旅の日記

パナマ編その2(2000年5月1〜3日)

2000年5月1日(月) バイクは送らず(Labor day in Panama)

 さて、今日バイクをコロンビアへ送り、明日自分も行くとなると忙しいぞ。まずホームページの更新をせねばと、せっせと日記を打つ。今日は5月1日、パナマでも「労働者の日」でインターネットカフェを含むほとんどの商店が休みだが、明日にはアップロードしたいものだ。
 昼食を食べたあともホテルの部屋でパソコンに向かっていると、部屋の電話が鳴った。出るとフランス人のパスカルからで、今ロビーに来ているので一緒に走らないか、という。本当は忙しいが、まあつきあってあげましょう。
 彼が昼食がまだで、マクドナルドに行きたいというので二人して行く。しかし、俺もさっきマック食べたばかりなんだよな。ジュースだけ飲むが、マクドナルドでお腹いっぱいのところにまたマクドナルドのニオイってのはちょっとつらかった。
 その後は「コースウェイ」という、アメリカ橋の南に浮かぶ小島三つをむすぶ海中道路に行く。渡った先の小島からは対岸のパナマシティが一望でき、いい眺めだった。小島のレストランでビールを飲み(飲酒運転じゃん)、帰ろうとしたときに、また空を暗雲が覆い始めた。ここ3日は午後2時前後になると必ず雨が降る。パスカルは自分のBMWーGS1150に乗ってみないか、というが、雨は降り始めるわ、ビールは飲んでるわでちょっと恐いので、丁重にお断りした。でもまたがってみたが、思ったよりも重さは感じなかった。重心が低いためだろう。しかしフランスで買っても120万円はするというこのバイク(日本じゃ200万に近いだろう)、倒すのが恐くてオフロードなんか走れないな。
 そうこうしているうちにブラジルの二人と待ち合わせた時間が近くなったので、雨の中ホテルに帰って仕度をする。バイクと一緒にヘルメットやテント、寝袋も送りたいので荷物の仕分けをしていると、部屋の電話が鳴った。出ると彼らだが、約束の時間よりはだいぶ早い。「ちょっと話そう」というので、とりあえずロビーに降りる。
 すると、二人はやっぱり今日はバイクを送らないという。コロンビアに入国する際、ブラジル人の彼らは入国審査である程度の金額をデポジットしないと入れない、ということがネックになっているらしい。クレジットカードを持っていれば提示だけで済むのだそうだが、持っていない彼らは面倒なのだそうだ。そこで水曜日にエクアドルのグアヤキル港へ向けて出航する船があるそうなので、明日そこの会社へ行ってみて金額などを聞いてみてから判断したい、という。私も別に急ぐわけではないのでかまわないと言い、明日そこの会社へ一緒に行く約束をした。
 彼らと別れ、部屋でパソコンに向かっていると、またもや電話が鳴った。出るとフロントのおばちゃんで、表に停まっているバイクの持ち主に話がしたい、という人が来ているらしい。ロビーに降りると、おんやまあ、身長190センチは下らない大男と、これまた170センチ以上はゆうにある彼女の白人カップルが待っている。ドイツから来たトムとジェシィという彼らもホンダ・アフリカツインとXTの2台のバイクでツーリングしていて、南米へ飛ぶ手段を思案しているという。さらに彼らの友達のカップルが明日の夜、バイクでパナマシティに到着するのだそうだ。お互いの情報を交換しあい、また明日の午後電話で連絡を取り合うということになった。彼らもコロンビアに行きたいそうなのだが、やはり最近のゲリラ活動が気になっているらしい。でもバイク数台なら大丈夫かも・・・と彼らもいい、この人たちのグループと一緒にコロンビアに行ってもいいなという気にもなってきた。それにしても世間は狭い、明日このパナマでバイク乗りが8人集結することになるのだ。

本日の走行距離      85.1キロ(計23909.6キロ)

出費                  2.99$  昼食(マクドナルド)   
                        20$  宿(カード)
                       0.8$  ジュース
                      5.62$  夕食、ビタミン剤など買物
計           29.41$

宿泊          Hotel California



2000年5月2日(火) 南米行きの準備(Preparing to fly to SA)

