旅の日記

エクアドル・キト編その3(2000年5月13〜17日)

2000年5月13〜15日(土〜月) 「スクレ」の日々(The days in Sucre)

 安宿「スクレ」の毎日は大変楽しい。
 一泊40円の割には部屋はきれいで日当たりも良く、共同のシャワーは熱い湯がバッチリ出る。日本人でそのほとんどを占拠している屋上の部屋からは旧市街が見渡せ、眺めが良い。
 屋上にはうさぎが4匹放し飼いにされ、食べ物の匂いがすると部屋に入って来たりして可愛い。またガーデニングをしている人もいて、妙な植物がすくすくと育っているのだ。
 早く赤道を見に行きたいのだが、 熱は引いたものの咳と鼻水がまだひどいので、治るまで待つ事にする。この3日はほとんどをスクレで過ごした。

 13日はすき焼きをやることになった。土曜日には目の前のサンフランシスコでちょっとした市が開かれ、食料品などが安く売られるが、この日は肉屋が出て、約2キロの肉を3ドルほどで仕入れた。白菜は新市街のスーパーで見たので、インターネットをやりがてらバイクで買いに行く。しかし、途中で痛恨のガス欠。エクアドルに空輸してからまだ給油はしていなかったが、せめてガソリンスタンドまでは持つだろうと思ったのが甘かった。病体にむち打って200キロを超えるDRを約5、600メートル、近くのスタンドまで押さねばならなかった。しかも途中で雨が降ってきた。
 インターネットをした後にスーパーへ行って白菜を買うが、帰りはさらに雨がひどくなり、旧市街に入るころはどしゃ降りだった。おかげで全身すぶ濡れになる。
 しかし夜のすきやきは盛りあがった。キッチンは狭いので、ウメさんのガソリンストーブを使用して部屋で食べた。他の宿に泊まっているマサが遊びに来たが、スクレの雰囲気が気に入ったようだ。近々引っ越してくるという。

 14日はほとんど宿にいた。外出したのはマサとウメさんらと昼食を食べに行ったくらい。あとはずっと部屋でホームページを更新したり、ゲームをしたり。ウメさんに色々とゲームをもらったので、それをやるのが忙しいのだ。メキシコで買った鼻水を止めるカプセルを飲んだのだが、この副作用で1日中眠たく、ボーッとしていた。早く本調子に戻って色々としたいのだが、かなわない。夜はまた、おいしく食べる工夫をしてモモ缶を食べる。

 15日にはマサが引っ越してきた。彼のバイク、ホンダ・ゴリラは非常に小さいので、みんなで屋上の部屋まで運ぶ事ができた。屋上には洗濯物を干すちょっとしたスペースがあり、そこでみんなで乗り回す計画である。ちなみに写真でゴリラにまたがっているのはウメさんで、その右でおどけているのがマサである。ウメさんと2人でじっとゴリラを見ていたら、2人ともゴリラが欲しくなった。シンプルな構造、タフで燃費の良いエンジン。DRとは違った景色が見られるだろう。
 マサはこのバイクでコロンビアのゲリラ地帯を越え、南米の後はアフリカに行くという。コロンビアで彼からのメールが途絶えた時には一瞬、彼の冥福を祈ったが、生きていて本当に良かった。コロンビアは最高に楽しかったが、緊張状態にはあったという。彼がゲリラ危険地帯を通った3日後に、そこでバスが襲われたらしい。
 夜はトランプで盛りあがる。スクレで最近はやっているのは「ナポレオン」というゲーム。初めて聞いたゲームだったが、とても面白い。ナポレオン軍と反乱軍に分かれて対戦する形なのだが、頭を使った微妙なかけ引きが楽しいのだ。
 そして今夜はなぜか、みんなで飲んだファンタオレンジがうまいのだった。

三日間の走行距離      17.7キロ(計23983.3キロ)

出費                103000S  食費
                    115000S  ガソリン
                     30000S  インターネット
                     80000S  宿代(バイク用)
                      5000S  トロリーバス
                     52600S  水、トイレットペーパーなど
計           385600S

