旅の日記

エクアドル・キト編その7(2000年6月3〜7日)

2000年6月3、4日(土、日) 車市(The Car Market)

 さて、いよいよ車市(Feria de carro)が開催される週末になった。来週中には出発したいので、この土、日が車選びの勝負だ。スクレの従業員カルロスに教えてもらったとおり、南へ向かうGuamani行きのバスに乗って市へ行く。
 到着すると、すでにバス通りには会場へ入ろうとする車が列をなしていた。会場といっても一つの広場ではなく、空地の中に縦横に伸びているじゃり道に無造作に車が並んでいるだけ。しかし、大変な車の台数だ。カルロスは600台は出ると言っていたが、あながちオーバーではなさそうだ。

 とりあえず、めぼしい車に手当たり次第声をかける。ボロくはなるが、中古車屋では見つからなかった1000ドル台、2000ドル台の車もある。バンタイプの車を探すが、安いのはアメリカ車。ボンネットタイプのバンなら70年代式のが2000ドル以下で買える。しかし日本車のバンは数も少なく、 相場はやや高め。78年式のトヨタ・ハイエースが2900ドル。さらにボロい77年式の三菱・コルトが2100ドル。80年代、90年代の「まともな」バンは、6000ドル以上はする。
 昼食をはさみ広い会場を歩き回って調べるが、やはりターゲットは 2000ドル台のバンに設定、何台かのオーナーの電話番号を控え、勝負は明日の日曜日に持ち越す。 それにしても、大変疲れた。主催者や仕切っている人がいないので、車の並び方は本当にテキトー。効率よく回ることができないのだ。しかもどういう訳か、並んでいる車がたまに動く。いい車があったと思ったら、さっき向こうで声をかけたヤツだった、というのが何回かあった。

 日曜日はカルロスが同行してくれることになった。昨日は外国人ということで値段を吊り上げた不届きなオーナーもいたので、現地人が一緒だと心強い。
 会場に着くが、昨日ほど賑わっていない。カルロスによれば、今日はキト・マラソンの日なので、みんなそれを見に行っているという。しまった、昨日あれほどあった車の台数が半分近くに減っており、めぼしいと思ったバンもいない。今日が勝負だというのに・・・。
 そんな時、1台のクリーム色の角張ったバンを発見。車高が高く、タイヤの径も大きくてヘビーデューティーな作りだ。値段を聞くと、何と2000ドルだという。みんな俄然、盛りあがる。
 車体は74年式のJEEPのバンだが、エンジンは日産の2000ccが載っている。オリジナルは4WDだそうだが、エンジンの載せ換えにより、残念ながら今は2WD。しかしエンジンの調子はいい。タイヤも一本をのぞき、山はまだある。内装はボロいが、それは適当に改造すればよい。
 すると、カルロスがエンジンの調子を見る業者を呼んできた。会場内には圧縮比を計るゲージも持ったオヤジがウロウロしており、40000スクレ(1.5ドル)でエンジンを見てくれるのだ。ちなみに、交渉屋というオヤジもいる。
 赤い帽子を被ったオヤジはエンジンからプラグを外すと、1気筒ずつゲージをはめこんで圧縮比を見た。4気筒調べて、すべて異常なし。カルロスによれば、これは大変重要なテストだという。ということは、気筒が死んでいる車がゴロゴロいるということか。そういえば、昨日見た車ではエア・クリーナーの無い車が多かった。日本の常識で車を買おうとすると、大変な目に会うだろう。
 みんなの意思は決まった。このバンを買おう。値段を交渉し、1880ドルまで下げた。カルロスが外国人が車を買えるかどうか確認した方が良いというので、明日警察へ行ってそれを聞き、夜にオーナーへ電話を入れる約束をした。おいオヤジ、それまで他の客に売るなよ。