 朝、部屋で待っていると、ブラジルの二人ではなくパスカルがやってきた。彼も運送会社に行って色々聞きたいので、私を迎えにきたのだ。「ServiCargo」という会社に着くとすぐに二人のうちの一人、フランコがやってきて、みんなで話を聞く。
 まずはエクアドルのグアヤキル港行きの船だが、着くまでに4日はかかるそうで、金額も200ドル前後、あまり旨みがない。飛行機ではコロンビアのボコダまでが250ドル、エクアドルのキトまでは350ドルだそうだ。パスカルはブラジルのマナウスかベネズエラのカラカスに飛ばしたいが、マナウスは600ドル以上はかかり、カラカスはその半分くらいで済みそうなので、カラカスにするつもりだとといった。
 船が思ったよりも高いので、フランコは悩んでしまった。何しろ金が無いのでボゴタへ送って自走したいが、治安の面と入国の際にデポジットを要求されるという話がひっかかっている。かといってキトまで飛ばすのは、彼らにはちょっと高い。運送会社の後にコロンビアの大使館に行くが、デポジットの有無は「分からない」といい、またバイクでは保険への加入が必要だといった。日本人ライダーの間ではデポジットの件は聞いたことないが、ブラジル人でクレジットカードを持たない彼らは事情が違うらしい。仕方ないが彼はキトまで飛ばすといい、便は明日になるので、いったん別れる。
 私はその後日本大使館へ行き、家族から送ってもらった地球の歩き方「ペルー編」を受け取る。おお、やはり南米が一冊にまとまっているものより情報が豊富だ。
 その後はインターネット屋に行っていたりしたが、夕方に昨日のトムがやってきた。コロンビアのことは色々調べたが、やはり最近とみに状況は悪いらしい。彼らも明日、キトまで飛ばすので一緒に送ろうという。コロンビアという国にはひかれていたが、みんながキトまで送る中、あえて一人で送って手続きを一人でやるのも面倒なので、「長い物に巻かれる主義」の私はもちろんOKした。トムは彼女のジェシィがスペイン語が堪能なので、運送会社の手続きも、次の日に自分たちがキトへ飛ぶフライトの予約も、私の分までしてくれるといった。おー、何てラッキーな。自分一人で全てやった諸先輩方から見れば、何と楽な状況なんでしょう。あ、しかし、ブラジル人の二人はどうしよう。彼らも明日送る予定だが、彼らはその場合、自分たちはコロンビアまで飛んでバスでキトまで行くんだよなあ(これってどう考えても、あまり意味が無いように思えるんだが)。それに付き合うのはちょっと遠慮したいし、やはりトムたちと行動した方がキトでも楽で、よさそうだ。
 夜、夕食を食べたあとブラジルの二人のホテルに寄ると、彼らとパスカルがこれから夕食に行くところだった。しまった、食わなきゃよかった。仕方ないので、飲物だけ付き合うことにする。ブラジルの二人と明日の話をするが、彼らはバイクを送るのはやめたという。パナマで売って、ブラジルへ飛行機で帰ることにしたそうだ。ブラジルでのバイクや車の登録は非常に厳しく、アメリカで買ったバイクを持ちかえって登録できるかどうかは、実はイチかバチかの賭けなのだという。バイクは古く、、アメリカにいる間に相当乗りまわしたので未練はない。ここパナマに限らず、中米では中古バイクの相場が高いので、うまくいけば買った金額1600ドルとあまり変わらない値段で売れるかもしれない。そう考えると、わざわざ高い金を払って南米まで飛ばす気が失せてしまったそうだ。しかし、これで気兼ねなくトムたちと行動できことになった。ちなみにフランス人パスカルは、少々高いがやはり兄弟のいるマナウスまで飛ばすことにしたそうだ。カラカスから自走するのは、今の時期道路の状況が悪すぎるらしい。
 レストランではビールやワインを飲みながら、遅くまで中米の国境越えの話題で盛りあがった。メキシコで入国の際に600ドルのデポジットを取られたという話をすると、ブラジルの二人も最近通ったが、クレジットカードが無いために270ドルのデポジットを取られたらしい。しかもグアテマラへ抜ける際、国境から遥か戻ったチアパス州の州都トゥクストラ・ギテーレスまで返金のために戻るよう指示され、さらには金曜の夕方だったので、銀行の開く月曜までは無理だといわれてあきらめてしまったそうだ。あの法律は3日で終わったが、今でも似たようなのがあり、どうもクレジットカードが無いと大変らしい。ただしパスカルも最近通ったが、クレジットカードの提示も、デポジットの支払いも要求されなかったそうだ。抜ける国境やパスポートの種類によって、どうも違いがあるようだ。
 ブラジルの二人には彼らの家へ行く事を約束し、パスカルも今年末のパタゴニアを目指すというので、そこでの再会を約束してホテルへ帰る。しかし、あの3人と飲んでいるのは本当に楽しかった。楽天的なブラジルの二人と、ちょっと慎重派のパスカルとのコントラストが面白いが、しかし3人ともバカに明るく、フレンドリーだった。特にパスカルはよく言われるような「フランス人らしさ」からはほど遠く、流暢な英語を話し、「フランス語が一番美しい言葉だ」とか言うときも、半分ボケて言っていた。さすが若い看護婦と一緒になるために離婚したオヤジだ。あ、そういえばさっき、ホテルのフロントの子とデートの約束に成功したとか言っていたが、本当にこの人、マナウスまで飛べるんだろうか。

本日の走行距離      8.9キロ(計23918.5キロ)

出費                  3.25$  昼食(肉)   
                        20$  宿(カード)
                         4$  インターネット
                      1.25$  コインランドリー
                      2.99$  夕食(マクドナルド)
                      2.50$  ビール   
計           33.99$

宿泊          Hotel California
インターネット     Internet Services



2000年5月3日(水) バイクを飛ばす(Flying the bike)