宿泊          Hostal Sucre
バイクの置き場     Hotel Capitalino
インターネット     The Magic Roundabout Hostal
「久美子の言わせて!」
 キャンピングカーを引っ張っているのに、がんがん飛ばして、あっというまにバラデ・ナビダッドに到着。 町の向こう島に豪華なリゾートホテルがあって、一泊3万円ちょっと(300ドル)だって。たっかー。 ちなみにプレジデントスウィートは一泊24万円だそう。私は釣り屋の屋上にあるアパートを借りた。 一泊100ペソ。でもすごく快適。キッチンもあるしもちろんバス、トイレ付き。お湯もちゃんと出る。 この町の次はグアダラハラ。いったいいついけるんだか・・・。



2000年5月16日(火) パネシージョの丘に登る(The hill of Panecillo)

 朝起きたら、いつになく天気が良い。風邪もだいぶ良くなったし、今朝は予定どおり、ウメさんや猪飼さんらとともに「パネシージョの丘」に登ることにした。
 パネシージョの丘は旧市街の奥にある、高さ180メートルほどの丘で、ここからはキト全体が見下ろせるという。しかし歩いて登ると必ずといっていいほど強盗が出るらしいので、タクシーで一気に頂上へ。
 すると、景色よりまず頂上にある聖母像のデカさに驚いた。スクレの屋上からいつも遠くには見ていたが、こんなに大きいとは思わなかった。台座を入れたら2、30メートルはあるぞ。
 頂上は風が強く、少し寒かったが、ちょっと下ったところに日当たりが良くて暖かいところを見つけた。そこでみんなで日向ぼっこをしながらキト市街を見下ろす。手前に今泊まっている旧市街が、その奥に高層ビルが立ち並ぶ新市街が見え、そしてそんなキトを囲むように高い山々がそびえている。なかなか美しい街だ。しかし、こんないい景色を前にしてもバカな写真を撮りたがるのって、日本人だけだろうか。
 帰りは歩いて下る。強盗が出るような雰囲気はどこにも無く、ここならアンティグアの「十字架の丘」の方が恐いと感じた。まあ、5人もいたし・・・。
 街に下り、宿を目指して歩いていると、1軒の酒場の前でウメさんの足が止まった。酒場の入り口ではマリネにされた、貝のようなモノが皿に山となっており、これがウメさんの好奇心をくすぐったのだ。一皿3000スクレ(15円)というので、こわいもの見たさ、変なもの食べたさで、みんなで食べる。
 最初はタニシかと思ったら、殻の内部の食べる部分にはちゃんとツノがある。店の人は「砂場にいる」というから、おそらくカタツムリだろう。マリネにはなっているが中まで酢は通っておらず、ほぼナマの状態。味はほとんどしないので、サルサを付けて食べる。そのうちこれはビールのつまみにいいのでは、と気付き、ビールも注文して昼間っからいい気分。お腹こわさなきゃいいけどね。
 普段宿で沈没している人たちが外出すると、疲れる。昼食を食べたあとはみんな昼寝をした。夜は同じメンバーで新市街へ映画を見に行く。映画の前に中華料理屋で夕食を食べるが、敷居の高そうな外観の割には安く、とてもおいしかった。スープ付きのセットメニューにビールを飲んでも、マクドナルドのセットよりも安い。かならずまた来よう。
 さて、今夜の映画はキアヌ・リーブス主演の「マトリクス」。ちょっと古い映画だが、いつもの映画館よりも安く、20000スクレ(80円)だった。ストーリーは、この世のというものは実は機械が作り出したシステムが人に見させている夢で、それに気付いた数少ない人間のグループが、人類を支配しているその「マトリクス」というシステムに立ち向かうというもの。ありがちなSFの物語だが、この映画、映像がかなりかっこいい。ハードなアクションとCGを組み合わせ、今まで見たことの無い銃撃シーンや格闘シーンを見せる。こりゃもう、言葉で説明しても無理。見に行った5人全員、そのかっこよさにホレボレ。帰りは遅くなるので最初はタクシーで帰ろうと思っていたが、キアヌのように壁を走ったり、銃弾を素手で止めたり、超人的な格闘技ができるようになった気がする単純な日本人たちは、途中までバスに乗り、そこから宿まで危険な夜の旧市街を歩くのであった。