 みんな満足気に会場を後にする。早くあのバンに乗って走り出したい。
 帰りは近くにあるショッピングモールに行って、カルロスに好物のピザをごちそうする。ピザハットに行って大型のピザを買うが、カルロスはその値段に目を丸くしていた。我々にとってピザのセットが2ドルというのは破格だが、カルロスの月給は30数ドル。彼にとっては5人分のピザ、約10ドルのレシートは10万円くらいの価値があるのだろう。
  しかし、どこのピザハットもエクアドル人で賑わっている。エクアドルは大変貧富の差が激しいと、最近つくづく思う。アメリカ並みに大きくてきれいなシッピングモールがいくつもあるし、高級な車がバンバン道を走っている。エクアドルの通常の物価から考えると、モールで買物したり、車を買ったりすることはとんでもない金額なのだが、それでも手の届くエクアドル人が多いのだ。貧しい国ではあるが、あるところにはあるんだなあ。

 夜はあのバンをどう改造するか、どうペイントするか相談して盛りあがる。すると、何ともアホらしく、すばらしいアイデアが出た。バンをピカチュウにしたいというウメさんの奥さんを除き、みんなそのアイデアに賛成した。それがどんなアイデアなのかは、実現するまでおあずけです。


二日間の走行距離        0キロ(計24060.3キロ)

出費                145250S  食費
                      7500S  トロリー
12000S  バス
15000S  インターネット
10000S  エンジンを見る業者
60000S  宿×3(バイク用)
計        249750S 宿泊         Hostal Sucre バイクの置き場     Hotel Capitalino インターネット    The Magic Roundabout Hostal

2000年6月5日(月) 陸運局へ行く(Going to the Police)

 今日は外国人旅行者が本当に車を買えるのか、カルロスに教えてもらったJefatura de Transito(日本で言う陸運局の役目を果たす役所。警察の一部らしい)へ確認しに行く。
 そこは国際空港の北にあり、朝ごはんなんぞを食べてゆっくりと行ったので、昼休みに重なってしまった。ちょっとの問い合わせなのに、2時間後に来いという。
 仕方ないのでバスに乗って近くのショッピングモールへ行き、インターネットなどをやって時間をつぶす。午後3時になって陸運局に戻ると、「外国人旅行者が車を買うのは、全く問題がない」という答えが一発で返ってきた。やった!これで問題なく例のバンが買えるぞ。
 夜、バンの持ち主に電話すると、早速明日の朝に手続きをしようという事になった。冗談から出た計画が、着々と現実のものとなっていく。


本日の走行距離         0キロ(計24060.3キロ)

出費                 12000S  朝食
5000S  トロリー
6000S  バス
18000S  インターネット
34000S  昼食(中華)
5000S  夕食(スクレ食)
計        80000S 宿泊         Hostal Sucre バイクの置き場     Hotel Capitalino インターネット    Net Place

2000年6月6日(火) 車を買う(Buying the Car)

 朝一番で日曜日に見たバンのオーナーの家に行く。日曜日は試乗できなかったので、彼の家の回りを走らせてもらうが、大きな問題はなさそうだ(小さな問題はいくらでもありそうだが)。ウメ夫妻、猪飼さん、私、の4人で購入を決定。

 まずは銀行へ行き、代金を用意する。私のトラベラーズチェックがほとんど手付かず状態だったので、それを換金して払う事にする。チェックがシティバンクのだったので、同銀行の大きな支店に行くと、一発で2000ドル分が換金できた。オーナーが全部5ドル札で用意しろ、というので銀行にお願いするが、全部10ドル札で200枚用意させるのがやっとだった。
 代金1880ドルをオーナーに払うと、自分の口座に振りこむから、彼の銀行に行けという。おいおいオヤジ、全部10ドル札で用意したの、意味ないじゃん。彼は職場のストライキで約1ヵ月も仕事が無く、しかも奥さんが耳の病気にかかったので、金が入用になったという。そんなのに値切ってごめん。