 今日、トムらと一緒にバイクをキトに飛ばす予定なので、午前中は部屋で待ち合わせの時間を決める電話を待ちながら日記を打つ。なかなか電話が来なかったが、ようやく昼頃、「2時までに空港に来いといわれた。まだ友達のカップルがパナマシティに着いていないので、来次第迎えに行く」という電話があった。1時過ぎには来るだろうと待っていたが、なかなか来ない。やがて時間は過ぎ、1時40分になった。どう考えても2時には間に合わんぞ、と心配していたら、ようやく4台のオートバイが迎えに来た。
 トムとジェシィの友達のカップルは二人ともホンダのトランザルプ600。4人とも保護のためと、「高価に見せないため」に、バイク全体に黒いガムテープを貼っている。うーん、これいいアイデアかもしれない。
 時間が無いので、急いで空港へ向かう。市内は交通量が多く混雑していたが、先行するトムはかまわずスリ抜けてどんどん進む。しかし女性二人はいつ免許を取ったのか、運転があまり上手でなく、遅れてしまう。特に友達のカップルの女性、フランチェスカは大きなトランザルプをもてあまし気味で、フラフラしていた。
 市内を抜け、高速道路に抜けると空港までは一直線。約20キロ走り、トクメン国際空港に到着。貨物専用の空港はさらにトクメン空港を左にぐるりと回り、約7キロ走ったところにあった。早速「ServiCargo」のオフィスに行き、キトまで送りたい旨を告げるが、ここでトラブル発生。ここの会社でキトまで送ると、航空会社はアエロ・ペルーを利用することになるが、アエロ・ペルーはバイクなどの「危険物」を送るのには事前許可が必要で、その許可を得るのに2、3日かかるというのだ。市内のオフィスでは何も言われなかったというが、許可が無いとどうしても積みこめないらしい。
 しばしオフィスの前でみんなで考える。ボコタ行きだとコパ航空になり、許可は必要ないが、やはりみんなはコロンビア行きを心配している。行ったとしても急いでキトまで抜けることになり、見るものも見れないだろうから、やはりキトまで行きたいという。そこでGIRAGのオフィスがそばにあるので、そこで聞いてみることにした。
 GIRAGでキトまで送った場合、貨物はボコタまで一回飛ばされ、そこで別の飛行機に積まれてキトまで飛ぶらしいので、所要日数は約2日。今夜送ると、金曜の朝に着くらしい。費用は1台500ドルだが、5台まとめてということなので475ドルに負けてくれるという。それにしても「SeriviCargo」より125ドルも高い。
 しばし、迷う。みんなは高くても時間が無いのでGIRAGでキトまで送るというが、私はどうしようか。一人でボコタへ送って自走しようか・・・。しかし、彼らのいう通り、結局急いでエクアドルまで抜けることになってしまうだろう。スペイン語の堪能な彼らと一緒だと、キトでのバイク受け取りもスムーズに行きそうだ。あえて一人で別行動をとるまでもないだろうと思い、彼らと一緒に送ることを決心する。
 早速書類の手続きに取りかかる。担当してくれたおじさんは社内でも偉そうな人で、英語がペラペラだった。費用は現金払いというが、航空内にあった銀行に手持ちの現金が無く、引き出せなかったので、トラベラーズチェックを受け付けてくれた。ガソリンは全て抜かずとも良く、2リットルくらいは残してもいいという。おお、ラッキー。あとはバッテリーの端子を外すだけでOK。私はサイドケースを付けたまま、中にテントやヘルメットなど荷物の約半分を入れて送った。カギをかけたままでいいというので、盗難の心配は無いと思う。
 4人のドイツ人のうち2人が先に市内に戻り、旅行代理店で明日キトへ飛ぶチケットを買うというので、私もお金を渡して予約をお願いした。4人のうちスペイン語が堪能なのは女性2人で、彼女らが交渉している間、男性陣は大人しく待っている。いい身分だこと。今日会ったトランザルプのカップルはコスタリカでカフェをオープンしたらしく、ドイツに帰るつもりは無いらしい。今はオフシーズンなのでカフェは閉め、旅を始めたそうだ。トムとジェシィは少しずつ旅をしているらしい。例えば4ヶ月走り、バイクをどこかに置いて本国へ帰り、しばらく働いてまた戻る、というパターン。白人のライダーはこのパターンが多い。日本人は一気に金を貯め、一気に走る方が多い。
 全ての手続きを終え、バイクを預けてタクシーで市内へ戻る。いよいよ明日、南米入りだ。実にここまで8ヵ月、予定の2倍以上かかったが、想像以上の経験ができた。南米での旅も安全で楽しいものになればいいが。

本日の走行距離     30.3キロ(計23948.8キロ)

出費                    20$  宿(カード)
                         2$  高速代
                       2.5$  夕食(焼きそば)
                         5$  タクシー代)
                       475$  バイク輸送費用
                       261$  航空チケット代                   
計            765.5$

宿泊          Hotel California