぐ事ができる。会員になるのは簡単だというので、ヴァリグ航空のチケットを買う。カード払いがコミッション無しで出来たので助かった。フライトの日付は13日(木)だ。
 しかし、宿に帰ってマイレージプログラムの申込書をよく読むと、最初に特典がもらえるのは20000マイルで、サンパウロ〜成田の往復だけで達してしまう。その次は50000マイル。無理してマナウス〜サンパウロをヴァリグ航空で飛ばなくて良かったかも。ちなみに20000マイルの特典は、片道1000マイルまでの都市間の往復航空券。9月初旬、日本からサンパウロに戻ったときにみんながどこにいるかわからないが、その時に使えるかも。

 その後はインターネットをやり、牛次郎に乗ってショッピングセンターへ行く。ジャングルの真ん中と言うのを忘れるほどモダンで、都会的なところだった。無事VISAカードやCITIバンクカードで引き出せるATMも見つけた。

 午後は牛次郎をアマゾンのはるか下流、ベレンまで運ぶ船を見つけてもらうため、先日宿を紹介してくれたブラジル人のツアーガイドのオフィスへ行く。彼の奥さんは日本人で、彼が空港から戻ってくる間ずっと話をしていたが、興味深い話が聞けた。ブラジルは土地代がバカに安いが電気代や水道代、電話代が日本並みに高いことや、永住権を取るのがどんなに難しいこととか・・・。新しく引っ越したオフィスに空いている部屋が二つあり、シャワーや台所もあるから、日本人宿を作ることをウメさんらと薦めた。彼女のダンナさん、つまり宿を紹介してくれたブラジル人のガイドは、路上で客引きをしている。日本人はまず、そういう輩は信用しないし、宿を作って滞在させれば客の何割かは彼のツアーを利用するだろう。一石二鳥のアイデアだ。マナウスにはいい安宿が少ないから、日本人パッカーのほとんどは泊まることになるだろう。
 夕方になってダンナさんは戻ってきたが、宿の話にはあまり耳を傾けなかった。どうも普通の人が考える「ホテル」と、貧乏旅行者の考える「宿」にはギャップがあり、オフィスの一角で「ホテル」をやるのはピンと来ないようだ。今日はもう船会社も閉まっているだろうから、明日また来るという約束で彼のオフィスを出る。

 帰りは生ビールが飲めるというバーで乾杯。日本では何気なく飲んでいた生ビールだが、久しぶりに飲むとやはりウマい。泡のキメ細かさがまるで違うのだ。ああ、あと10日もすれば日本のビールが飲める・・・(予定)。


出費                566.15R  航空券(カード)
            3.3R  インターネット
           2.5R  ビール
           1.8R  夕食(サンドイッチ)
           2.15R  ボールペン
計        575.9R
宿泊         Pensao Sulista
インターネット    Discover Internet


2000年7月11日(火) のんびり釣りをする(Fishing at the Port)

 今日はのんびりとした1日になった。
 朝、みんなは昨日のガイドのところに行き、船会社を紹介してもらった。ベレンまではまる4日アマゾンを下る長い船旅だが、牛次郎+3人で500レアル(300ドル弱)らしい。ブラジル国内はバスも国内便も高いので、それを考えるとかなり安い。あと2、3日のうちには出られるそうだ。それにしても、悠久のアマゾンに抱かれて何日も船で旅するのは楽しそうだなあ。ここマナウスまで飛ばしてきたが、あと1週間早かったら一緒にベレンまで下るのに・・・。
  その後はインターネットをやり、午後は市場をブラブラしたりとゆっくり過ごした。ウメさんが船着場でナマズを釣りというのでついて行ったが、今日は釣れなかった。帰りにはまた生ビールを飲んだ。夕食は向かいのレストランで世界最大の淡水魚といわれるピラルクーを食べる。白身の魚で、フライにするとウマイ。
 かなり酔っ払ったので、今日はもう酔う日と決め、宿に帰ってからもみんなで飲んだくれる。この愉快な仲間たちとも、あと2日でしばしのお別れとなる。

出費                     3R  昼食(ビッフェ)
            1.5R  インターネット
           3R  ビール
           3.9R  夕食(ピラルクー)
           3R  麻袋2枚
計        14.4R
宿泊         Pensao Sulista
インターネット    Discover Internet


2000年7月12日(水) さよなら牛次郎(Goodbye fiends)

 別れはいつも突然にやってくる。
 今日は午後からショッピングセンターへ行って買物をしていたが、午後4時に明日のベレン行きの船の申し込みをしにいったら、今夜の船に空きがあるので450レアルで運んでもいいという。少しでも安くベレンまで下りたいウメさんたちは、少しあわただしいものの、今夜出る事を決めた。
 ウメさんたちから日本へ持ちかえる荷物を預かり、逆に私も置いていく荷物を麻袋 に入れて預ける。船は夜8時に出るというので、仕度する時間は2時間ほどしかなかった。急いで荷物を片付けると、もう港に向かう時間となった。ゆっくり別れをいう間も無く、ウメさんたちはホテルを後にした。みんな、9月初旬に再会するまで元気で。牛次郎、ちゃんと走りなさいよ。
 4人で泊まっていた部屋は、1人になったらやけに広く感じた。みんな行ってしまったなあ、と思って部屋を見回すと、一つのビニール袋が転がっている。はて?と思って中を見ると、歯ブラシが二つ。明らかにウメさんたちの忘れ物だが、もう届けようが無い。ああ、可哀想なウメ夫妻、船上では歯磨きできず。
 夕食は今日ホテルにやってきた日本人と2人で食べた。明日は私が出発する番だ。


出費                   3.5R  昼食(定食)
            34.8R  CD、CDケース
           3.5R  夕食(ピラルクー)
           75R  牛次郎の輸送代1/4負担
計        116.8R
宿泊         Pensao Sulista