本日の走行距離           0キロ(計23983.3キロ)

出費                  6000S  タクシー
                     12000S  昼食(定食)
                      2500S  カタツムリ、ビール
                      3000S  電球の二股
                      5000S  トロリーバス
                     52000S  夕食(中華)
                     15000S  インターネット
                     20000S  映画
計           115000S

宿泊          Hostal Sucre
バイクの置き場     Hotel Capitalino
インターネット     The Magic Roundabout Hostal



2000年5月17日(水) 赤道に立つ(Standing on the Equator)

 今朝は重い腰を上げて赤道に行った。空は雲に覆われて天気は今一つだったが、先延ばしにしていてはいつになってもキトを出られない気がしたのだ。
 赤道はキトの中心地から約20キロ北に走っている。本来ならば北半球から南半球へバイクで越える感動を味わいたかったが、飛行機でキトまで飛んでしまったので仕方がない。旧市街を出て30分ほど北に走ると、サンアントニオ村の赤道記念碑が見えてきた。
 記念碑は赤道の真上に建てられており、頂上には直径4.5メートルの地球がのっかっている。正面は東に向いており、従って左の写真では私の右足は南半球に、左足は北半球にある。足が短くても、ちゃんと赤道はまたげるのだ。ちなみに赤道を示す線は赤くなく、なぜか黄色。でも英語で赤道を意味するEquator、スペイン語のEcuadorとも(エクアドルの国名は「赤道」そのまんま)、「赤」という意味は含まれていないから、別に何色でもいいのか。
 赤道をまたいで写真を撮るというお約束をしたあとは、近くのカフェテリアで朝食を食べる。すると、隣のテーブルでおばさんが3人、朝っぱらから大瓶のビールを飲んでいる。しかも、出てきたつまみはチョコレートパフェだった。何という食い合わせかと思って見ていたら、まわりにいたジャージ姿の小学生たちが数人、彼女らの所に行って話をしていた。おいおい、遠足の引率かい。職務中に飲酒とはいい身分ですな、先生。
 また30分ほど走ってスクレに帰ると、みんなが近くの市場へ行くところだった。何でも屋上ガーデニングのコレクションにサボテンを加えたいらしく、そのサボテンが近くの市場に出まわっているという情報を得たらしい。分かる人には分かるかもしれないが、スクレのコレクションに加えるサボテンは、そんじゃそこらのものではダメなのだ。みんなが求めているのは「幻のサボテン」なのである。
 みんなで市場へ行くが、時間が遅いために店はほとんど閉まっていた。今日は無理か、と思った瞬間、1軒の草や薬を売っているおばちゃんの店で目的のサボテンを発見。おばちゃんに「幻のサボテンか」と確認するが、そうだという。何本かあるうち、一番立派なのを選ぶが、それでも鉢ごと買ってわずか30000スクレ(120円)だった。これでスクレの屋上がさらに華やか(?)になるぞ。
 夜は魚料理で盛りあがる。ウメさんや猪飼さんが魚市場へ行って魚を仕入れてきたのだ。メキシコ以来に食べる刺身は美味かった。やはり日本人に生まれて幸せなのである。
 

本日の走行距離        60.4キロ(計24043.7キロ)

出費                 18000S  朝食(サンドイッチ)
                     40000S  宿代(バイク用)
                      5000S  トロリーバス
                     15000S  インターネット
                     20000S  ビール
                     21000S  夕食(魚)
計           119000S

宿泊          Hostal Sucre
バイクの置き場     Hotel Capitalino
インターネット     The Magic Roundabout Hostal