 オーナーの銀行の後は裁判所へ行き、売買契約書を提出する。エクアドルでは車の売買をし、名義変更をする場合、売却人と購入者の名前と身元を明記した売買契約書を作成し、裁判所に承認を得なければならない。用紙は裁判所に用意されており、代行屋にまかせると2時間ほどで承認のスタンプが書類に押された。
 また、エクアドルにはマトリクラという車の登録制度があり、名刺より二回りほど大きいカードに所有者の名前や住所、エンジン番号、車体番号などが明記され、これが日本でいう車検証のような役目を果たす。この書類の名義を変更しに昨日行った陸運局へ行かねばならないが、裁判所で思ったよりも時間がかかったので、今日はあきらめる。

 車はスクレの従業員、カルロスの家に置いておく約束だったが、出勤時間の午後4時になっても、なぜか彼は現れなかった。仕方なく元のオーナーに乗って帰ってもらい、また明日の朝、取りに行く約束をする。

 夜は語学上達のために1人スクレを出て、新市街のホステルに泊まっているゴリラのマサと飲みに行く。久しぶりにちゃんとしたバーで飲んだら、酒がとてもうまかった。


本日の走行距離         0キロ(計24060.3キロ)

出費                 12000S  朝食(卵)
8100S  タクシー
12000S  昼食(定食)
12000S  コーラ
500$  車代(出資金第1回目)
2500S  トロリー
15000S  インターネット
4$  飲み代
30000S  タクシー
計        91600S 504$
注:車はスクレの仲間と4人で買ったので、車に関する費用は今後すべて「出資金」として片付けます。
宿泊         Hostal Sucre バイクの置き場     Hotel Capitalino インターネット    The Magic Roundabout Hostal

2000年6月7日(水) 車を修理する(Fixing the Car)

 朝、再び前オーナーの家に行き、車を引き取る。 この車での旅が終わったらキトに戻ってくるので、その時には買い戻さないか、とオーナーにいうと、ぶつかってなかったらね、と了承してくれた。再会を約束し、彼の家を後にする。

 まずは彼のマトリクラのをキャンセル費用?を支払いに、銀行に行く。陸運局に行く前に、この支払いが必要だそうだ。
 その後に陸運局に行くが、やはり昼休みに重なってしまい、2時間後に来いという。仕方なく、左前のホイールからグリスが漏れる症状が出ていたので、先に修理工場に行って直してもらうことにする。
 陸運局のまわりには多くの自動車修理工場があり、適当なのを見つけて入る。すると、そこのオヤジは丁寧にコーティング剤を塗って漏れを直してくれた。その間、右前のタイヤが一本だけ丸坊主だったので、近くのタイヤ屋で交換する。エクアドル産のタイヤだが、1本で70ドルもした。
 無事作業が終わったと思ったら、修理工場のオヤジは左前輪のステアリングのリンクが手製の粗悪な部品を使っており、このままでは危ないという。見るとなるほど、反対側とくらべるとステアリングシャフトがフラフラだ。とりあえずマトリクラの名義変更をして戻ってくるとオヤジに告げ、陸運局を目指す。

 すると、陸運局の前には長蛇の車の列が。これが全部、マトリクラの更新や名義変更だという。昼休みも関係なく、並んでおくべきだった・・・。仕方なく今日の名義変更はあきらめ、修理工場に戻る。

 修理工場のオヤジのいう通りステアリングのリンクが頼りないので、交換してもらうようにお願いする。するとオヤジはタクシーに乗り、部品を探しに出ていった。待っている間ヒマなので、いらない座席をウメさんと2人で一生懸命外した。
 それでもオヤジは帰ってこないので、ヒマつぶしに修理工場の敷地でサッカーを始めた。やがてすっかり夜になり、工場が閉まるはずの午後7時を回った。結局オヤジが中古の部品を片手に帰ってきたのは8時前、そのころには腹が減りすぎて目が回りそうだった。

 全ての作業が終わり、宿に帰ったのは9時を過ぎていた。車はそのまま、修理工場に置かせてもらった。明日もマトリクラの名義変更のために早起きせなばならない・・・。


本日の走行距離         0キロ(計24060.3キロ)

出費                 12000S  朝食(卵)
6000S  バス
2500S  トロリー
15000S  昼食(ハンバーガー)
5000$  ビール
計        40500S
宿泊         Hostal Sucre バイクの置き場     Hotel Capitalino